薬剤師こだわり図鑑
在宅医療にこだわり vol.12

J-HOPリレー連載企画
被災したときにこそ求められる
日頃からの多職種連携

金田崇文先生

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2003年岡山大学薬学部卒業後、2004年株式会社ケイ・クリエイトこやま薬局入社。東日本大震災、熊本地震の際に災害支援派遣を経験。
2018年岡山県平成30年7月豪雨において岡山県薬剤師会として薬事関連対応を行った。2018年岡山県薬剤師会災害対策特別委員会委員長に就任。
現在、株式会社ケイ・クリエイトこやま薬局統括部長、JHOP一般社団法人 全国薬剤師・在宅療養支援連絡会中国四国ブロック長、日本災害医学会主催災害薬事研修PhDLS管理世話人。

2018年7月、岡山県は平成30年7月豪雨の被害を受けました。私は突然、被災県の薬剤師として、災害対応に追われる毎日を送ることになりました。

薬剤師として災害支援を経験する

昨今、日本全国で大規模災害が目立つようになりました。地震、津波、豪雨、水害、土砂災害…日本は昔から世界有数の災害大国でした。阪神大震災を機に、日本の災害支援体制は国を挙げて急速に整備されつつあります。
私は薬剤師として、東日本大震災、熊本地震で、災害派遣の経験がありました。岡山県からは災害発生後初期段階での派遣であったため、被災地がまだ混乱している中、ある程度は自分で判断をしながら活動をするという経験でした。被災地で薬剤師に何ができるか、避難者支援、災害処方箋の応需、水道・換気・消毒などの衛生管理など、できると考えていました。

災害支援体制の充実の一方で、全国多くの地域では、数十年に一度は大きな被害を受けているにも関わらず、自県が被災した場合の体制づくりは未だ不十分なように感じます。被災地の地理、土地柄、医療特性、災害時の協定、県や卸などの体制…これらは、外部からの支援者にはわかりません。被災した県が全て対応しなければいけないこととなるのです。
そして、今回の西日本豪雨で自県が被災した時、私自身全く対応できないことに改めて気付かされました。

被災地の薬剤師としてできること

豪雨の数日後、岡山県では日赤・DMATなど多くの医療チームが救助活動を行ってくれていました。発災後72時間の急性期対応は終わりますが、現地はまだ避難所の正確な数、避難者の数やニーズ、被害状況も十分把握できていない状況でした。そのような状況下で、抗凝固薬がない…睡眠薬がない…インスリンがない…ということが起こりました。薬は、食事や水と同じように、発災直後から求められる物の一つです。私たち薬局薬剤師は、被災したその日から患者の応対に迫られていました。
私は、岡山県薬剤師会として、支援者の集まる会議(倉敷地域災害保健復興連絡会、通称:KuraDRO)に初めて参加しました。混乱した会議の場で、「薬剤師会?何してくれるの?」というフレーズを投げかけられ、突然頭の中が真っ白になりました。自分で何かしなければならないということに初めて気付いたのです。自分では何ができるのだろう…すると、「薬の供給体制がわからない。教えて欲しい。」「医療チームは揃っているけれど薬がない。なんとかしてくれないか。」と声があがりました。これが被災地薬剤師会にしかできない役割なのだと気付きました。

そこから、調剤所の立ち上げ、災害処方箋の発行ルール、調剤ルールの作成、地元薬局の被災状況の確認や多職種との情報共有、日々変わる状況への対応、薬剤師ボランティアへの対応指示、一般用医薬品の対応などを1ヶ月に渡って行いました。災害支援には毎日多くの職種が携わることとなります。イレギュラーが続く中で、相談に顔の知れた他職種の仲間がいかに重要か、日頃の連携がいかに重要かを改めて実感しました。

日頃の連携と防災の繋がりを考える

自宅や自薬局が被災した場合、自身が被災者にも関わらず、患者対応をし続けなければなりません。他エリアからの支援は非常に助かります。しかし、外部支援者は必ず撤退するのです。そして、撤退の基準は必ずしも地元医療の復興ではありません。被災者は自分たちの力で立ち上がらなければならないのです。崩壊した医療介護システムの再構築は、医師、薬剤師、保健師、介護職、行政職員…皆で行わなければなりません。息の長い復興への道のりには、必ず地域の連携が大きな力になります。

毎年日本上空を台風が通過します。薬局の近くに避難所が開設され、一晩だけ避難所で過ごす要支援者もいるのではないでしょうか。在宅患者にはそんな時に誰が連絡を取っているのでしょうか。地元の薬剤師には何ができるでしょう。避難所の開設者である行政と連絡を取り、薬局から避難所に「何かあったら連絡してくださいね」と声をかけることも簡単にできる連携の第一歩ではないでしょうか。小さな不安を連携しながら取り除く、そんな日常が、大規模災害時に大きな力になり、復興への近道になると思っています。外部支援では絶対にできないこと、防災の視点からも日頃から多職種連携をして欲しいと思います。

<J-HOP連載企画~在宅最前線~について>

J-HOP(一般社団法人 全国薬剤師・在宅療養支援連絡会)と協力し、在宅を実施している薬剤師の最前線の情報を提供する事を目的に連載企画として実施しています。

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