薬剤師取材

アドヒアランス向上のために薬剤師ができること ~処方医連携と吸入指導~

溝上薬局神辺町店 本間敬浩先生

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佐賀県有明町に「薬屋」を開業して110年の歴史を誇る株式会社ミズは、健康を通じて「地域の人々を幸せにする」ことを目標に調剤薬局、ドラッグストア、介護福祉事業などを展開している。2020年4月に新規オープンした溝上薬局神辺町店(佐賀県鳥栖市)では、処方医との強固な連携のもとに、呼吸器疾患を持つ患者への吸入薬指導を実施。調剤報酬に吸入薬指導加算が新設される以前から吸入指導に取り組んでいた、本間敬浩先生に、薬剤師が吸入指導を行う意義や課題を聞いた。

現場で学んだ指導ノウハウ
1年目から吸入指導を経験

当店は2020年4月13日のオープン当初から、呼吸器内科を標榜する近隣のクリニックと連携の下、患者さまに吸入指導を行っています。患者層は地域の高齢者を中心に若年層や小児が来局し、そのうち約3割が呼吸器内科の処方せんです。

私自身、薬剤師になって6年目を迎えますが、最初の薬局長に就任するまでは、大学病院前の店舗を基盤にして、社内の複数の店舗応援で様々な診療科の経験を積んできました。応援に行った店舗のひとつは、呼吸器内科の処方せんをメインに受けていて、そこでは当然のように吸入指導や医師へのフィードバックが行われていました。私は新人薬剤師としてさまざまなスキルを磨く中で、吸入指導の手技や説明方法について、先輩方から多くのノウハウを学ぶことができたのです。

こうした経験があるため、呼吸器内科に縁の深い立地で新店舗をオープンするという話がでてきた時も、特に慌てることなくこれまでの経験を生かして吸入指導に踏み切ることができました。今は、自分の持つスキルを活かしながらどのように医師と連携を深めていくか、楽しみながら試行錯誤を続けています。

自分自身がデモ機で実演
「うどんをすするように」などイメージ化で説明

吸入指導にあたって気をつけている点は、私自身がデモ機を使って患者さまの目の前で実演することです。吸入指導をすると、患者さま自身は吸えているつもりでいるけれど、実はきちんと吸えていないというケースがとても多いことがわかります。ですから私は初回だけでなくもちろん、2、3回目もデモ機を使って私自身が吸ってみて、「吸った時の音の強さ」を覚えてもらうことを徹底しています。

さらに、説明にあたっては擬音やわかりやすい例え話を入れるように工夫しています。例えば「うどんをすするように吸ってください」「肺の奥の壁に粉をつけるイメージですよ」など、できるだけイメージしやすいような説明を心がけていますね。

また、粉末を吸うタイプのデバイスであれば、1回吸ってみて、その後、ティッシュなどに軽くトントンと打ちつけてもらい、「残っている粉が出てくるようであれば、吸い方が不十分ですよ」と説明しています。

1回で使い方を理解する人はごく少数
薬剤師のフォローが必須

薬の添付文書にも使用方法は記載されていますが、吸入のための工程はとても多いため、すべてを載せられるわけではありません。また手順はあっても、「なぜそれが必要か」という理由までは説明されていません。そのため患者さんご自身が、どこが重要なのかを判断するのは難しく、薬剤師がきちんとフォローする必要性を感じています。

実際に患者さまの様子をみていると、1回で正しい使い方を理解できる人は多くないと痛感します。目の前で実演してもらうと、正しく吸えている時とそうでない時では、吸った時の音が違うのではっきりとわかります。「頭では理解しているが、実際にやってみるとうまくできない」「そもそも説明をあまりよく理解できない」などさまざまですが、理解が不十分な人も含めればかなりの割合が正しく使用できていない印象です。

傾向として、若い人は理解はできていても自分の判断で使用をやめてしまうことがあり、高齢者の場合はそもそも理解が不十分で適正に使用できないケースが多いのではないでしょうか。

