現在5大疾病に指定されている「がん」「脳卒中」「急性心筋梗塞」「糖尿病」「精神疾患」。今後も増加する見通しのそれらの患者さんに、薬剤師がどのように向き合っていくことが必要なのかを探ります。勉強会などを通して日頃から親交のある兵庫医科大学病院・薬剤部長の木村先生と、マルゼン薬局株式会社・代表取締役の村田先生のお2人に、5大疾病に関するデータを見ながら、病院・薬局それぞれの立場からお話を伺いました。
(本記事は医薬情報おまとめ便内、特集企画「5大疾病の現状と薬剤師の関わり方」にて掲載した記事です。 )
がん
副作用が出やすいがん治療においてはモニタリングが重要。薬局薬剤師もスキルアップで薬薬連携の充実を。
木村 ▶ グラフ(※1「がん(悪性新生物)に関する入院・外来推計患者数の推移」)から分かるように以前は入院治療がメインでしたが2006年以降では通院での治療が増えてきています。これは、例えば2週間に1回の通院でしたら、残りの13日間は地域や薬局薬剤師にフォローしてもらうことが必要になっているということです。がん患者さんは「自分はがんである」「疾患に立ち向かおう」という意識が高いので、アドヒアランスは高い方だと思いますが、薬をしっかり飲めるかどうかは副作用も大きく関わるので、モニタリングが重要になりますね。
村田 ▶抗がん剤は副作用の強い薬が多いので服薬後の自宅での体調変化、副作用や他医療機関の薬の相互作用など、病院が必要とされている情報をしっかり聞き取れるよう工夫して病院にフィードバックしています。特にこの春からは情報提供などがさらに重要になりました。
私の薬局ではがん患者さんは多くはないのですが、だからといって抗がん剤を詳しく知らないでは済まされないと木村先生からも厳しくご教授いただき、定期的に勉強会を実施しています。薬局薬剤師はがん患者さんに対しても処方箋で判断しなくてはいけないことが多いので、男女によるがんの多い部位の違い(※2「がんの死亡数・罹患数が多い部位」)、また各所のがんの基本的な考え方や治療法、どの段階で出された薬なのかを総合的に考えながら、しっかりと話を受け止めて相談に乗るようにしています。外用軟膏しか処方されていない患者さんから情報を聞き出すにはコミュニケーション力も大切だと痛感しています。そこに薬剤知識が加われば大きな信頼感になると確信しています。
木村 ▶近年、がんの薬物治療は非常に高度化・複雑化しているので、薬剤師にもより高いレベルでの専門的な知識が必要になってきています。保険薬局は若い薬剤師が多いので、病院薬剤師として保険薬局とは違う立場・視点からの意見を共有して、課題について考えていける関係性を築けたらと思っています。また病院との薬薬連携を考えたとき、薬局薬剤師のスキルアップは不可欠ですので、そのきっかけとして勉強会が役立ってくれたらいいですね。