薬剤師こだわり図鑑
在宅医療にこだわり vol.11

J-HOPリレー連載企画
薬局開設における私のこだわり
~もっと患者さんの傍へ~

白石丈也先生

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1994年東北医科薬科大学(旧東北薬科大学)薬学部卒業。同年株式会社オオノ・ひかり薬局入社。2006年に退職、同年有限会社メディックス白石を設立し、福島県福島市にけや木薬局を開業。管理薬剤師として勤務。現在に至る。

在宅医療への関わり

私が在宅医療へ関わりはじめたのは、以前に勤務していた薬局時代、大学病院前の店舗に無菌調剤設備を設置することとなり、その管理責任者を拝任したのがきっかけでした。丁度、介護保険制度が始まろうとしていた時で、在宅中心静脈栄養法(HPN:Home Parenteral Nutrition)をはじめ、がん緩和ケアといった、比較的医療依存度が高い患者さんに関わるところから始まりました。経験のない分野でありましたが、新しいことに取り組む機会と選任いただいたことへの使命感もあり、無菌調剤の知識や技術ならびに在宅医療に関係する保険制度等の知識の習得に興味をもって取り組みました。在宅医療関係の学会等への参加を通じて、薬剤師をはじめ多職種や多業種の方達との多くの素敵な出逢いがあり、在宅医療に先駆的に取り組んでいる医師や薬剤師の方々のお話しを聞かせていただいたり、施設を見学させていただいたりしました。ご存じの通り、在宅移行に際して解決しなくてはいけない様々な課題があります。「家に帰りたい…、家族と一緒に家で過ごしたい…。」そんな患者さんの思いに何かできることはないのだろうか?悩んで壁にぶつかった時に、薬局間の垣根や地域を越えて、まるで自分の患者さんのことのように相談にのってもらいました。そして、そういった患者さんひとりひとりとの出逢いが、私をより一層、在宅医療への高い関心へと導いていきました。
「患者の痛みがわかる医者になってほしい。」私が小学生の時に食道がんで他界した祖父と交わした約束を思い出しながら、出会った患者さん、そしてそのご家族の人生のひとコマに関わらせていただけるご縁を大切にし、薬剤師として人として、非力ながらも自分なりの関わり方をさせていただいてきました。

薬剤師として、患者の最期まで関わる

薬局・薬剤師と患者さんとの関わりの形は色々あると思います。新たな疾病への罹患や急激な状態変化もあれば、比較的穏やかに老衰の経過を辿ることもあると思います。
私の思いのひとつに、「患者さんの状態が変わっても、関わり続けられる薬局でありたい」ということがあります。緩和ケアに関わるなら、医療用麻薬の使用は必須ですので、「麻薬小売業者免許」が必要なのは勿論ですし、嚥下や消化管機能に問題があり、経口や経管からの栄養摂取が困難であれば、TPNでの管理が必要となることもあります。キット製剤で対応できれば良いですが、注射薬の混注が必要になるケースもあります。そのため無菌調剤設備があるかないかで対応できる範囲が大きく違ってきます。
そして、もうひとつには、「受け入れ先が見つからない在宅患者さんへの支援」があります。もともとかかりつけ薬局をもっていなかったり、薬局機能の事情等で当該薬局が訪問できなかったりするケースでの相談への対応です。

もっと患者さんに寄り添える薬局を

起業を決めたのは、「もっと患者さんの傍へ」という思いからでした。小さくても患者さんに寄り添える薬局を、自分なりの考えで形にしたいという気持ちでした。多様性、個別性が高い、特に個宅の在宅医療のケースでは、状態によっては状況確認や薬剤の調節や再調製等、保険請求に該当しない頻回の訪問が必要になることも多く、ボランティア的な対応がしばしば必要になります。薬剤師(医療人)として、人(人道的な介入)として、経営者(自身・職員の生活、恒久的な社会資源としての存在)として、これらのバランスをどう保ち、形にしていくかということに日々向き合っています。

開業してからお陰様で12年目を迎えましたが、未だ一店舗経営の小さな薬局です。開業した4年後の2011年には東日本大震災に見舞わられ、薬局の方は大きな被害は回避できましたが、津波や原発事故により住み慣れた土地からの移住を余儀なくされた避難者の方々も多くおられました。昨年にはようやく、災害時のバックアップの電源確保としてガス発電装置も導入しました。新店舗の出店も夢見ているのですが、先ずは小規模多機能型(笑)で自己完結する薬局を目指しており、薬剤師のスキルにあわせた薬局内の機能分化と情報共有を考えています。
現在、地域薬剤師会の役員も務めておりますが、地域包括ケアシステム構築の中で、個の薬局でできることの限界、地域の薬局間で連携を以て進めなくてはいけないことをしっかりと考えていかなくてはいけないところに来ていると感じています。多職種連携は勿論大事ですが、ベクトルの向きを揃えた薬局間連携、真の薬薬連携の構築が必要だと感じています。

<J-HOP連載企画~在宅最前線~について>

J-HOP(一般社団法人 全国薬剤師・在宅療養支援連絡会)と協力し、在宅を実施している薬剤師の最前線の情報を提供する事を目的に連載企画として実施しています。

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