薬剤師取材

セルフメディケーション推進で処方箋持たない顧客を積極誘因
受診前面談で服薬コンプライアンス向上

株式会社ファーマシィ 上本町駅前店 安福功一氏

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処方箋を持たない顧客の来局頻度をいかに高めるか――これは多くの保険薬局が抱える課題です。解決策の一つはOTC医薬品の強化。広島を本拠地に12都府県で96薬局(2020年11月現在)をチェーン展開する株式会社ファーマシィのファーマシィ薬局上本町駅前(大阪市天王寺区)は、商品販売でグループ内ベスト5にランクされる実績を上げ、処方箋患者以外の来局につなげています。そして調剤業務では、医師との受診前の患者と面談し、体調変化や残薬などの状況を確認。これらの情報を処方医にフィードバックすることで、医師との連携強化、患者の服薬コンプライアンスの向上に努めています。
同薬局の薬局長で、OTC推進担当部署のヘルスケア推進部も兼務されている、安福功一さん(以下敬称略)に同薬局の取り組みをうかがいました。

今回お話を伺った、株式会社ファーマシィのファーマシィ薬局上本町駅前 管理薬剤師の安福功一さん。

ガラス張り店舗で立ち寄りやすい薬局を演出
1000品目のOTC医薬品などでカウンセリング販売強化

―医療モール1階の店舗は道路側が全面ガラス張りで、とても開放的な雰囲気です。

安福 外からでも薬局内の様子がよく見えるように工夫しています。保険薬局ですから、多くは処方箋をお持ちの患者様が来局されます。ドラッグストアなどとは違い、敷居が高く、処方箋がなければ薬局内には入りにくいものです。処方箋を持たないお客様にも気軽に薬局内に入っていただきたいと願い、道路面を素通しのガラス張りにしています。薬局内が見えないと、店の雰囲気やどんな商品が置いてあるかも分かりにくい。通りがかった人が、ふらっと立ち寄っていただけるような店づくりを目指しました。そのおかげでしょうか、「このホテルの場所教えてほしい。」と道案内のために入って来られる方もいます(笑)。入りやすいことの表れだと自負しています。


―調剤以外のOTC医薬品をはじめとする商品の販売も、その一環でしょうか?

安福 2018年10月のオープン当初から、店づくりのコンセプトとして、OTC医薬品やサプリメントなど、「トリアージ販売」に力を入れています。アイテム数は常時1,000品目程度をラインアップしています。薬局の広さは70坪ほどですが、このうち売り場としては50坪ほど確保し、アイランド型の陳列や同じ効果、種類の医薬品はできる限りまとめるなど、お客様が分かりやすく、探しやすいようなレイアウトにしています。


カウンセリング販売でドラッグストアと差別化
商品販売実績は自社グループ店舗でベスト5

―近隣には競合店はおおいのでしょうか。

安福 薬局周辺には全国展開を図る大手ドラッグストアチェーンの店舗がひしめいています。当薬局でも急なケガやかぜ、吐き気など最低限の初期対応ができる商品は取りそろえていますが、ドラッグストアと取扱アイテム数や価格面で競い合うことはかないません。それだけに、ドラッグストアと差別化が図れるよう、来局時の的確な声掛けや、その後の接客には留意しています。 例えば、鼻炎のお客様には点鼻薬をお勧めするだけではなく、鼻うがいの提案まで踏み込む。 治療だけでなく、そもそもそういった症状にならないよう「予防」の視点での提案をします。怪我や整形外科の処方せんを持参される患者様も多いのですが、痛み止めやサポーターの販売時には、その方にあったものを選んで頂けるような提案や、テーピング販売時には、実際の使用方法までのサポートできるよう、研鑽に努めています。 また、薬の必要性がないと判断すれば、購入を勧めないこともあります。物を売ることだけが薬剤師の務めではありません。購入されないお客様には、適切な提案や情報提供ができるよう心掛けています。


