取材記事

地域薬局との研修会を10年以上継続し根気よく「顔の見える関係作り」に取り組む

国立がん研究センター東病院 薬剤部 川澄 賢司先生

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病院薬剤師の業務は「調剤」から「臨床業務」へと大きく変化を遂げてきました。病院薬剤師が臨床業務に集中することを支えているのは、院外処方せんの調剤を担う薬局薬剤師です。国立がんセンター東病院薬剤部(千葉県柏市)では薬薬連携を重視し、約10年前から研修会を重ねてきました。「研修会を重ねるごとに、薬局からフィードバックされる情報の精度が向上する」という同院薬剤部の川澄先生に薬薬連携の課題と今後の展望を聞きました。

病院薬剤師の業務は”臨床”へ推移

当院は千葉県柏市に立地するがん専門病院です。薬剤師は37人、レジデント18人の合計55人で、内服薬と注射薬の調剤、抗がん剤の無菌調製や医薬品の適正管理、医薬品情報、病棟薬剤師業務、治験薬管理、薬剤師外来など幅広い業務に関わっています。

私が薬剤師になったのは今から13年前ですが、ここ10数年を振り返ると、病院薬剤師の業務は大きく変化を遂げてきたように感じています。内服薬や注射薬の調剤は今でも基本業務ですが、それに加えて薬剤師が病棟へ出向き、直接、患者さんの薬学的管理をする臨床業務の割合がとても増えてきたのです。 病棟だけではなく外来での服薬指導も増えました。特に、外来化学療法の分野では早くから薬剤師が関わっていて、当院でも私の入職当時から外来で薬剤師が患者さんに直接、指導を行っていました。

病棟だけではなく外来での服薬指導も増えました。特に、外来化学療法の分野では早くから薬剤師が関わっていて、当院でも私の入職当時から外来で薬剤師が患者さんに直接、指導を行っていました。

10年続く、地域薬剤師会との研修会
応需薬局との少人数ミーティングも開催

当院は処方せんの95%を院外発行していて、抗がん剤の多くも院外処方です。そのため適切な薬物治療を行うために薬薬連携はとても重要だと考えています。そこで保険薬局薬剤師との薬薬連携を深めるための研修会も積極的に開催しています。現在行っている研修は大きく分けて2種類あります。

1つは千葉県柏市薬剤師会と共催する「がん治療研修会」です。主に「胃がん」「肺がん」「乳がん」「大腸がん」「血液がん」の5大がんについて安全な薬物療法を実施するための研さんを目的としたものです。毎回、100人程度が参加する集合型研修会で、約10年前からスタートして年に3~4回、実施しています。

それとは別に、近隣の薬局と一緒に行う少人数の勉強会も開催しています。当院の処方せんを応需している近隣の薬局が主な対象で、月に1回、10人前後が参加し、すでに80回ほど開催してきました。主に、当院で使用する抗がん剤治療に関して、病院薬剤師と薬局薬剤師の服薬指導意識統一を行っています。

勉強会

きっかけは抗がん剤の服薬指導
今では症例検討会に発展

薬薬連携のための研修会をはじめたきっかけは、処方せんに記載された薬に関する説明で、病院と薬局に食い違いが起きたことです。特に問題になったのは、抗がん剤の副作用で好中球が減少して感染症にかかる、発熱性好中球減少症でした。抗がん剤の使用中は免疫力が低下するため、感染症は大きなリスクのひとつです。そのような重要なシーンで説明が食い違うことがないように、指導内容の統一を図るために勉強会を始めたのがスタートです。

病院と薬局薬剤師の服薬指導内容のすり合わせからスタートし、その後は、新薬に関する勉強会や情報交換会などに拡大。さら現在では、症例検討会も加わりました。症例検討会では病院薬剤師と薬局薬剤師が1症例ずつ出し合って、副作用などに対してそれぞれどのように患者指導を行ったかをディスカッションしています。

勉強会

トレーシングレポートはグレード2以上を指定
フィードバックする情報の精度向上が課題

患者指導においては、直接カルテを閲覧することができるため、病院薬剤師の情報量の方が圧倒的に多くなります。一方で、日々の患者さんに接することができる薬局薬剤師だからこそ、気づくことができる情報もあります。ですから病院薬剤師と薬局薬剤師の両方の視点をすり合わせることは、安全な薬物療法を行う上でとても重要だと考えています。その意味ではトレーシングレポートなども非常に重要な役割を果たします。

