薬剤師取材

今後も増加する5大疾病患者と薬剤師の関わりについて 〜職能を発揮するということ〜

兵庫医科大学病院 薬剤部長 薬学博士 木村健先生/マルゼン薬局株式会社 代表取締役 村田卓先生

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木村 健 先生(左)
兵庫医科大学病院 薬剤部長 薬学博士
兵庫県病院薬剤師会 副会長・理事、日本腎臓病薬物療法学会 副理事長など。「疾患別薬学管理の基礎知識」「薬剤師に必要な患者ケアの知識」(共にじほう)など著書多数。

村田 卓 先生(右)
マルゼン薬局株式会社 代表取締役
製薬会社勤務を経て家業を引き継ぐ。MR時代に京都大学附属病院で教授から研修医まで担当し、医師の教育制度を目の当たりにしたことがマルゼン薬局の「薬剤師研修制度」の基礎となる。
(2020年8月取材)

現在5大疾病に指定されている「がん」「脳卒中」「急性心筋梗塞」「糖尿病」「精神疾患」。今後も増加する見通しのそれらの患者さんに、薬剤師がどのように向き合っていくことが必要なのかを探ります。勉強会などを通して日頃から親交のある兵庫医科大学病院・薬剤部長の木村先生と、マルゼン薬局株式会社・代表取締役の村田先生のお2人に、5大疾病に関するデータを見ながら、病院・薬局それぞれの立場からお話を伺いました。

(本記事は医薬情報おまとめ便内、特集企画「5大疾病の現状と薬剤師の関わり方」にて掲載した記事です。 )

 

がん

副作用が出やすいがん治療においてはモニタリングが重要。薬局薬剤師もスキルアップで薬薬連携の充実を。

木村 ▶ グラフ(※1)から分かるように以前は入院治療がメインでしたが2006年以降では通院での治療が増えてきています。これは、例えば2週間に1回の通院でしたら、残りの13日間は地域や薬局薬剤師にフォローしてもらうことが必要になっているということです。がん患者さんは「自分はがんである」「疾患に立ち向かおう」という意識が高いので、アドヒアランスは高い方だと思いますが、薬をしっかり飲めるかどうかは副作用も大きく関わるので、モニタリングが重要になりますね。

村田 ▶抗がん剤は副作用の強い薬が多いので服薬後の自宅での体調変化、副作用や他医療機関の薬の相互作用など、病院が必要とされている情報をしっかり聞き取れるよう工夫して病院にフィードバックしています。特にこの春からは情報提供などがさらに重要になりました。
私の薬局ではがん患者さんは多くはないのですが、だからといって抗がん剤を詳しく知らないでは済まされないと木村先生からも厳しくご教授いただき、定期的に勉強会を実施しています。薬局薬剤師はがん患者さんに対しても処方箋で判断しなくてはいけないことが多いので、男女によるがんの多い部位の違い(※2)、また各所のがんの基本的な考え方や治療法、どの段階で出された薬なのかを総合的に考えながら、しっかりと話を受け止めて相談に乗るようにしています。外用軟膏しか処方されていない患者さんから情報を聞き出すにはコミュニケーション力も大切だと痛感しています。そこに薬剤知識が加われば大きな信頼感になると確信しています。

木村 ▶近年、がんの薬物治療は非常に高度化・複雑化しているので、薬剤師にもより高いレベルでの専門的な知識が必要になってきています。保険薬局は若い薬剤師が多いので、病院薬剤師として保険薬局とは違う立場・視点からの意見を共有して、課題について考えていける関係性を築けたらと思っています。また病院との薬薬連携を考えたとき、薬局薬剤師のスキルアップは不可欠ですので、そのきっかけとして勉強会が役立ってくれたらいいですね。

脳卒中・急性心筋梗塞

脳卒中・急性心筋梗塞は発症の前後を中心として
在宅医療への介入も見据えた関わりを。

木村 ▶脳卒中・急性心筋梗塞の予防という観点では、皆さんバックグラウンドが違いますので、まずはなにか基礎疾患があるかどうかのチェックが必要でしょう。脳卒中の場合で言いますと高血圧か脂質異常症が多い(※3)ですが、そこでの薬がしっかり飲めているのかどうか、飲めていないなら患者さんの病識をつけてアドヒアランスを高めていかないといけませんね。
また脳血管疾患・心疾患は要介護になりやすい病気(※4)という資料もありますが、例えば要介護で在宅療養になった場合、患者さんの自宅に薬剤師が一人で行ったときには、薬剤師としてはもちろん医療従事者として行っているという観点を持たなくてはいけません。身体に不自由が出たりしていたら、飲みやすい剤形だったり器具を提案するだけでなく、患者さんの体調も診れないといけないですし、場合によっては日常生活指導もした方がよいでしょう。介護保険の制度や在宅ケアプランについて知っている必要もあると思いますね。ただ、薬剤師の職能としてはやはり薬を飲んでもらうことですので、家族の中で誰がキーパーソンなのかを見極め、服薬のサポートに家族もしっかりと入ってもらうよう働きかけることが、特に在宅では大切ではないでしょうか。

村田 ▶血圧が基準値より少し高かった患者さんがしばらく見かけないと思ったら脳梗塞で入院されていたと薬剤師たちから度々聞きます。脂質異常も軽く見られる方も多いのですが、改めて服薬指導や疑義照会のあり方を考えさせられます。この春から服薬フォローが義務化されましたので今後はこのようなことをより防がねばなりません。
在宅訪問の際、患者さんの中には主治医の訪問時に容態など必要なことを伝えきれずにいる方が少なからずいます。薬剤師が訪問時に薬の依頼や相談をされるのは薬剤師が話しやすい場合があるからです。配達だけではなく在宅での状況や連絡ノートなどにも目を通すなど新たな情報を主治医にフィードバックする役割も大きいと思います。

