薬剤師取材

スポーツファーマシストの資格を活用し
広く地域の健康づくりに貢献する

薬樹株式会社 健ナビ薬樹薬局人形町 野村大祐 先生

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薬樹株式会社でストアマネジャー・管理薬剤師として働く野村大祐先生は、趣味のマラソンを通じてスポーツファーマシストを取得。現在は薬樹が本社を構える女子サッカーなでしこリーグ1部「大和シルフィード」のメディカルスタッフとしても活躍しています。スポーツファーマシストの知識を生かして地域の健康づくりにも貢献する野村先生に、スポーツファーマシストとしての役割や課題、展望をうかがいました。

趣味がきっかけでスポーツファーマシストの資格を取得

―初めに薬局の概要を教えてください。

東京都中央区にある健ナビ薬樹薬局人形町で、ストアマネジャー、管理薬剤師を兼務しています。日本橋の中心にある薬局で、さまざまな年代層の患者様が訪れます。応需科目のメインは整形外科と内科、精神科ですが、それ以外にも小児科、耳鼻科、婦人科など幅広く受け付けています。処方せん枚数は月間およそ2,000枚、1日100枚程度。薬剤師数は常勤4人、パート1人です。


―スポーツファーマシストの資格を取ろうと思ったきかっけは何ですか?

趣味のランニングがきっかけです。私は薬剤師として20年目で、その間、ずっと薬樹株式会社に勤務し、色々な薬局や本部も経験しました。2012年に栃木県栃木市の薬局に配属され、そのときに趣味でランニングを始めました。そこからフルマラソンの大会にも参加するようになり、そこをきっかけに、自分の仕事である薬学にかかわるドーピングに興味を持ち、2016年に資格を取得したのです。スポーツファーマシストを取得するとき、正直に言うと会社に貢献しようという気持ちはあまりありませんでした。むしろ趣味から入ったからこそ、ここまで熱心に続けられているのかもしれません。


―認定試験と取得者の現状について教えてください。

スポーツファーマシストの資格を取得するには、基礎講習会(筆記試験)と実務講習(e-ラーニング)を受講し、知識到達度確認試験に合格する必要があります。認定の有効期限は4年間で、現状11,489人の認定者がいますが、資格を維持するには毎年の実務講習を受講が必須となります。また、普段からスポーツファーマシストの資格を十分に活かすことができず、更新に至らないケースもあるようです。


JADAの検索サイトなどを通じて相談を応需

―スポーツファーマシストとして、どのような活動を行っているのですか?

主な活動はアスリートからのドーピングに関する相談です。JADA(日本アンチ・ドーピング機構)がスポーツファーマシストの検索サイトを公開しているので、最初の相談はその検索サイトを通じてきました。検索サイト以外では私自身がスポーツファーマシストの資格を持っていることを広く社内でアナウンスしているため他店舗からドーピングに関する問い合わせを受けることもあります。またその他の活動としては社内でスポーツファーマシストの資格を持つ人や興味のある人で集まり活動する取り組みもはじめています。


―どのような相談内容が多いのですか?

1月から春先にかけては花粉症などのアレルギー薬についての相談が増えますね。室内室外のスポーツに関係なく、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどを引き起こす花粉症はパフォーマンスに大きな影響を与えます。それにもかかわらず、薬を飲んではいけないと誤解して、飲まずに我慢するアスリートも少なくありません。しかしアレルギー薬は禁止物質を含まないものも多く、きちんと飲んでパフォーマンスをキープすることができるのです。そのような情報もスポーツファーマシストがきちんと説明することが重要だと感じます。


―活動する上で苦労したことは何ですか?

サプリメントに関する相談対応です。医薬品の禁止物質は検索すればわかりますが、サプリメントは全ての成分を表示する義務がないため、調べることに限界があります。よって、アスリートの方にはリスクを承知したうえで、最終的にはアスリート自身の責任で摂取してもらうよう理解していただかなければなりません。その判断を助けるために、スポーツファーマシストができる限りの判断材料を提供したうえで、判断に対する不安を少しでも解消する必要があると感じています。


スポーツファーマシストの知識を生かして地域へ貢献

―スポーツファーマシストの資格を取得しても、それを十分に生かす場がないことが課題と聞きます。活動の場を得るためにどのような工夫をしていますか?

