特区で先行してオンライン服薬指導に着手
当薬局は港区のビジネス街に立地し、内科と脳神経外科を中心に月に200軒以上の医療機関から面で処方せんを受け付けています。当社にはローソン併設店が37店ありますが(2020年5月8日現在)、その第1号店として誕生しました。薬剤師数は3人で、30歳代から60歳代のオフィスワーカーの患者さまが多いという特徴があります。
薬機法改正によって今年9月からオンライン服薬指導が可能になります。当社ではそれ以前から、千葉県や福岡県など国家戦略特区でのオンライン服薬指導に先行して取り組んできました。そのため新型コロナウイルスの感染が始まる前からオンライン服薬指導の準備を行っていたという経緯があります。
こうした背景の中で2月28日、厚生労働省から出された通知によって、時限的に電話やテレビ通話等オンラインでの指導が算定できるようになりました。感染リスクの不安を感じる患者さまや診療側からの要望に応えるために、当社では全店でFAX受付、電話による服薬指導を行うことができます。さらに当店を始めとして、約20店舗ではテレビ通話の服薬指導も導入しました。
運用開始にあたっては、まずは服薬指導チェックリストを作成し、オンラインでも漏れなく服薬指導ができるように準備しました。またオンライン服薬指導の実施体制を整備するため、社長直下の「オンライン医療推進プロジェクトチーム」も設置。ここでは服薬指導のマニュアル作成やシステム環境の整備強化を進めています。
当社が導入している遠隔服薬指導ツールはメドレー社の『CLINICS(クリニクス)』、マイシン社の「curon(クロン)』、ニプロ社の『ハートライン TM』。どのツールを使うかは対応する診療科に合わせたり、周辺の医療機関に合わせるなどさまざまですが、1つの店舗で複数のツールを導入しているケースもあります。キャッシュレス決済などでも複数の決済方法があるように、患者さまの利便性を考えるとオンライン服薬指導についても複数の選択肢があっていいのではないでしょうか。
服薬指導は大きなトラブルなし、場所の選定などが課題
電話による服薬指導を希望される患者さまの方が圧倒的に多いのが現状ですが、実際に使ってみてそれぞれにメリット・デメリットを感じたのでご紹介したいと思います。
電話での服薬指導のメリットは、オンラインのシステムを導入していない店舗でもすぐに対応できること。一方でデメリットは、声だけの対応になってしまうので、患者さまの表情から様子を読み取ることができず、服薬指導に若干のやりにくさが生じる点です。
その点、テレビ通話の場合は顔を見ながら、かつ実物の薬を見せながら服薬指導ができるので不自由は感じません。とはいえ患者さまと医療機関、薬局側のそれぞれがまだシステムに慣れていないためにタイムラグが生じるなど、システム面や操作の点では改善が必要です。
また、テレビ通話では指導をする場所の確保が難しい点も課題です。今はiPadを使って調剤室の中で行っていますが、背景に個人情報や余計な薬などが入り込まないように、あちこち場所を探しながらやっている状態です。当社では服薬中の患者さまのフォローをするための専用ルームを順次、設置しているところですが、そうしたスペースが確保できるまでは不便が生じるかもしれません。
電話・テレビ通話に共通する負担としては、薬の配送にかかる業務負担があげられます。今のところ薬自体は取りに来る患者さまが多いのですが、配送の場合は送り状の作成から配送に関する説明、到着後に破損がなかったかの確認など、作業量は増えてしまいます。しかし現状において、来局することが患者さまと薬剤師の感染リスクを増加させるのであれば、接触リスクを減らした上で安全に服薬できるよう、やれることをやっていくのが薬剤師の使命だと考えています。