薬剤師こだわり図鑑
健康サポートにこだわり vol.3

健康イベント等に取り組み、
健康サポート薬局の形を模索

田辺薬局三軒茶屋店 河田祐子先生

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2009年、田辺薬局株式会社に新卒入社。2店舗を経て、現在は世田谷区の商店街に位置する健康サポート薬局で店長として勤務されている河田先生。4年ほど前から薬局の待合を使った認知症カフェや健康相談会などイベントの企画・運営に取り組んでいる。イベントの実施に至るまでの経緯と河田さんが目指す健康サポート薬局の形について伺った。

ルーティンワークの他にも
薬局としてできることはないか考えるようになる

入社してすぐは仕事を覚えることと知識を吸収することに必死でしたが、3年ほどで一通りの業務がこなせるようになり、仕事を俯瞰して見る余裕ができました。外来業務では、窓口で患者さんとの接遇時間をできるだけ確保するために、処方箋受付から窓口に出るまでの作業の部分は「正確に速く処理する」ことを追求し、窓口では、薬を飲んでいる間や飲み終えた後の疑問や不安ごとが生じた場合に薬局に相談しようという発想を持っていただけるよう、感じの良い接客を心がけていました。
しかしその中でも「もっと薬剤師の仕事を広げれば、薬局を違った形に出来るはず…。」と、漠然とした想いを抱えながらも具体的に何をしたらいいのか、行動に移すためにどうしたらいいのかも分からず、一歩を踏み出せずにいました。

「この地域に根を張った仕事をしていいよ」
上司の一言が、一歩を踏み出すきっかけに

5年前、開局のタイミングで現在の店舗に異動になりましたが、私のモヤモヤした想いは続いていました。そんな時、同店のパート薬剤師に相談したところ、志を持って様々な活動をされている薬剤師さんが集まる会合に招待してくれました。スポーツファーマシストの資格を活かして起業して精力的に活動されている方、災害医療薬剤師としても第一線で活動されている方、NST専門療法士の資格を持ち、透析・注射薬調剤などにも精通したこだわりの薬局を立ち上げた方など、様々な分野を通して地域活動に熱心に取り組まれている方々の話を聞いたことで「薬剤師にも様々な働き方があるんだ」と刺激を受けました。
また同じ頃、地域包括支援センターのケアマネジャーさんから相談を受けたMCIの男性患者さんとの出会いがありました。その方は奥様を数年前に亡くされ、寂しさや不安から年38カ所もの病院、薬局に通い、私が訪問した際には、ご自宅には睡眠導入剤や下剤など大量の残薬を溜め込んでいる状態でした。
男性は女性と比べて地域住民との交流が少なかったり、性格的に社会参加が難しかったりする方が多い傾向にあります。勝手な推測ですが、この方が多くの医療機関を受診し、その先々で門前の薬局で睡眠導入剤や下剤を交付されていた(しかし服用されていないため1000T以上の残薬として溜め込む結果に。)その根底の部分には、対等に相手をしてくれる人・場所を探していたということがあるのかもしれないと考えることがありました。

そこから私が実際に行動を起こすきっかけになったのは、「当分異動の予定はないから、この地域に根を張った仕事をしていいよ」という上司の一言でした。勤務薬剤師は異動がつきものですが、その一言が地域に出て活動する大きな後押しとなりました。
在宅業務や飛び込みの営業、勉強会、老健の認知症カフェでの出張講演などを通じて、同じ地域で働く介護職や訪問系の医療職の方々と知り合い、介護に携わる方々の気づきの視点の鋭さやホスピタリティの高さに刺激を受けつつ、協働を重ねていく中で、地域での人脈がどんどん広がりました。
ちょうどその頃、健康サポートの取り組みが始まったこともあり、前述したMCIの患者さんのような方の居場所や、地域の方のコミュニケーションの場も当薬局で作ることが出来たらと考え、認知症カフェ『さんこみゅ。』(月1回)と健康相談会(月に1回程度)を定期開催することにしたのです。

地域の行政や多職種を巻き込んで健康イベントを告知

認知症カフェのアクティビティは折り紙教室やコグニサイズ体操など認知機能に刺激を与えるものなどにし、健康相談会の骨年齢や肺年齢チェックなどにしています。それらのテーマは全て現場で考えるようにしています。ケアカフェを実施・運営されている薬局薬剤師さんにイベント内容や運営方法などについて相談をして、参考にさせてもらっているものもあります。社内で応援してくれる先輩からヒントをもらうこともあります。しかしそこで壁となったのが、私たちの取り組みをどのように広め、知ってもらうかというところでした。

まずは、薬局が「ここにある」ということ、そして私たちの活動を知ってもらわないと意味がないので、参加者を増やすために様々な宣伝活動を試みました。イベントの告知を入れたティッシュを作成して店舗の前で配るという地道なところから始め、街づくりセンターの管轄の区の掲示板に貼り紙をしたり、社会福祉協議会のホームページとメールマガジンで情報発信をしていただいたり、地域活動に力を入れているクリニックや地域包括支援センターにチラシを置かせていただいたり。地域の方々には「厚生労働省が認可した健康サポート薬局なので営利目的ではありません」と説明した上でご協力いただいています。また、店舗に営業として来てくださった成分調整の冷凍弁当の業者さん、高齢者宅を回っている銀行の営業マンを始め、振り込み詐欺防止の啓発活動に訪れた警察官など、過去接点がなかった異業種の方に「イベントを一緒にやりませんか」とこちらから提案したりもしました。皆さん快く引き受けてくださり、ジャンルを問わず様々なコラボレーション企画を開催することができています。

健康サポート薬局の一つの在り方を確立するため、
現在も挑戦中

また、社内の健康サポート薬局以外の店舗でもイベントを開催する店舗が増えてきました。イベント実施がどのような効果をもたらしているのかを表すのは難しいですが、イベントがきっかけで初来局、そこからかかりつけ薬局として選んでくださった方も少なからずいらっしゃいます。ただ、「イベントをやる」ことや「人数集め」に囚われ過ぎて目的を見失わないようにすることも重要だと考えています。健康に関する相談事は、イベントの日に発生するとは限らないですし、対応に急を要することもあるので、イベントだけに固執せず、日々の在り方を追求していく姿勢が健康サポート薬局に必要とされることなのではないかと感じています。
現在、認知症カフェはリピーターも含め少なくても4,5人、健康相談会は多い時で30〜40名が来局されます。健康サポート薬局としての在り方を模索しているところですが、まずはコツコツと続けて行くことが大事だと考えています。目指すところは、処方せんがなくても自由に入って来られる場所です。まず最初に気軽に健康相談ができる場所として、地域の方や患者さんの保険薬局の捉え方が変わっていけばと思います。

勉強のために活用している書籍

◆「未来に繋がる夢のある健康サポート薬局づくり 基礎編」(薬事日報社)
 宮原富士子 著
上司に勧められブログを拝見するようになったNPO法人HAP 理事長 宮原富士子先生の書籍です。「健康サポート薬局」で必要な制度・仕組みの基本的知識や基本用語が解説されており、「健康サポート薬局」を展開するうえで必要な知識を身につけることができます。

◆「64のケースで考える OTC薬販売の実践問題集2」(じほう)
 堀美智子/監 医薬情報研究所/株式会社エス・アイ・シー/編
外用薬について症状(ケース)別に問題が作成されている他、サプリメントや検査薬などが網羅されているので日常業務に役立てています。

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