糖尿病

ほとんどの患者さんが通院で治療に取り組む糖尿病は
薬局薬剤師視点での薬物治療への介入がより重要に。

木村 ▶病院での治療について言いますと、最近では外来でできることは外来にシフトしている印象で、よほど重症でない限り入院は減っている(※5)と思います。教育入院も少なくなっているんではないでしょうか。「糖尿病が強く疑われる者」(※6)が毎年増えているという資料がありますが、病院側から糖尿病予備軍の方に言えることは「定期検診はちゃんと受けましょう」ということでしょうか。あとは市民講座のようなもので啓蒙もできるかもしれません。
最近では糖尿病療養指導士も多くなり、色々な職種でチームを組んで治療にあたるようになってきていますね。そうした中で、薬剤師が食事療法や運動療法について介入していくことも大事かとは思いますが、特に糖尿病はアドヒアランスが低くなる傾向にありますので、やはり薬剤師はチームの中で薬物治療に注力するとよいでしょう。服薬フォローも義務化されますので、しばらく来ない患者さんがどうなっているのかを含め、保険薬局の方で掘り起こしをしてくれると病院側は有難いでしょうね。

村田 ▶地域的な傾向だと思いますが、非専門医が糖尿病の処方をすることが多く、その場合にHbA1c値などが高止まりしたままで適正な薬剤が処方されなかった例を多く見受けます。私たちとしては専門医を受診勧奨したり、あえて疑義照会したり、患者さんにはここまで下げたいと要望するようにアドバイスします。また「健康サポート薬局」の取り組みとしては、糖尿病は遺伝の要素も大きい疾患ですので、管理栄養士たちと栄養相談会を毎月設けて地域へ告知したり、近隣専門医のアドバイスから「世界糖尿病デー」に家族検診を呼びかけています。

木村 ▶今は薬の選択肢も多くなって早期から治療が可能になり、糖尿病のコントロールはしやすくなってきています。薬物治療についてはもちろん医師の指示の下に指導していくこととなりますが、患者さんに合った薬物治療が提供されているのかどうか、薬剤師からの視点でも薬を見ることは大事ですね。

精神疾患

自己中断と薬の依存の多い精神疾患は
退院後の環境も把握しながらしっかりと服薬フォローを。

木村 ▶精神疾患患者の数が増加(※7)しているという資料がありますが、これは精神疾患に対する社会背景の変化も大きいのではないかと思います。認知症・うつに対しての考え方も変わってきて、以前と比べると精神科を受診するハードルが低くなっていることも影響していると感じます。
薬剤師からみた患者さんの問題点としては二つ。服薬の自己中断が多いことと、薬に依存してしまうケースがあることです。薬の依存が高い分、薬剤師の参画が求められていることは確かですが、病態の把握や治療方針など医師との細かな連携が必要なので、保険薬局が介入していくのはなかなか難しいのではないかと思います。
村田 ▶弊社に精神科の処方箋を多く受ける薬局がありますが、おっしゃる通り疑義照会にはかなりハードルがあり「理由があるので」との回答が多いです。そのため「副作用」や「残薬の確認」が基本的な対応になっています。その中で、退院後に治ったと勘違いされ服薬を自己中断される方が多いので、そこは重点的にフォローして欲しいと主治医からは依頼されています。退院後の環境がその後の症状に大きく影響しますので「薬の管理方法」を含め「家庭環境」(※8)から把握することも大切だとは思いますが、制約が多く難しいですね……。

 

 

木村 ▶病院という管理された環境だからこそ改善するのだと思いますね。結局はどの疾患でも同じですが、薬剤師の職能は、患者さんのアドヒアランスを高めて薬をしっかり飲むようにサポートすることです。結果が改善すれば、適切に対応ができていたんだということで、後からしか判断できないのが難しいところですが。
村田 ▶日頃来局されていた患者さんが病気を再発したり併発したりすると、力不足だったなと感じることも正直あります。患者さんとのコミュニケーションはもちろん、家族や地域を含め、様々な付き合いの中で話が動くこともありますので、薬局薬剤師は地域の中で健康をサポートできるような存在にもっとなっていかないといけませんね。

  

 

兵庫医科大学病院 薬剤部
兵庫県西宮市武庫川町1-1
☎0798-45-6189
h1972年4月の開設以来、医学教育機関として、最新の医療施設と機器を備え高度な医療を行う特定機能病院である兵庫医科大学病院。薬剤部では常に「臨床」「教育」「研究」の3つの課題に目標を持って自己研鑚することを求め、薬剤師としてのスキルの向上に努めている。また、地域の病院薬剤師・薬局薬剤師との連携を図るため、セミナーの開催なども行っている。

マルゼン薬局株式会社
大阪府大阪市淀川区三津屋北1-5-22
☎06-6838-7374
先代が1958年大阪市に医薬品製造許可薬局としてマルゼン薬局を創業し、1998年から調剤事業を始める。2007年に高齢化時代を予測して介護事業を開始し、現在の健康サポート薬局と栄養ケアステーションのスタートアップに至る。大学連携と薬学実習生受け入れ、薬剤師の教育と研究調査は現在の薬局の大きなプレゼンスであり地域連携/専門薬局を目指している。

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