「1.5回目」の投薬時に電話でフォローアップ

また、店頭できちんと指導できて、本人が理解できたつもりになっても、いざ家に帰って使おうとしたときに疑問点や不明な点が出てくることはよくあります。同時に、本人はきちんと吸っているつもりでも、実は吸えていないことも多いため注意が必要です。そこで私は、投薬時に本人の許可を得た上で、投薬後、数日以内に電話でのフォローアップをしています。だいたい初回の投薬と2回目の来局の間にフォローするので、「1.5回目の投薬」というイメージです。ここできちんと理解して正しく使用することで、その後のアドヒアランスに大きく関わるため、特に重視している取り組みです。

もちろん患者さまには24時間、薬剤師につながる連絡先をお伝えしていますが、休日や夜間に電話で質問するのはためらう人も多いため、薬剤師側からの働きかけが重要です。一方で、まだ薬剤師による電話でのフォローアップが世の中に浸透していないためか、「よかったら後日、きちんと薬が使えているか確認の電話をしてもいいですか」と聞くと驚かれることもあります。しかし、いざ電話をしてみると「実際に使ってみたら、ここがわからなかった」と言って前のめりに質問してくる人も多く、フォローアップの重要性を実感しています。一部にどうしてもフォローアップを拒否される人もいるので、そうした患者さまにどう関わっていくかは今後の課題です。

電話フォローでは手技の確認は難しいので、指導内容が理解できているか、家で1人で使ってみて気になったことはないかなどを重点的に確認しています。その上で、きちんと使えていない様子や本人が不安に思っていることがあれば、次回の投薬時に中心的にフォローします。

週1回は処方医とミーティング
貴重な臨床情報を共有

正しい吸入指導をするに当たっては、処方医との連携が欠かせません。当薬局では週に1回、処方医とミーティングを実施して、患者情報を共有しています。文書で情報提供するトレーシングレポートも注目されていますが、私たちはあえて対面でミーティングすることで、より深い部分まで情報共有するように心がけています。

ミーティングの際には、普段、薬剤師が見ることの少ない病理やレントゲン写真などの情報を共有することができて、非常に勉強になります。また薬剤師からは指導内容や指導方法を共有し、共通認識をもって患者さまの指導に当たれるように意識しています。指導方法については実際に医師の前で実演し、「このやり方で問題ない」と確認を受けたうえで患者さまに指導しています。

数は多くありませんが、必要に応じて薬剤師から医師へ処方変更を提案することもあります。例えば、手が不自由な人に対して、デバイスの操作に力が不要なものを提案したり、回数が多くてアドヒアランスが悪くなる人に対して、1日1回のタイプを提案したりなどです。結果的に処方変更が行われない場合もありますが、薬学的な観点から患者さまに有益と思われることは積極的に提案するようにしています。

患者指導に関して、医師と薬剤師のすみ分けは特に意識していません。仮に指導内容に重複があっても、医師と薬剤師が相互に補完しながら患者さまをフォローすることで、アドヒアランスが100%に近づくことを目標にしています。

調剤報酬に吸入薬指導加算ができたのは
まさに薬剤師に求められる役割だから

今回、2020年度調剤報酬改定で薬局における吸入薬指導加算が算定できるようになりました。これは吸入指導によるアドヒアランス向上が、まさに薬局・薬剤師に求められる重要な役割のひとつだからだと確信しています。私自身は、先輩達のノウハウを身近に学ぶチャンスがあったため、早くから吸入指導に取り組むことができました。今後はこうしたノウハウを、いかに若手薬剤師を含めた他の薬剤師に還元していくかが課題です。

また、新型コロナウイルスの感染拡大は、呼吸器疾患を持つ患者さまにも大きな影響がありました。中には「受診するのが怖くて3カ月も我慢した」という人も。今後、まだまだ新型コロナウイルスの感染拡大に予断を許さない中で、いかにして基礎疾患を持つ患者さまを適切にフォローしていくか、薬剤師としてできるかぎりの努力をしていきたいと思います。

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