薬剤師取材

在宅医療に地域の薬局とチーム連携し向き合う

医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック

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患者さんそしてその家族を含め、在宅医療に関わる全てのスタッフみんなで円を作るように、誰とでもいつでもコミュニケーションをとるというフラットな姿勢の「桜新町アーバンクリニック 在宅医療部」。
遠矢院長をはじめ、日頃から連携して在宅医療に取り組む多職種のみなさんにお話を伺いました。
(2017年3月取材)

Index
・桜新町アーバンクリニック 医師・院長 遠矢純一郎先生
・桜新町アーバンクリニック 薬剤師 大須賀悠子先生
・日本調剤株式会社 東京第一支店 在宅医療部 薬剤師 名越円先生
・桜新町アーバンクリニック 同行看護婦 船木巳加さん
・桜新町アーバンクリニック ケアマネジャー/介護福祉士 大場哲也さん
・桜新町アーバンクリニック 社会福祉士・精神保健福祉士 染野良子さん

「桜新町アーバンクリニック」の取組みとは?

在宅医療に関わる全ての職種の垣根をフラットに

東急田園都市線・用賀駅からほど近い場所にある「桜新町アーバンクリニック 在宅医療部」。各世代それぞれの健康管理を支援する、地域に密着した“ファミリードクター”をコンセプトとする「桜新町アーバンクリニック」の、在宅医療専門の部署です。一歩中に足を踏み入れると、通常のクリニックとは異なる光景に驚くのではないでしょうか。診察室もなければ院長室もありません。デスクが並び、医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどが自由に座って和やかに打ち合わせをしています。しかも、デスクとデスクの間にはパーティションがありません。院長の遠矢純一郎先生は「ここでは、在宅医療に関わる全てのスタッフが『フラット』な関係です。患者を訪問したケアマネジャーやソーシャルワーカーが、すぐに担当の医師や看護師に状況を話せるように間仕切りもなくしました」と語ります。「在宅医療の中心には患者や家族がいて、それを支えるみんながいます。みんなが丸く円を作るようなイメージで、誰とでもいつでもコミュニケーションできるようにしています」(遠矢院長)。
桜新町アーバンクリニックでは様々な職種が、みなチームとなって活躍しています。「在宅医療は医師だけでできるものではありません。薬剤師など他の職種との連携が重要です。連携をより強固にするため、様々な職種の人たちを院内に迎え、それぞれの立場から院外の連携先とのやり取りをしてもらっています。」(遠矢院長)。
医師や看護師だけではなく、在宅医療に携わる全ての人たちと一緒に最善を尽くす。「人が中心の在宅医療」を目指す桜新町アーバンクリニックの取組みなのです。


患者に寄り添う「家庭医」として

在宅医療部がスタートした経緯を教えてください

桜新町アーバンクリニックを運営する医療法人社団プラタナスが設立されたのが2000年です。「家庭医療を実現する」という想いで、「用賀アーバンクリニック」からスタートしました。2004年頃から、徐々に来院できない患者、寝たきりの方が増えてきたこともあり往診をするようになりました。2006年には「在宅療養支援診療所」の制度ができ、各地で在宅医療への取組みが本格化してきましたが、その前から往診で取組んでいました。
私が桜新町アーバンクリニックの院長になったのは2009年で、同時に在宅医療部を立ち上げました。用賀アーバンクリニックの頃と同様に地域の方々にとっての「かかりつけのお医者さん」、患者に寄り添いながら在宅で診療する「家庭医」の機能を提供したいと考えたからです。
在宅医療部がスタートした頃は私と看護師1名で、週1回、午後を休診にして在宅医療に回っていました。それが1年後にはドクター3名、看護師3名になり、現在ではドクター10名、看護師13名、さらに、薬剤師、ソーシャルワーカー、介護士など様々な職種の人たちにも在宅医療部に来ていただき、今では在宅医療に関わる多くの人がひとつの「チーム」となって在宅医療に取り組んでいます。

在宅医療とは
患者の「気持ちに寄り添う」こと

医師として在宅医療で心がけていることは?

