薬剤師取材

トレーシングレポート活用事例 ~医薬連携で最適な薬物療法を提供~

そうごう薬局 新倉敷店 宮本慶子先生

  • この記事をシェアする
  • この記事をツイートする
  • LINEでこの記事を送る
医薬連携をキーワードに、全国で薬局を展開する総合メディカル株式会社。
岡山県倉敷市にあるそうごう薬局 新倉敷店の宮本先生は「患者さんにより安全で最適な薬物療法を提供することにおいて、医薬連携や薬薬連携による医療機関との情報交換が密におこなえる体制は、とても重要です。」と話します。連携を通じて薬物療法の最適化を目指す宮本先生に、医療機関との連携や情報共有のコツについて聞きました。

週に1度の医療機関薬剤部の朝礼に参加
定期的なミーティングで顔の見える関係づくり

オープンして約20年になるそうごう薬局 新倉敷店は、主たる応需先医療機関のほか、広く近隣の医療機関からの処方せんを受け付けています。

応需先医療機関の薬剤部とは、薬剤部の朝礼や定期ミーティングへの参加を通じて「顔の見える関係づくり」をおこなっています。3カ月に1度の薬剤部との定期ミーティングは、患者情報の共有やスムーズな疑義照会のあり方などより良い薬薬連携について、協議の場となっています。

そのほか近隣の医療機関ともトレーシングレポートによる患者情報の提供ができるような関係づくりを心掛けています。患者情報の提供が必要と判断した場合は、医療機関それぞれの提出ルートに応じたトレーシングレポートの送付をおこなっています。

患者入退院時の情報連携で退院後の患者をサポート

患者入退院時の患者サポートでも医薬連携、薬薬連携は欠かせません。入院時には患者さんの持参薬情報に加えて、残薬等の状況、服薬拒否や過剰摂取などの服薬状況や、薬の一包化や粉砕などの調剤方法に関する情報などを医療機関に提供しています。退院時には、患者さんの状態や治療内容など医療機関から情報をいただき、療養環境が変わっても患者さんにおいては切れ目のない薬物療法を受けることができるようにフォローに力を入れています。

そのほか近隣の医療機関からの退院時の情報提供では、入院理由や治療内容などの情報をいただいています。中には退院時カンファレンスに呼んでいただける医療機関もあり、退院後の患者さんのフォローがとてもスムーズになりました。

薬局では、患者さんの入院のタイミングを知ることが難しい場合が多く、入院時の情報提供件数はまだそれほど多くはありません。しかし、2020年度診療報酬改定で医科の点数に「退院時薬剤情報連携加算」が新設されたことが追い風となり、退院時の医療機関からの情報提供は一気に増えています。

退院時の情報連携の事例を紹介しますと、入院して抗がん剤治療を受けられた患者さんがおられ、副作用による手のしびれで、薬のPTP包装が開けられなくなったケースがありました。退院時に医療機関から、治療内容や副作用の発現状況とともに一包化の依頼など詳細な情報提供がありました。もしも医療機関からの情報提供がなければ、患者さんご自身で伝えなければならず、正しい情報が伝わったかどうかわかりません。退院時の情報連携体制が取れているからこそしっかりと退院後のフォローができるのです。

トレーシングレポートの作成
一目でわかるようにタイトルを工夫

医薬連携の中で、トレーシングレポートによる薬剤師から医師への患者情報の共有を以前から実施しています。トレーシングレポートによる患者情報の共有の目的は、医師と双方間で情報共有する中で、医師の処方意図を把握でき、治療効果を最大限に引き出すことで患者さんにより最適で安全な薬物療法を提供することです。 医師の処方意図に基づき処方された薬が、適切に飲まれていなかったり、有害事象が出たりしていないか、そうしたことが起こらないよう患者さんから情報を聞き出し、薬学的評価をおこない、医師へお伝えすることで安全かつ効果的に患者さんが服薬を継続してもらうことが一番の目的と考えています。

