DI業務は、その重要性が認識されながらも、多忙な薬局の現場ではなかなか取り組むことができないという声がよく聞かれます。そんな中、DI活動に精力的に取り組んでいるのが、北海道内で9店舗を展開するひまわり薬局です。
全店舗のDI室の役割を担う東区ひまわり薬局に、DI活動の実際やその成果などについてお話を伺いました。
いつでも、誰もが安心してかかれる薬局を目指して
名達先生:ひまわり薬局は、札幌市内、苫小牧、余市、室蘭に全9店舗あり、地域のかかりつけ薬局としての活動に力を入れ、在宅医療にも積極的に取り組んでいます。薬局として目指しているのは、“いつでも、誰もが安心してかかれる薬局“です。
澤谷先生:患者さんとしても、医薬品に関連するいろいろな情報を知っていて、自分の疑問や不安を解消してくれる薬剤師から薬をもらいたいものですよね。そんな薬剤師にスタッフ全員がなってほしいと、DI室の担当者としてDI活動を推進しています。
四方先生:そもそも当薬局がDI活動の重要な目的として捉えていたのは、“同じ副作用を同じ患者さんに起させない”ということです。開設当初より、患者さんから薬剤使用後の身体状態の変化などを聞き取り、副作用のモニタリングを行っていました。ただ、患者さんの訴えが必ずしも副作用とは限らないため、私たち薬剤師が薬学的な視点で経過などを確認できるように、副作用が疑われる症例をスタッフ全員で共有、議論し、副作用と判断した症例については、医薬品・医療機器等安全性情報報告制度のもと報告するといった体制を整えていきました。また患者さんのためのツールの作成など、徐々に活動の範囲が広がり、現在のDI業務につながっています。
DI室と各店舗のDI担当薬剤師からなるチーム体制で
情報を社内全体で共有
名達先生:現在では、当薬局にDI室を設置し、店舗ごとに選任されたDI担当薬剤師を中心に体制を整えています。各店舗のDI担当薬剤師が薬歴から副作用や症例などDIに関する情報を収集・集約し、店舗ごとに朝のカンファレンスで共有するとともに、1ヵ月分の情報を月1回のDI委員会で報告しています。また、医療機関へのトレーシングレポートの提供や、医薬品メーカーによる学習会の開催などの活動も行っています。
澤谷先生:DI室では、DI委員会の運営を担っています。DI委員会で、各店舗からの情報をDI担当薬剤師全員で副作用によるものか否かなどを検討し、その結果をDI室で報告書としてまとめ、各店舗で共有できるようにしています。また、薬剤師のスキルやモチベーションの向上、知識のアップデートを目的に、「ひまわりDI室ニュース」を社内の薬剤師向けに月1回発行。 内容としては、改訂添付文書の医薬品安全対策情報、薬剤の適正使用、調剤報酬改定に関する情報など、発表資料だけでは理解が難しいテーマや薬剤の最新情報を取り上げています。
さらにDI委員会では、緑内障のタイプ(閉塞隅角、開放隅角)のチェック、糖尿病のフォローアップなど、目的意識をもって積極的にDI活動を進められるように、1年に1つテーマを決めて、各店舗で取り組むようにしています。 緑内障のタイプのチェックでは、自分がどちらのタイプかわからない患者さんが多いため、医師から緑内障のタイプをチェックしてもらうシートをお薬手帳に添付しました。その結果、閉塞隅角緑内障の患者さんがわかり、処方監査に役立てることができました。また、こうした取り組みの成果をまとめて学会で発表し、薬剤師のスキルやモチベーションアップにつなげています。
患者さん中心の医療を提供するために
そこにDI活動の意義がある
四方先生:患者さんから情報を収集することでその薬剤師自身の経験値が積み重なりますが、その情報を共有することによって、スタッフ全体の経験値も上がり、より良い患者フォローアップにつながっていくと感じています。薬剤師の仕事は患者さんに薬を渡したあとが勝負だと思っていますので、DI活動は薬剤師の仕事をより豊かに、充実させる業務の一つであり、私自身のモチベーションにもなっています。
澤谷先生:転職してここで働き始めた当初は、朝のカンファレンスをはじめとしたDI活動にびっくりしたんですが(笑)、実際にカンファレンスで報告があった患者さんに関わったりする中で、自分も患者さんの治療に関わる一員だという実感が湧き、情報共有の大切さを意識できるようになりました。
名達先生:直接的には保険点数に結びつかないのでどうしても軽視されがちですが、私たち薬剤師のレベルが向上し、最終的には患者さんのためになることにDI活動の意義を感じています。患者さんからの聞き取りなどいくら情報収集を行っても、それを評価する場がなければ、情報は埋もれたままになってしまいます。DI活動は対物業務のように思われがちですが、実は対人業務のベースとして必要なもので、薬剤師が対人業務で高い専門性を発揮するためには不可欠だと思っています。
澤谷先生:薬剤師が薬をぽんと渡すだけではなく、専門的な知識をもとに患者さんと対話をすると、患者さんも心を開いていろいろなことを話してくれるようになるんですよね。患者さんとの良好な信頼関係を築くためにも、情報をよく知っていることが大切で、それが対人業務にとって必要なDI活動ではないかと考えています。
名達先生:将来的には薬局の業務でもDX化が進み、より多くの情報が入手できる時代になることが予想されます。情報が多くなればなるほど、その情報を見極めるスキルが必要です。時代が変化していく中で、患者さんが安心してかかり続けられる薬局として存在していくためには、ますますDIの活用が鍵になってくると考えています。
株式会社 北海道保健企画
ひまわり薬局
北海道で札幌市を中心に9店舗を展開する薬局。薬局のほか、介護用品の販売・レンタル・住宅改修などを行う介護ショップも運営している。東区ひまわり薬局はDI室担当薬局として、各店舗のDI担当薬剤師から情報を集約して共有するとともに、社内向け・患者向けのツール制作などを行っている。