通常の医療は病気などの治療が目的です。例えば盲腸なら手術するし、肺の病気ならそこを治療します。ところが在宅医療とは、その人が暮らしている場所で、病気を抱えながらも家で暮らしたいという患者の「気持ちに寄り添っていくこと」なのです。私は医師ですが、医師だけで患者や患者の家族を支えられるものではないと強く感じています。看護や介護も重要で、むしろそちらの重要性が高いのが在宅医療だと考えています。
在宅医療を希望される方々の多くは、高齢者やがんの終末期にあり、限りある時間を自分らしく、より良く生きることを望んでおられます。進行していく病状や身体機能の低下で生じる不安や生活の大変さを、医療と看護、介護が一体となってささえることでそれらが軽減されると、押し込められていたその方やご家族の笑顔や喜びが引き出されてくる。そのためにベストを尽くすのが在宅医療の本質と思っています。

在宅医療の中心には「人」がいる

クリニックに薬剤師がいるのはなぜですか?

病院での治療と異なり、在宅医療の現場は患者の「生活の場」になります。救急治療室も手術室もなく、特別な医療設備や高度な検査機器もありません。在宅医療の中心には患者がいて、それを支える家族がいて、ソーシャルワーカーや介護士、看護師、薬剤師、医師など在宅医療に関わる「人」たちがいる。そうした人たちが連携し、患者やその家族の情報を共有し、みなで支えていく。地域の様々な職種との連携には、事業所ごとにいろんな事情や体制の違いなどもあり、単に情報共有していればよいというものではない難しさがあります。そのため当院では薬剤師、ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどを院内に有しており、地域との連携をよりスムーズにするためのコーディネーター役を担ってもらっています。

  

在宅医療への移行を
いかにスムーズに実現するか

在宅医療のクリニックでの薬剤師の役割とは?

桜新町アーバンクリニックの院内薬剤師として勤務して5年目になります。それ以前は病院や保険薬局にも勤務していました。病院勤務のときには、担当した方が退院されたあとどのような生活をされているのか、渡した退院時のお薬は飲めているのか、わからない状況が歯がゆくもありました。薬局に転職するとそれまで当たり前だった「カルテで患者の情報を確認できる」状況が一転し、情報が少ない中コミュニケーション能力と臨床推論で日々の業務をこなしていかねばならない難しさにも直面しました。このクリニックに入ってから初めて在宅医療に触れましたが、病院薬剤師とも薬局薬剤師とも連携するこの立場は、どちらの難しさも理解しなければできなかった仕事であり、これまでのご縁に感謝する日々です。
ここでの院内薬剤師の役割は多岐にわたります。院内薬局は有していないため調剤業務は一切ありません。特に力を入れているのは、退院前カンファレンスへの参加と初回往診の同行です。どちらも、その方の飲んでいる薬の全容把握や、その方の生活に添った処方設計の支援ができる絶好のチャンスであり、病院主治医や病院薬剤師から入院中の情報を聞いたり、在宅医療に適した形を提案し入院中に処方変更をお願いしたり、患者や家族に訪問服薬指導の紹介や説明をしたり、必要であれば地域の訪問をする薬剤師につないだりと、薬に関わる調整が必要なことは盛りだくさんにあります。在宅医療に移行する時期は患者も家族もたくさんの不安を持っています。安心できる在宅医療を受けられるように心がけて取組んでいます。

薬を中心に在宅医療をコーディネート

様々な職種が関わる在宅医療で心がけていることは?

クリニックの中に専門性を持つプロフェッショナル達が集まっているのでそれぞれの職務を理解しやすく、「薬のことは薬剤師に」という文化が浸透しているように感じます。ほとんどの患者がなんらかの薬物治療を受けているので、その方に合った連携が必要です。例えば1日の服用回数が多くてアドヒアランスを保つのが難しい方であれば、ケアマネジャーから1週間のサービス一覧などの情報をもらうことでヘルパーの入っている時間帯だけの服薬回数に減らしてもらう処方変更依頼をかけることができます。その方にいまどんな支援が必要なのか、どの職種がどういう関わりを持ってくれているのかを把握しみんなで支えていく環境を構築していくことが在宅医療の第一歩です。薬剤師がどう関わっていくと患者さんが助かるのかを、地域の薬剤師さんと常に相談しながら院内と地域の連携役を担うようにしています。

在宅医療の充実には
地域の薬局の参画こそ不可欠

近隣の薬局との連携する重要性とは?

