薬剤師の取組

県民のヘルスリテラシー向上の一助に
電子お薬手帳の普及を進めた滋賀県薬剤師会

滋賀県薬剤師会 会長 大迫芳孝先生/常務理事 村杉紀明先生

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お話を伺った滋賀県薬剤師会・大迫会長(右)と村杉常務理事(左)
(2021年8月取材)

2014年から電子お薬手帳「harmo」(※)の事業をスタートさせた滋賀県薬剤師会。現在では、利用者10万人と全国でもトップクラスの利用者数を誇っています。
「まかせてよ! もっと身近に 薬剤師」のキャッチフレーズのもと、地域に根差したさまざまな取り組みを推進する滋賀県薬剤師会会長・大迫芳孝氏と常務理事の村杉紀明氏に電子お薬手帳の推進過程や今後の展望についてお話を伺いました。

※シミックヘルスケア・インスティテュート株式会社

お薬手帳はヘルスリテラシーを高める一助になる

―患者さん、薬剤師、薬局にとっての電子お薬手帳のメリットはどのような点がありますか。

大迫会長 : 患者さんにとっては、持ち運びのしやすさ、服用している薬の情報へのアクセスのしやすさといったメリットはもちろんのこと、パーソナルレコードとしての価値も大きいと考えます。提供された情報を誰かに見せるだけではなく、自身が飲んでいる薬は何か、これまでにどんな体調の変化があったかなどを確認していただくことで、自分自身の健康や医療に対する関心を高めるツールとしての価値も大きいと捉えています。
日本で医療費が嵩む要因のひとつには、生活習慣病などが挙げられます。ご自身の生活習慣を見直していくことによって、疾病の予防や重症化の予防につながっていくことが求められているものの、国民の多くは、医療に関する情報を処理したり、自身の行動変容を継続することに対してはあまり意識が向けられていないのではないでしょうか。電子お薬手帳など、あらゆる面で、日頃から自身の情報に触れ続けることで、ヘルスリテラシーを高める下地ができるのではないかと思っています。


村杉理事 : もちろん、紙のお薬手帳にも「直接書き込め、それらをコピーできる」といったメリットがあります。ただ、紙のお薬手帳は携帯性が良くなく、忘れる方もいらっしゃるのが現状です。災害時には、紙のお薬手帳そのものがなくなってしまうリスクもあります。電子であればデータをサーバーで保管していますので、端末を失くしてしまっても復元できるメリットがあります。紙も電子もそれぞれに良さがあり、個々で使いやすさは異なります。どちらが患者さんにとって使いやすいかを薬剤師が見極めて、メリットをどう生かしていくのかをコントロールすることが求められると思います。

 

電子お薬手帳の利用者の満足度は高い傾向に

―電子お薬手帳の普及を進めるにあたり、薬剤師会としてどのような活動をされましたか?

村杉理事 : まずは、県内の関係団体をくまなく回り、電子お薬手帳の周知に努めました。会員に対しては情報提供を頻繁に行うと同時に、電子お薬手帳のシステムを導入する際には使い方のコツを知ってもらうべく研修会を頻繁に開いて、日頃の業務で使いやすい実例などをお伝えしてきました。とにかくまずは関係機関、薬剤師のみなさんに知ってもらうべく、琵琶湖の周りをグルグル回って泥臭く活動しましたね。その後は、各会員の薬局にお任せして、患者さんへの働きかけを推進していただきました。

―普及が進んだ背景には利用者満足度の高さがあるそうですね。

村杉理事 : 患者さんは、副作用、注意事項などの情報を欲しがりますが、「harmo」は、くすりのしおりに使用されているような内容がそのまま入っているため、相互作用や副作用の情報が盛り沢山なんです。これを起点に、患者さんから「電子お薬手帳に書かれていた副作用に該当するような体調の変化があった」などと、相談を受けることもあります。利用者とのコミュニケーションツールとしても価値は高いと思います。


大迫会長 : コロナ禍でいえば、電子お薬手帳は非接触で情報を患者さんにお渡しできるため、さらに利用価値が付加されているでしょう。新型コロナワクチン接種においても、お薬手帳の重要性は再認識されたと思います。電子お薬手帳には、医療機関側が対応しきれないといった課題があるのは事実ですが、こうした機会に、電子お薬手帳も含めたお薬手帳の啓発は大切なことですね。

 

目指すのは新しい薬剤師像の創造
――がんばるけれどがんばりすぎない薬剤師に

―患者さんへのアプローチもさることながら、薬剤師会としては薬剤師の育成も重要な課題のひとつだと思います。今後の展望について教えてください。

村杉理事 : 日本薬剤師会でも医薬品の供給体制をどのようにしていくかに注力していますが、これは非常に大事な観点だと思います。薬をモノとして渡すのではなく、薬剤師が関わることで何を付加するのか。また、薬剤師が関わる価値というものを、我々は常に考えていかなければなりません。薬剤師がいくら関わっても、患者さん側がその価値や意味を分かっていなければ意味がありません。国民目線でどんな情報が欲しいのか、どんな関わりが欲しいのかを見つけて、提供していくことが求められると思います。そういう意味では、ICTの部分もスピード感を持って引き続き進めていく必要があると思っています。


大迫会長 : 2006年に薬学部が6年制過程に変更され、当時の卒業生が社会に出てちょうど10年目を迎えようとしています。6年制過程を経た方々が中心になり、いろいろなことを考えていく時代に入りつつあるのではないかと考えています。それに応じて、新しい薬剤師像を作っていく必要があるでしょう。また、薬剤師会は学術団体でもありますから、日本薬剤師会が掲げている研修シラバスを前面に押し出した研修体制の充実も図っていきます。研鑽しない薬剤師は要らないとさえ言われていますから、誰もドロップアウトしないような研修体制が必要だと考えています。
とはいえ、薬剤師の働き方や働く意義にもしっかり目を向けなければなりません。かかりつけでなくとも基準調剤加算をとっているところでは、24時間アクセスが可能です。私も土日関係なく患者さんからの電話に対応していますが、負担がかかるのは事実。国は24時間稼働するよう言いますが、薬剤師が疲弊しすぎないよう、上手にがんばれる状態を作っていくのが理想です。もちろん、がんばって対応しなければならない部分もありますが、薬剤師自らが薬剤師は楽しいと思ってもらえるようにしたいですね。生き生きとした人間が指導することで、患者さんも生き生きしてくるのではないかと思います。

 

【取材協力】

<一般社団法人 滋賀県薬剤師会>

滋賀県草津市笠山七丁目4-52
☎077-565-3535

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