レポートの提出ルートは大きくわけて、▽医師へ直接送付▽医療機関薬剤部経由▽受付け・医事課経由――の3つ。多くは郵送やFAXを利用しますが、主たる応需先医療機関は薬剤部に直接、持参しています。

どのようなルートで送るにしても、文書は医師向けに形式を統一しています。フォーマットは電子薬歴に装備されているものを使用し、効率的に作成しています。

レポート作成にあたって工夫しているのは、多忙な医師がタイトルを見れば「一目で内容がわかるようにする」ことです。よって、タイトルは副作用についてなのか、アドヒアランスに関することなのかなど内容を端的に表すこととし、その上で詳しい内容を記載するようにしています。

レポート内容は、主に患者さんの「アドヒアランス」と「副作用」に関することが多く、必要に応じて処方変更を提案する場合もあります。

疑義照会とトレーシングレポートのすみ分けについては、「これを解決しないと薬が渡せないという緊急性の高いもの」は疑義照会、「緊急性は高くないが医師へ伝えた方がいい内容」はトレーシングレポートとわけています。例えば、まだはっきりとはわからないが副作用の兆候ではないかと思われるなど、トレーシングレポートを通じて医師に伝えることで、次回の診察の際の判断材料にしてもらうことができるのです。

薬剤師の報告で夜間低血糖を防止
麻薬の処方量が変更されたケースも

実際にトレーシングレポートが生かされて、処方変更につながった事例をご紹介します。窓口で患者さんに服薬指導をおこなっている際に「どうも最近、調子が悪い」という訴えがありました。よくよく話を聞くと、夜間低血糖ではないかと疑われました。そこで夜間の血糖値を測定してもらい、その測定値と補食状況や服薬状況などを医師に報告しました。その結果、処方が変更され夜間低血糖の状態が改善し、患者さんも安心されました。患者さんご自身は必ずしも適切に状態を医師に伝えることができないこともあるため、薬剤師がうまく引き出すことができたケースです。

こんなケースもあります。麻薬を服用しながら痛みをコントールされていた患者さんでレスキューを服用しても1時間程度しか効果が続かないという訴えがあり、医師へ患者さんの状態や麻薬の服薬状況について情報提供をおこないました。その結果、麻薬の処方量が変更となり痛みの和らぐ時間が延長し、患者さんも喜んでおられました。これは薬剤師が治療効果を評価し貢献できたケースだと感じています。

トレーシングレポートによる情報連携は、薬物療法の効果を最大限に高めるのはもちろんのこと、医師との連携も深まり、かかりつけ薬剤師として患者さんからの信頼も得ることができ、薬剤師のやりがい向上にもつながっていると感じています。

薬学的根拠を持って患者情報を提供するために

薬剤師の仕事は自分から能動的に動かなければ、対物業務に偏る傾向になるのではないかと思います。患者情報の共有を通して医師と連携することで、処方意図を把握し、適切な薬物療法を支援することができるのです。自分の患者さんへの服薬指導が正しいだろうか、処方意図を正しく理解しているだろうかという不安も解消することができ、自信を持って患者さんの薬物療法に寄与できます。

患者さんの状態や服薬状況を的確に把握し、薬学的に評価をおこない、根拠をもって医師と患者情報を共有していくことについては、まだまだ十分といえるスキルを持ち合わせているとはいえません。薬剤師として21年間、仕事をしてきましたが、勉強すべきことはまだまだあると感じています。

薬剤師のあり方が、「対物業務」から「対人業務」への移行を求められる中、地域の患者さんのため、かかりつけ薬局・薬剤師として何ができるのか――今後も模索していきたいと思っています。

  • この記事をシェアする
  • この記事をツイートする
  • LINEでこの記事を送る
アスヤクLABOの仲間になりませんか?

ご登録いただくと、すべてのコンテンツの閲覧・座談会の参加ができるほか、最新情報をメルマガでお届けします。

アスヤク仲間に登録する

その他の「薬剤師取材」

この記事を読んだ方におすすめの記事

ページトップへ戻る