薬剤師取材

薬剤師が在宅医療に介入するために

特定医療法人 生仁会 須田病院 薬剤部長・日本病院薬剤師会精神科専門薬剤師 定岡邦夫先生
合資会社 中田薬店 ゆう薬局 日本病院薬剤師会 精神科薬物療法認定薬剤師 中田裕介先生

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中田裕介先生(左) ・岐阜県薬剤師会理事
定岡邦夫先生(右) ・岐阜県病院薬剤師会理事 ・岐阜県病院薬剤師会飛騨ブロック長
(2018年3月取材)

薬薬連携対談 〜岐阜県高山市を事例として〜

地域包括ケアシステムにおける在宅医療への注目が高まる昨今、チーム医療の一員として薬剤師に求められる役割も重要性を増してきました。
今回は、岐阜県高山市で互いに、また地域の中で連携しながら在宅医療に取り組む須田病院の定岡先生と、ゆう薬局の中田先生によるクロストークを展開。薬剤師による在宅医療介入の現状や今後についてお話を伺いました。

高齢化により在宅医療が望まれる広大な医療圏で薬剤師にできること

現在の高山市の病院・薬局の状況は?

定岡 高山市は市町村面積が全国で最も広く、東京都とほぼ同じくらいの面積です。それに対し人口は9万人を割り込み、5世帯に1世帯が65歳以上の高齢世帯となっており、全国平均と比べると10年から15年前倒しで高齢化が加速している状況です。
薬剤師不足が深刻化する状況で、私たち薬剤師はチーム医療の一員として、在宅医療を含め、広域に点在する患者さんをどうやってカバーするのか。そのために病院薬剤師と薬局薬剤師がどのように連携していくかが問われています。

東京都と高山市の薬局数および薬剤師数の比較

在宅医療への取り組みが問題解決の鍵に。全国に先駆けたモデルケースを目指す。

在宅医療に取り組むきっかけは何だったのでしょうか?

定岡 以前から在宅医療介入の必要性は感じていましたが、実現は難しいと思っていました。しかし、高山市は少子化も高齢化も加速しています。少子高齢化は全国的な問題ですから、そこは発想の転換で、私たちの取り組みこそ先進的なモデルケースとなり得ると考えるに至りました。これだけ医療資源が枯渇した広大な医療圏でも可能だということは、他の地域でもできると感じていただけるのではないかと思うんです。
それに病院としては退院促進や再入院の抑制をはかる必要もあります。そんな時、薬局薬剤師や他職種との連携がいかに重要であるか、医師の理解も深めていかなれば始まりません。そうした課題の解決に向けて在宅医療への取り組みが始まりました。

中田 お互いに意思疎通を深めながら在宅医療に介入し始めたのが2年ほど前です。当薬局は須田病院の近隣に位置することもあり、最近では薬剤部や医局にお邪魔して直接相談をしたり、訪問看護師やケアマネジャーともお互いに行き来する機会も増えてきました。須田病院で開催する病院研修会にも参加させていただいています。
定岡先生を中心に物理的な距離だけでなく、医療従事者同士の距離も日常の中で少しずつ縮まってきていると感じています。一人で考えていて後回しにしてしまうようなことも、職場や立場が違うとお願いしやすい部分があるので、頼り頼られるという関係性も生まれてきました。以前は無理だと思っていた在宅医療ですが、お互いに背中を押し合うことで進められているのかなという気がします。

地域の病院と薬剤師会の交流を機に、在宅医療における薬薬連携の理想形を模索。

具体的にはどのような取り組みをはじめたのでしょうか?

定岡 まずは近隣の飛騨市、下呂市を含めた10施設の病院薬剤師会と地域の薬剤師会が集まり、連携体制を強化して共同歩調を目指す「薬局長会議」や「薬薬連携推進協議会」を立ち上げました。各病院の薬局長や次席、地域の薬剤師会の会長、副会長などキーパーソンとなる方々に参加していただいています。
会議の中で印象的なのは、薬局薬剤師の先生方は訪問薬剤管理指導を行うことに前向きではあるものの、やはりマンパワーの少ない中でランダムに医療機関から指示が出された場合に対応できるか不安視する声が多いことです。
中田 在宅医療のスタート時は週に1回、安定してきたら隔週で回るくらいの頻度ですが、続けていくには個々の努力だけでは困難です。いろいろな人を巻き込んで意見や協力を求めながら、病院に頼るべきところは頼る、というようにお互いの役割を精査し効率良く進めていく必要があります。それが、結果的に連携にもつながるのではないでしょうか。現状では、在宅医療介入への意思表示はしているものの、急な依頼に対応するのは難しいという薬局は多いですね。
定岡 そこで、病院薬剤師が医師や他職種との間をつなぐコーディネーターとして後方支援すれば円滑に回っていくのではないかと考えました。服薬に問題がある患者など訪問看護師が持っている情報を活用し、薬剤師の在宅医療介入が必要と思われる患者さんを私たちがリストアップします。独居世帯や高齢世帯など優先順位の高い患者さんから医師に指示を出していただき効率的に薬局薬剤師へ依頼をしていくシステムを地域に先駆けて始めることにしました。その際に患者さんの住居や保険の形態、既往歴、薬剤の管理方法、主訴など、会議での皆さんの意見も加味した必要情報をまとめ、提供をしています。
中田 私が在宅医療介入を進める上で懸念しているのは、薬局薬剤師の仕事が医療従事者の皆さんにきちんと理解されているのだろうかということです。調製など物の管理だけでなく、患者にまつわる情報管理も重要な仕事です。薬を届けて管理するだけが在宅医療における薬剤師の役割ではないことを理解してもらえるよう、働きかけていかないといけないとも思っています。

病院薬剤師が薬薬連携のコーディネーターに

医師や病院薬剤師など、他職種ともお互いに補完し合い地域の医療資源を有効活用していく。

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