
より良い医療現場を実現するために、
薬剤師として介護現場の負担を軽減したい
特別養護老人ホームにおいて、介護職員及び看護師に対して服薬に関する指導を行っています。中でも特に注力をしているのが、介護職員さんに対しての支援です。というのも、介護職員さんは薬に関しての専門知識を学ぶ機会を得られないまま患者さんに直接薬を与える役割を担うことが多いため、様々な不安を抱えているケースが多いのです。だからこそ、薬剤師として自身が持つ知識を現場の従事者に普及していくことで、現場の負担が減り、ひいては患者さんにとってのより良い医療の実現に繋がっていくと思っています。
医師と介護職員の橋渡しを担う
指導を行う上で、施設ならではのメリットを感じることもあります。例えば、睡眠薬と向精神薬の飲ませ方や注意点についての研修を行った際のことです。その研修は、実際に働かれている介護職員さんからの希望が多く実施に至ったのですが、研修中や研修後に質問や相談を受けることで、各患者さんに対しての個別の注意点も同時に伝えることができました。「こういうケースでは必ずこうする」ということを言い切れない難しさが常にある中で、基本的な知識の普及と個別ケアの両立を実現することができた有意義な時間であったと思います。

また、施設での支援において、医師と介護職員の橋渡し的な役割も意識するようにしています。例えば、医師が介護職員さんに対して就寝前に薬を飲ませるよう指示をした場合、介護職員さんは患者さんの状態に関わらず、何としても飲んでもらおうと取り組む傾向にあります。でも現場では、夜になると勤務しているスタッフが少なくなり、実際には服薬指導が大変な場合が多々ありました。そうした際に、私が薬剤師としての視点で患者さんの状態を医師に伝えることで、処方する薬に問題がなければ日中に飲むように見直しを提案したりしています。
「公益性」の高い薬剤師を育てていきたい

薬剤師には「公益性」という観点が必要であるというのが私の考えです。言い換えると、薬のプロフェッショナルとして頼ってもらえる存在であるということを世間に認知される必要があると思っています。現状では、薬局周りに住む地域の方々はおろか、医療現場で従事する看護師さんにでさえ、薬剤師の特性を十分に理解してもらえているとは言い難いです。そのため、若い薬剤師の育成に携わる際は、公益性を意識する大切さを伝えるようにしています。「薬剤師に聞いてみよう」と、もっと多くの人に自然に思ってもらえるような薬剤師を一人でも輩出していきたいです。