―差別化を図るには商品選定も重要ですよね。

安福 医薬品のナショナルブランドはドラッグストア同様に売れますが、先にも触れたようにアイテム数や価格では太刀打ちできません。そのため、取扱アイテムについては社内のヘルスケア推進部と連携をとりながら、しっかりとしたカウンセリング販売が必要な商材を選定し、ドラッグストアと差別化できるようにしています。 また、OTC医薬品などヘルスケア関連商品の情報に長けた大手ボランタリーチェーンへの加盟や、関係メーカー、卸から積極的に情報収集することも欠かせません。 その結果、当薬局の物販部門は、当社の全店舗中、5指に入る販売実績を達成しています。


受診前来局で患者の服薬コンプライアンスの問題解決
薬剤師の介入で診察の効率化にも貢献

―調剤業務では、受診前に患者の来局を促す取り組みが注目を集めています。

安福 必要だと判断した患者様に、医師の受診前に、薬局に一度来ていただき体調変化や残薬の有無などを確認し、それらの情報を医師の意見も取り入れた独自のトレーシングレポートに記載して、処方医にフィードバックしています。病院でよくみられる薬剤師が服薬指導などを通じて治療に介入する「薬剤師外来」を、診療所からの処方箋を応需する街の薬局の中に設けたイメージです。 医師との打ち合わせの中で、診療における残薬の確認作業の割合が高く、負荷がかかっていたことが分かりました。薬局での受診前面談を提案したところ、ご理解ご了解が得られました。


―いつごろからの取り組みでしょうか?

安福 始めたのは2019年の1月からです。当薬局の月平均の処方箋枚数は約2,100枚で、医療ビル内の処方箋が約55%、その他面処方が45%という割合で、心療内科の処方箋が中心となっています。心療内科の患者様は自らの体調や薬に関心の高い方が多く、自ら情報収集され、ご自身の判断で服薬されることもあります。その結果、過量服薬、残薬の問題が発生することがあります。処方日数の変更だけでなく、「何故お薬が余ったり、残ったりしているのか」を薬剤師が積極的に介入することで、患者の服薬コンプライアンスの向上や診察の効率化にもつながるのではないかと考えました。実際、医師に遠慮して、率直に話しづらい患者様は少なくありません。お薬に対しての悩みがあっても、医師が自分のことを考えて処方している薬に対して話しづらいと言われる患者様もいらっしゃいます。


患者やドクターにも高評価
服薬コンプライアンスの向上も期待

―始める際に懸念はありませんでしたか?

安福 私自身初めての試みで、最初は医療機関で受診する前に来局することで面倒が増え、患者様からの抵抗があるのではないかと危惧したのですが、実際には声掛けをした患者様から断られたケースは一件もありません。思った以上に順調で、現在では受診前に来局されている患者様は25人です。心療内科の患者様がほとんどですが、がんの患者様もいらっしゃいます。


―診療側の評価はいかがでしょうか?

安福 現在、情報をフィードバックしている医療機関は3施設ですが、こうした事前の患者のヒアリングは、医師からも「診療時間は確実に短くなった」と高い評価をいただいています。また、患者様の服薬状況や患者様の潜在的な希望から処方提案に応じていただけることもあり、患者様には服薬の意義を正しく理解していただくことで、服薬コンプライアンスの向上につながっているのではないかと思っています。


―こうした取り組みには医師との深い信頼関係構築が不可欠です。

安福 医師のところには、頻繁に出向くようにしています。どうしてこのような処方をされているのか、処方箋からは分からない処方意図を理解することは、とても大切です。逆に、残薬の問題などについて、薬剤師として提案したいことはトレーシングレポートを通じてお伝えするようにしています。


調剤だけで支えられない患者の健康
地域の健康サポートする“コンシェルジュ”に

―今後の展望としては、どのようなことをお考えでしょうか?

安福 以前の薬局は、調剤だけでなくOTC医薬品などにも力を入れて、よろずやのような役割をしていましたが、調剤報酬の体系変更などから、OTC医薬品を手放す、あるいは縮小する傾向が顕著になりました。しかしながら、患者様の健康は調剤だけでは支えきれません。他業態と差別化を図りながら、カウンセリング販売を前提としたサプリメントや、心療内科医とコラボしたアロマの取り扱いなどで、地域の健康をサポートできる“コンシェルジュ”の役割を担っていきたいと考えています。 患者様や顧客がより自分の健康についてより関心を持ち、より健やかに過ごして頂ける支援となれば幸いですね。



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