当院に入職した当初、訪問服薬指導を受けている患者の割合は全患者の中でたったの17%にとどまっていました。その大多数が1つか2つの薬局に集中している状況を見て、今後在宅医療を推進していかないといけない中この薬局だけに負担がかかることで疲弊してしまったら地域が回らないであろうこと、地域全体の力を上げていくために私たちにできることはなんなのか真剣に考えました。地域のどの薬局が在宅医療に関わろうとしているのか、どんな想いの薬剤師たちがいるのかの情報を集め、地域の薬剤師との連携の会を始めました。処方箋の情報からでは推察できない患者の状況などを事前に共有することで、訪問する薬剤師の手間や不安を取り除くことができてきており、また地域の薬剤師からの医師へのフィードバックも充実してきています。薬剤師が在宅医療に関わることで治療の質が上がっているのを肌で感じています。

  

「患者に寄り添った」薬剤師を目指して

桜新町アーバンクリニックと関わったきっかけは?

地域の保険薬局の在宅医療部に所属しています。もともとは製薬会社に10年近く勤務していたのですが、徐々に薬剤師として「患者に寄り添う」仕事がしたくなり、在宅訪問の薬剤師になりました。現在、勤務している調剤薬局での担当エリアが世田谷区ということで、桜新町アーバンクリニックと関わるようになりました。
桜新町アーバンクリニックでは大須賀さんの働きかけで、毎朝行われるカンファレンスのうち毎週水曜日は地域の保険薬局も参加させてもらい発表の機会もいただいてます。クリニック自体がフレンドリーな雰囲気なのでカンファレンスの後には先生や看護師の方々に気軽に話しかけることができ顔がみえる関係を築けています。また、桜新町アーバンクリニックでは毎回の往診時の情報を地域の保険薬局も含む関わっている全ての職種にむけてファックスで提供してくださいます。処方箋1枚だけの情報しかもらえないクリニックが多い中非常にありがたいです。最初は提供される情報があまりにも多いので、そのことにとても驚きました。タイミングによっては退院前カンファレンスや初回の訪問、往診にも同行させてもらえます。患者のことを考えたときに、薬剤師として知っておくべきことを知り、患者に寄り添った薬剤師になりたいという理想を実現できていると感じています。

薬だけでなく患者の暮らしにも目を向けて

在宅の薬剤師としての仕事は?

普段の業務は1日に6・7件から多いときには10件くらいの患者を訪問しています。在宅の薬剤師として心がけていることは、患者の自宅にまで訪問できるので、できる限り薬に関することだけでなく、その患者の普段の暮らしに関わること、生活や体調の変化にも心を配るようにしています。
訪問服薬指導は月4回、癌末期の方で月8回までの算定が可能で、安定している患者さんだと2週間に1度程度の訪問になることが多いです。ヘルパーさんや訪問看護師さんの方が訪問頻度が高いことがよくあるので、薬がしっかり飲めているか、新しい薬がでたときは特に副作用のような症状はでていないかなど確認していただくようお願いしたり、逆に食事の状況、嚥下機能、ADLなどの情報を教えてもらったりもしています。在宅医療では地域の多職種が連携することが重要だと感じています。桜新町アーバンクリニックでは地域の多職種の方たちと連携をとり情報共有がしっかりできているのでチームで患者を支えていると実感できています。

薬剤師にとって
本当に必要な情報を伝えてもらえる

クリニックに薬剤師がいることのメリットは?

在宅の薬剤師にとっては、処方する薬が変わることは非常に重要な情報です。薬が変わることだけでなく、変更する理由は何なのか、いつから変更するのかといった情報は、患者を訪問するタイミングにも関わってきます。クリニックの中に薬剤師がいると、「薬剤師にとって重要な情報」をきちんと伝えていただけるのでとても助かります。
また、薬剤師は処方箋に疑義があった場合に処方した医師に確認しますが、医師に疑義照会をするのは意外に「ハードルが高い」のです。クリニックによっては医師と直接に話せないこともあります。クリニックに薬剤師がいることで、薬剤師が疑問に思うことについては、あらかじめ処方箋の備考欄に記入するように医師に伝えていただいています。

  

患者への診療という「場」の共有を通して

当院では、医師の訪問診療に看護師が同行します。同行では医師の診療の補助をしながら、看護師ならではの視点で患者や家族へアプローチができるよう心がけています。同行看護師として、どのような役割を果たすことができるか、日々悩みながら働いています。
患者が医師へ病状や想いを伝えられているか。医師の説明はきちんと患者や家族へ届いているか。声かけをしながら、伝えきれていない想いや疑問の有無を確認したり、気持ちを聴き取ったりと橋渡し役をすることもあります。また医師が考える治療を、患者の生活スタイルを大切にしながら無理なく実施できているか。地域の訪問看護師やケアマネジャーなど他職種と連携しながら最善を考えています。

