
初めての在宅では、様々な課題に直面
ファーマシィが在宅医療に力を入れて取り組んでいる会社だということで入社しました。入社後、施設の在宅支援を任されることになり、最初は緊張もしました。慣れていないこともあり往診同行時、医師のスピードに合わせるのがとても大変で、施設入所時に患者さんがご自宅から持参された残薬の管理や入院後の処方変更などにも苦労しました。その中でも最も課題に感じたのは「粉砕調剤」でした。
粉砕処方が入ると、調剤で2時間近くかかってしまっていました。また粉砕した薬剤が、施設で保管している間に配合変化で粉が固まってしまったことや、薬が何種類もあることで看護師さんの管理が大変になるといった課題に直面していました。
粉砕からの切り替えを提案

その問題を解決する方法がないかを探る中で、経管投与の患者に繁用されている簡易懸濁法を在宅の現場で活用しているケースがあることを知りました。これまで経験したことがなかったので、私自身、最初は少しとまどいがありました。しかし、さらに調べていくうちに安全性も確認でき、また、ちょうど施設の看護師さんが変わるタイミングだったので、切り替えの提案をしました。すると、新任の看護師さんが簡易懸濁法の経験がある方だったので、ご理解をいただき、スムーズに切り替えることとなりました。
簡易懸濁法で服用してもらうために、処方時に散剤があるものは散剤に、なければOD錠へ、OD錠がなくてもジェネリック医薬品で代替薬があれば、処方を変更していただいています。また、実際に服薬に携わる看護師さんと施設スタッフが適切に管理できるように、どの薬が簡易懸濁できるものか患者さんごとにリスト化し、その資料(写真1)をお渡ししています。
調剤方法を見直すことで患者さんのための時間を増やせる

簡易懸濁法を取り入れたことで様々なメリットを生むことができました。粉砕法の場合、処方変更が一つでもあると全てを作り直さなければいけませんでしたが、簡易懸濁法では変更薬剤だけを差し替えれば済むので薬の廃棄が減り、患者さんのコスト負担を軽減することができました。また、看護師さんにとっては粉の包数が減ったことで服薬にかける手間がとても楽になったと言ってもらえました。その浮いた時間で患者さんへのケアがより充実するようになりました。薬剤師にとっては、粉砕した時の配合変化を気にしなくても良くなったことと、調剤時間を大幅に短縮することができたので、医師への情報提供書の記載や患者さんのための時間に充てることが出来るようになりました。
患者さんから
もっと信頼される「かかりつけ薬剤師」を目指したい

かかりつけ薬剤師として現在42名の患者さんを担当しているのですが、より担当患者を増やしていきたいという目標もあります。薬局スタッフの協力もあり、かかりつけ薬剤師を希望される患者さんは着実に増えてきています。先日も以前に疑義照会をしたことのある患者さんから「あなたに私のかかりつけ薬剤師になってほしい」と指名を受け、薬剤師としてやりがいを感じています。一方で、患者さんからは薬のことだけでなく、食事の栄養面についても質問を受けることが多く、その点も勉強をしていきたいと思っています。
効率的で質の高い薬物治療を進める上で多職種との連携はとても大切だと考えています。薬をお渡しして終わりではなく、渡した後のフォローに関して、患者さんはもちろんのこと、看護師さんや施設のスタッフの服薬介助も考慮し、これからも取り組んでいきます。
私の参考書

◆「内服薬 経管投与ハンドブック 第3版 ー簡易懸濁法可能医薬品一覧ー」(じほう)
簡易懸濁法に適した代替薬を調べる時に活用しています。一覧表に商品名順、薬効分類順に並んでいるので検索が容易です。
この記事を読んだ方が読んでいる他の記事:
■「患者1人ひとりの状況にしっかりと寄り添う」
(メディスンショップ蘇我薬局 雜賀匡史先生)
■「子供達の為になる薬と情報を提供したい」
(調剤薬局あさがお 柏木紀久先生)