当院ではトレーシングレポートで報告してもらう情報は、

I.抗がん剤治療の副作用Grade 2以上の症状(緊急性がなく次回の診察への情報提供)
II.その他、患者に対する病院側への情報提供(次回の診察への情報提供)

以上の2点を対象にしています。

その他、緊急性のある場合は医師へ連絡するか、患者さんからの緊急連絡窓口である外来化学療法ホットラインに連絡してもらう様に指導してもらっています。

トレーシングレポートや疑義照会など、研修会で連携を図っている薬局の先生については、フィードバックされる情報の精度が日々、向上していて大変ありがたいと思っています。その一方で、面へ散らばっていった処方せんについては、なかなか情報の精度を上げていくことが難しく、今後の課題と感じています。

服薬情報提供書(トレーシングレポート)

薬剤師全体のレベルアップにも尽力
がん薬物療法研修生は開局向けコースも

この他にはがん医療に携わる薬剤師全体のレベルアップのための研修会にも積極的に協力しています。

薬局薬剤師を対象とした「保険薬局薬剤師がん薬物療法研修生」制度はその一例です。以前より実施していた病院薬剤師向けの研修内容を、薬局薬剤師の先生が参加しやすいように「週1回」で「1年間」のコース設定をしました。

病院薬剤師向けと同様の内容になっていますので、専門性の高い内容について、病院薬剤師の視点を学べることが特徴です。今後、専門医療機関連携薬局などが動き出しても、こうした研修は役に立ててもらえるのではないかと期待しています。

2020年度の4月より診療報酬改定で新設された「連携充実加算」については、院内の体制整備の関係で7月からの算定となりました。そのため運用開始によって連携がどのように変化していくか、まだ状況は把握できていません。しかし、これまで当院としては薬薬連携や情報提供を当たり前のこととして行ってきたことなので、加算ありきで考えるのではなく、今までの取り組みを引き続き継続して行っていく方針です。

がん治療に係る病院薬剤師に大きく関わる診療報酬点数としては、抗がん剤治療の必要性について医師または薬剤師が説明すると算定できる「がん患者指導管理料ハ」と今年から新たに算定が可能となった「連携充実加算」があります。今後はこの2つが、病院薬剤師にとって大きな存在感を持つ点数になってくるのではないでしょうか。

薬剤師だからこそできる
「薬学的提案」に期待

薬局薬剤師の先生には「自分たちががん治療にどれほど貢献しているか」について、ぜひとも自信を持っていただきたいです。病院薬剤師は基本的に、患者さんの診察と診察の間のフォローが不足していると感じています。当院では外来化学療法ホットラインなどを活用しつつ、患者さんには自分でも対応できるように指導しています。しかし高齢の患者さんが増える中、自分での対応に不十分な方もいるので、薬局の先生が電話フォローなどにて、在宅での状況を確認し、その情報をフィードバックして頂けることには非常に助かっています。

また、たとえ同じ指導内容であったとしても、すべての患者さんが1度の説明で理解できるとは限りません。病院と薬局のそれぞれが説明を繰り返すことで、患者理解度や安全性は大きく向上していると感じています。

その上でさらにもう一歩、「薬剤師だからこそできる薬学的な提案」にまで踏み込むことができれば、安全な薬物治療をより一層、推し進めることができると感じています。薬局からの疑義照会内容は処方せん記載内容の不備に関するものが多いのは事実ですが、患者さんを中心としたチーム医療の一員として、薬剤師ならではの薬学的提案についてもぜひ一緒にがんばっていきたいところです。

薬局でも服薬指導後のフォローアップがますます重視される中、病院側ではフィードバックされた情報を吟味、分析することが求められます。そう考えると、今後はますます病院薬剤師と薬局薬剤師の連携の重要性は高まってくると感じています。

リモート化が進む時代の流れに逆行するかもしれませんが、あえて「顔の見える関係」を築くことの重要性を見直したいですね。当院としてはこれまでの薬薬連携を強化しつつ、今後は当院の薬薬連携の形を参考にして、各地域でよいより連携の形を見いだせるようにサポートできればと考えています。

国立がん研究センター東病院 薬剤部 川澄賢司先生
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