それぞれの役割を知り、連携すること

このクリニックに来るまで薬剤師との関わりは少なく、仕事内容や役割をきちんと把握していなかったように思います。診療所薬剤師との出会いから、薬剤師の日々の仕事状況や感じていること、悩みを共有できることで必要な情報交換ができるようになり、多方面から患者を知ることへつながっていると感じています。また病状が変わりやすく安定しない場面では、薬剤師の迅速な対応に救われることが多いです。日々の残薬などの薬管理にかかわらず、患者の辛い症状が軽快するために、チームの一員として連携できることが質の良い医療へつながると考えます。今後もより一層協働ができればと思っています。

  

患者・家族とクリニックとの「橋渡し」を

現在の役割はおもに介護サービスの調整です。退院前カンファレンスに出ることもあり、その時点から在宅医療、介護サービスがうまく連携していけるように調整します。初回の訪問までに時間がある場合には、先に患者、家族とお会いしてどんな状態なのかを把握し、クリニックのみんなで共有できるようにもしています。
患者の暮らしを考えると、医療だけではまかないきれないことが多くあります。例えば、患者が普段はどんな暮らしを大切にしていて、今後、どう暮らしていきたいかといったところまでは医療だけでは診られない。医師と同行して訪問することで、そういった部分にも目を向け、患者、家族と医師や看護師との「橋渡し」をしていきたいと考えています。

患者の「暮らし目線」で薬の治療を考える

介護は普段の暮らしから患者にアプローチします。お通じ、睡眠、食欲などと薬の関係も気になります。介護福祉士だから気が付く普段の暮らしの変化、それと薬の関係性、残薬や服薬のことなど気がついたことは、すぐに薬剤師に相談しています。クリニックの中に薬剤師がいるので私も安心できますね。例えば、服薬が難しくなってきている患者を院内薬剤師と一緒に訪問すると、暮らしの視点で薬についても考えてくれ、薬の専門家の立場から提案もしてもらえます。そして、訪問服薬指導などのサービスが必要だと判断される場合にはその患者ごとのかかりつけの保険薬局と適切な連携をとってくれます。そういった連携ができると、患者、家族により良い在宅医療に貢献できていると感じます。

  

患者・家族の「松葉杖」として

当初は医療事務職でした。在宅医療の質問や依頼の電話を取り次いでいるうちに、私に知識があればもっとスムーズに在宅医療に移行できる患者がいるはずと思い、社会福祉士の資格を取得しました。今の役割をひと言で示すと、在宅医療を始める前の調整役です。
在宅医療に移行する患者や家族には不安がたくさんあります。お金のこと、治療のこと、最期まで看てもらえるのかという不安…。私は社会福祉士ではなく、あえて「相談員」と名乗り、患者や家族の相談窓口になっています。患者や家族を支える「松葉杖」のようでありたいと心がけています。

患者からの薬の相談は薬剤師と連携して

在宅医療に移行する患者には症状が重い方も多く、いかに残された時間を大切に使うかが重要です。病院や外来から在宅医療への移行がスムーズでないと患者も家族も不安になるでしょう。退院前カンファレンスや初回訪問には、私も薬剤師も同行します。院内に薬剤師がいると看護師の負担も減り、その分チーム力がアップします。
在宅医療は薬物治療が多いのですが、やはり、薬の説明、服薬の仕方などは薬剤師がきちんと説明することで患者も家族も安心します。患者や家族から「クリニックには薬剤師さんがいますよね」と薬のことを聞かれることも多いです。すぐに院内薬剤師に確認してお答えしています。また、多職種から集まる情報を必要な時に地域のかかりつけ薬局(薬剤師)に伝えてくれるので、患者、家族に安心感をお届けできていると感じています。

  
  

<医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック>
内科/皮膚科/小児科/婦人科/心療内科/ 在宅医療/訪問看護

〒158-0097 東京都世田谷区用賀2-15-5朝日生命用賀ビル2F
☎03-5716-5220 FAX.03-5716-5221 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「患者様本位の医療サービス」の提供を心がける5つをお約束
①ご高齢の方から障害をお持ちの方、ターミナルケアの必要な方まで幅広く対応可能な訪問診療を実践します
②何でもお気軽に相談いただけます
③地域の様々な医療・介護サービスと連携、安心できる療養環境を提供します
④24時間365日対応します
⑤ご本人やご家族の意思を最大限尊重した治療を行います

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