確かに、資格を取っても多くの方は身近に見本となる方がいないため、どのように取り組めばいいかわからない点は課題といえます。活動を始めるには、まずはJADAの検索サイトに登録することが第一歩として重要です。スポーツファーマシストの認定を取得すると自動的に検索サイトに登録されると勘違いしている人がいますが、それは誤解です。自分で手続きをして登録する必要があるので、きちんと登録しましょう。

また、私自身がそうだったのですが、検索サイトに登録することによってどのような質問が来るかわからないため、不安を感じる人もいるかもしれません。しかし薬に関する相談として考えれば、薬剤師が日常的に行っていることと大きくは変わりません。その場でわからなければ、調べてから回答しても問題はないので、まずは積極的に登録してみてはどうでしょうか。

もうひとつは、多職種による勉強会などに積極的に参加すること。トレーナーや医療者が参加する、スポーツにかかわる勉強会に参加し、横のつながりを作ることが重要です。日頃からそのようなところに顔を出しておくと、思わぬところからアンチ・ドーピングの講習会の依頼が来ることもあるからです。また各地域の薬剤師会にはスポーツファーマシストの活動を行っている会もあるため、問い合わせをしてみると活動のチャンスが広がります。

このほか、スポーツファーマシストの資格を日常業務の中で生かすことも可能です。主な役割はアンチ・ドーピングではありますが、幅広く運動に関する知識を持つことを生かして、患者さんに運動面から健康に関するアドバイスもできるからです。スポーツファーマシストとしての知識を使って、地域の健康づくりにも貢献できるのではないでしょうか。


なでしこリーグ「大和シルフィード」のメディカルスタッフの一員として活動

―女子サッカーなでしこリーグ1部の「大和シルフィード」のメディカルスタッフの一員として活動されているとうかがいました。活動のきっかけは何だったのですか?

本社が神奈川県大和市にある地縁から、当社が大和シルフィードのスポンサーになったのがきっかけです。徐々に関係が深まり、スポーツファーマシストや公認スポーツ栄養士の存在、健康サポートの取組み、地域密着等を評価いただき、2021年度に健康サポートパートナー契約を結びました。これにより会社から2人のスポーツファーマシストと1人の管理栄養士が大和シルフィードに派遣され、メディカルスタッフとして活動を始めました。


―活動内容はどのようなものですか?

スポーツファーマシストとしての活動は、アンチ・ドーピングの対応、月経に関する情報提供、衛生管理という3つのカテゴリーの活動を展開しています。具体的には、これら3つのカテゴリーに関する基礎知識を持ってもらうための講習を実施しています。サッカーはコンタクトスポーツで激しいスポーツなので、花粉症の薬や痛み止め、シップなど、必要な薬を安心して使えるようになる意義は大きいと感じています。

実は、薬剤師がメディカルスタッフとしてチームに参加することは極めて珍しく、これまでに前例のないことです。その意味で、今回の我々の活動は多方面から驚きと期待の声を多数いただいています。こうした期待に応えるためにもしっかりと活動していきたいですね。


―今後の展望を教えてください。

まずはスポーツファーマシストの活躍の場を広げたいと考えています。現在、競技団体に所属するスポーツファーマシストはおりますが、メディカルスタッフとしてスポーツファーマシストがチームに所属することは極めて異例です。しかし、薬剤師がメディカルスタッフの一員として活動することが当たり前になるように、よい前例を作るために頑張りたいです。さらに、スポーツファーマシストの本来の目的であるドーピングゼロに向けても努力を続けます。個人的な目標としては今年度から学校薬剤師もさせていただくことになりましたので、ジュニア世代の子どもたちにもアンチ・ドーピングに関する知識の輪を広げていきたいと考えています。



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