在宅医療への関わり
私が在宅医療へ関わりはじめたのは、以前に勤務していた薬局時代、大学病院前の店舗に無菌調剤設備を設置することとなり、その管理責任者を拝任したのがきっかけでした。丁度、介護保険制度が始まろうとしていた時で、在宅中心静脈栄養法(HPN:Home Parenteral Nutrition)をはじめ、がん緩和ケアといった、比較的医療依存度が高い患者さんに関わるところから始まりました。経験のない分野でありましたが、新しいことに取り組む機会と選任いただいたことへの使命感もあり、無菌調剤の知識や技術ならびに在宅医療に関係する保険制度等の知識の習得に興味をもって取り組みました。在宅医療関係の学会等への参加を通じて、薬剤師をはじめ多職種や多業種の方達との多くの素敵な出逢いがあり、在宅医療に先駆的に取り組んでいる医師や薬剤師の方々のお話しを聞かせていただいたり、施設を見学させていただいたりしました。ご存じの通り、在宅移行に際して解決しなくてはいけない様々な課題があります。「家に帰りたい…、家族と一緒に家で過ごしたい…。」そんな患者さんの思いに何かできることはないのだろうか?悩んで壁にぶつかった時に、薬局間の垣根や地域を越えて、まるで自分の患者さんのことのように相談にのってもらいました。そして、そういった患者さんひとりひとりとの出逢いが、私をより一層、在宅医療への高い関心へと導いていきました。
「患者の痛みがわかる医者になってほしい。」私が小学生の時に食道がんで他界した祖父と交わした約束を思い出しながら、出会った患者さん、そしてそのご家族の人生のひとコマに関わらせていただけるご縁を大切にし、薬剤師として人として、非力ながらも自分なりの関わり方をさせていただいてきました。