薬剤師取材

~小児科医インタビュー~ 情報過多な時代だからこそ病院・薬局から正しい医療情報を

小児科専門医 松村有香 先生

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1971年、東京生まれ。小児科専門医。
日本大学医学部を卒業後、日本大学病院小児科、都立大塚病院小児科などで勤務。
森戸やすみをペンネームとして、小児の病気や育児に関する書籍を多数執筆している。
(2019年12月取材)

子どもやその親を取り巻く環境は、近年、大きく変化しています。共働きの家庭が増加し、スマホでの検索が当たり前になって……。医療情報の入手のしかたや、子と親が抱える悩みも少しずつ変わってきました。
現代の親子はどのような不安を抱え、どんなサポートを必要としているのか? 小児科医の松村有香先生にお聞きします。

共働きで情報感度が高く、
だからこそ不安を抱えがちな保護者が多い

小児科医になって23年。研修医だったときと現在とで、子どもがかかりやすい病気やその症状に大きな変化はないと感じています。もっとも大きく変わったのが子どもを連れてくる親御さん。1990年代に比べると働くお母さんの数は倍に増えました(※)。病院や薬局に来るお母さんの大半は“働いている”と思って接したほうがよいと思います。また以前に比べ、お父さんが連れてくることも多くなっています。しかも、子どもの体重やうんちの状態、食べたものなどをスラスラと答えられる。母親と同じような感覚・距離感でお子さんと関わっている父親が増えているなと思います。
もうひとつ、近年の親御さんの特徴だと感じるのが、ネットで情報収集をしてくるケースが多いところ。症状で検索して疑わしい病気を調べてから受診される方が増えました。なかには、うんちや蕁麻疹の状態をスマホで撮って診察時に見せてくれる方も。ICTを活用して上手に受診する親御さんが増えているように思います。
一方で、“調べすぎ”による弊害も。信頼性の低いWebサイトの情報を鵜呑みにして、過剰な不安を抱えて受診する親御さんも増えました。共働きで、情報感度が高く、だからこそ不安を抱えがち……。そんな方が最近の、比較的多い保護者像なのかなと思います。


※出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「専業主婦世帯と共働き世帯」

うちの子はもしかして……?
ネット情報に振り回される保護者に正しい情報を!

ここ数年で顕著に増えたと感じるのが、「発達障害の不安を抱える親御さん」です。昔のように身近に赤ちゃんがたくさんいるという環境ではないので、一般的な赤ちゃんがどうやって成長していくのかよくわからないのですよね。情報として「子どもの発達は個人差が大きい」ということは知っているけれど、どの程度が“個人差の範囲”なのかが判断できない。結果、ネットで検索しすぎてしまい、過剰な不安を抱えて余裕をなくしてしまう……、そんな方をよく見るようになりました。
まず知ってほしいのが、「検索結果の上位に来るサイトが信頼性の高いサイトというわけではない」ということ。私は患者さんに、「検索結果を上から順に見ていくのではなく、学会や大学病院など信頼性の高い組織の情報を参照してほしい」と伝えています。
発達障害関連のサイトではありませんが、例えば日本皮膚科学会や小児内分泌学会のWebサイトのQ&Aは充実していて役立つと思います。その他、症状をタップしていくだけで必要な措置や適した病院がわかるアプリ『こどもの救急』もおすすめです。また、「#8000」を知らない方も多く、これを知ってもらうことも有効だと考えています。もちろん、小児科やかかりつけの薬局に相談してもらってもよいですよね。
薬剤師さんにも、正しい情報を広めていただけるとうれしいです。また、「余った薬を使うことは基本的にダメ」ということや、「正しい点眼の仕方」など、薬剤師ならではの基礎的なこともしっかり伝えてほしい。あわせて「医師には話せないけれど、薬剤師さんになら話せること」があれば、そこを拾っておいていただけると心強いなと思っています。

目立つ場所にパンフレットを置いて
さりげなくアピールを!

おねしょ、ニキビ、月経困難症に悩んでいるお子さんも少なくありません。こうした症状は、なかなか相談しにくいもの。そもそも病院で治療ができることを知らない方も多いようです。そこで有効なのがパンフレット。当院の場合、受付ではなく診察室のデスクの上など目に付きやすい場所に置いて、治療ができることを伝えるようにしています。
病院や薬局は、悩みや不安を抱える方が集まるところです。押し付けにならないように注意しながら、正しく幅広い情報を伝えていくことが欠かせません。そしてなにより、笑顔で、優しく。働きながら子育てをしている親御さんは、とにかく忙しいものです。子どもを連れて病院や薬局に行くだけでひと苦労ですし、疲れやストレスも溜まりがち。ですから、そこに行くと元気がもらえるような対応を心掛けたいですね。

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