取材記事

薬局薬剤師だからこそ医師に伝えられること、トレーシングレポートの活用とその先

アイン薬局西新宿店 副薬局長 管理薬剤師 大熊祐美先生

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大学病院に隣接し、1日の応需処方箋枚数は約600枚、勤務薬剤師35人の大型店舗、アイン薬局西新宿店に務める大熊祐美先生。
現在、その薬局で副薬局長、管理薬剤師を務める大熊先生にトレーシングレポート活用までの道のり、成果、さらには今後の取り組みについて伺った。

ある日届いた医師からの手紙、縮まった距離感を実感

アイン薬局西新宿店は大学病院に隣接することから、様々な診療科の処方箋を受けています。最近では、漢方医学センター、総合診療科が新たに開設されたため、さらに多岐に渡る処方箋を受けるようになりました。その中で現在、1ヶ月に50~60件程のトレーシングレポートを提出しています。内容は、投与日数の調整、剤形変更、規格変更、一包化指示、後発品の案内などがあげられます。傾向として、高齢者の患者さまは複数の薬を継続的に服用しているため残薬調整、規格変更などが多く、がん患者さまでは、副作用発現の報告や副作用発現に対する追加処方の提案、OTC薬の提案が多くなっています。2019年5月に「ベージニオ」についてブルーレターが出た際は、患者さまに電話で体調を伺い、それを医師にトレーシングレポートでフィードバックすることも行いました。

始めた当初は医師にも十分に浸透されず、患者さまから「お手紙、ちゃんと先生に出してくれたんだよね?」という声を受けることもしばしばありました。そこで、どのように記載したら医師に読んでいただけるのだろうかと考えました。
例えば、「このような副作用が出ています」という報告を、「副作用があるため、対症療法薬としてこのような薬を追加してみては?いくつか種類があるうち、薬局で在庫している薬はこちらです。」というところまで具体的に、わかりやすく書くということを意識して記載するようにしました。すると徐々にスムーズに変更が行われるようになってきました。提案が反映されると、患者さまからも感謝の声をいただき、私達局員もやりがいを感じるようになりました。
そして、先日、トレーシングレポートを提出した大学病院の医師から郵送でお手紙が届き、そこには、「次回から処方提案していただいた通りに変更させていただきます。ありがとうございました。もし、自分の処方に課題があれば、また連絡をください」とありました。忙しい中、わざわざお手紙を書いてくださったことで、医師との距離感が縮まったようで嬉しかったです。

トレーシングレポートが医師との重要なコミュニケーションツールの1つに

トレーシングレポートというツールができるまで医師と調剤薬局薬剤師のやり取りの大部分が疑義照会でした。限られた時間の中で行う疑義照会では、薬剤師から医師への情報は緊急性の高いものにとどまり、お互いに十分に検討する時間があまりない場合がほとんどです。トレーシングレポートは、医師と深いやり取りを行える非常に良いツールになったのだと思います。

トレーシングレポートを始めたきっかけは、診療報酬に盛り込まれたことでした。最初はどうやって?どのように?という戸惑いもありながら、手探りで始めました。
まず、トレーシングレポートについて強化チームを設けました。私達の薬局では薬剤師が35人と多いため、取り組み毎に強化チームを作り、チーム内で多くの意見交換を行い、それを薬局全体に拡げていくという流れをとっています。チームを様々な年代で構成することで、単に上から下に指示するのではなく、拡げる際に世代が近い局員同士でも共有してもらい、薬局全体に取り組みが浸透しやすいような環境づくりをこころがけています。
トレーシングレポートを始めるにあたっては病院の協力が必要なため、病院へトレーシングレポートを始める意向を伝えることから始めました。形式は厚労省作成の雛形のものを使い、報告を診療科毎にとりまとめて届けるようにしました。(現在は電子薬歴に内蔵されているフォーマットを使用しています)
その後、実際に提出した内容を局員全体に共有し、薬局全体で「トレーシングレポートを一人 月1件以上提出してみよう!!」という目標を立てて推進しました。 新入社員などなかなかトレーシングレポートを書くことにハードルを感じる局員に対しては、過去の報告例を読んでもらい、比較的取り掛かりやすいものから書いてもらうようにしています。また、医師へ提出する文章の言葉遣いや表現などに不安がある場合には、局員同士でチェックしてから提出するようにしています。今では疑義照会などと同じように必要性に応じて活用できるようになりました。

トレーシングレポートのさらなる活用と調剤薬局薬剤師のできることを拡げる

現在高齢者が増え、医療費の増加が問題となっています。その中でポリファーマシーは重要であり、薬剤師が中心となってしっかり取り組んでいかなければならない問題です。
薬が身近にある薬剤師にとって症状に対する薬の提案は比較的しやすいのですが、症状が安定している方への減薬の見極めはハードルが高いものです。今後は減薬につながるトレーシングレポートに取り組んでいきたいと考えています。そのためには、患者さま一人ひとりを理解し、長期で治療に経過に寄り添うことが重要です。今後在宅療養患者が増えていく中で、在宅訪問やかかりつけ薬剤師など調剤薬局薬剤師の仕事は拡がっていくと考えます。

アイン薬局西新宿では2013年からがん患者さまの治療への介入に力を入れています。昨年からは受診と受診の間に電話やメールで体調や悩みなどを聞き取り、トレーシングレポートとして医師にフィードバックする「テレフォンフォローアップ」を行っています。2020年の調剤報酬改定でこの活動が調剤薬局の業務として盛り込まれました。今まで私達の行ってきたことの必要性が認められたことを嬉しく思います。これからも患者さまに求められることを店舗全体で取り組み、調剤薬局薬剤師のできることを拡げていきたいです。

大熊先生が参考としている書籍

左上から時計回りに

  • ・「サプリメント・健康食品HANDBOOK」蒲原聖可(著)
  • ・「栄養の教科書」中嶋洋子(著)
  • ・「難病事典」尾崎承一(編集責任)
  • ・「臨床検査データブック」高久史麿(監修)
  • ・「がん診療 レジデントマニュアル」国立がん研究センター内科レジデント(編集)
  • ・「抗がん剤・放射線治療と食事のくふう」山口健(監修)
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