薬剤師取材

マンガで見る「もう一歩先の在宅医療、現場の薬剤師」(後編) エピソード②③~インタビュー

アトム薬局 アルプス通り店 在宅療養支援認定薬剤師 萩原宏美先生

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アトム薬局 アルプス通り店にて。左端はアトム薬局代表の藤巻徹郎先生。
(2020年6月取材)

もう一歩先に見えてくる 在宅医療での薬剤師の役割

後編ではその後の業務で経験したエピソードと、これからの在宅医療を牽引していく次世代の薬剤師の皆様にとって、たくさんのヒントが詰まった萩原先生のインタビューをお届けします。

エピソード② 〜報告書を通しての反省〜

「なんとなく」は禁物、横の連携が成り立たない

エピソード③ 〜担当者会議での気づき〜

多職種が「薬」を、意識していないことに驚く

患者さんが自分らしく生きるために、薬の分野からお手伝いできるのは薬剤師だけ

こうして振り返ってみると、在宅医療に携わるようになってからたくさんの気づきがあり、失敗も繰り返しながら成長していったんだなと感じました。
“エピソード②”のケースは、私が駆け出しの在宅薬剤師だった頃の失敗談です。体温や血圧など、客観的なエビデンスをもとに報告していなかったことに原因がありました。バイタルチェックは、在宅療養支援認定薬剤師の資格を取得する際にみっちりと講義を受けたので、それからは、必要に応じて計測するようにしています。聴診器、体温計、血圧計、パルスオキシメーターなど、自分専用の基本セットを必ず持ち歩いています。
訪問看護師などに提出する報告書には、計測数値とともに患者さんの様子を記入します。患者さんの小さな変調も、こうした根拠をもとに情報交換することができるようになり、単に「薬を配達するだけ」の薬剤師ではなく、患者さんに寄り添った在宅サービスを提供できていることを実感しています。

在宅訪問する際に持ち歩いているバイタルチェックのためのセット。

 

“エピソード③”は、外来を担当していた頃には気づけなかったケースでした。きちんと調剤された薬が患者さんのもとへ届いていれば、多職種にとって内容はあまり関係ないのかもしれません。しかし、患者さんやご家族に薬の効能や副作用を理解してもらうには、関わる医療従事者こそが理解していないといけないと思うのです。そこで私は、対象患者さんが服用している薬剤情報を1枚の紙にわかりやすくまとめ、担当者会議で全員に配布するようにしました。例えば「血管を広げて、血圧を下げる薬です」といったように、専門用語は使わず、薬の働きや起こりやすい副作用などを、どの職種の方にも理解いただけるようにと心がけました。「この患者さんで特に気をつけてほしいこと」といった情報は、特に喜ばれましたね。多職種の皆さんの薬に対する理解が深まり、より密な連携が図れるようになったと思います。
また反対に、担当者会議では、私のほうも学ばせてもらっています。看護師さんやケアマネジャーさんの患者さんへの対応や会話の仕方など、コミュニケーションのとり方については、会議を通して方法論を学んでいきました。薬剤師にとって、とても重要な場だと感じています。

外来から在宅へとつなぎ患者さんの一生を見守りたい

現在は、8名の在宅患者さんを担当しています。長らく同じ方を受けもっているのですが、初めは処方内容の見直しが多かったものの、最近では、加齢や認知機能の低下が見られるようになってきたため、配薬方法を変更したり、飲み続けてきた薬であっても副作用をしっかり確認したりと、業務内容は少しずつ変わってきていますね。疑義照会が必要と思えば、医師の処方を尊重しながら、薬剤師としての意見をきちんと伝えるようにしています。
これまでの経験を通じて思うのは、在宅医療での薬剤管理の本質は、患者さんの目線に立って処方内容に介入できる点にあるということです。薬を箱やカレンダーにセットすることが管理とは思っていません。薬の種類や剤形を見直したり、用量を減らす提案ができるのは、薬剤師だからこそ。薬の飲み忘れがあったとしても、「今すぐに服用することも可能である」などと薬の優先度を判断できるのが薬剤師です。患者さんがご自宅でやりたいことや、なりたい自分に近づくために、薬の分野からお手伝いすることが真の役割だと考えています。


患者さんの暮らしに寄り添うことができ、とてもやりがいのある仕事だと思っていますが、在宅薬剤師が広がっている実感はまだまだありません。ですから、チャンスがあれば全ての薬剤師の皆さんに、現場へ行ってご本人の顔を見ていただきたいですね。そこでしか感じることのできないことがたくさんありますから。薬局から一歩外へ踏み出すのは勇気がいるかもしれませんが、在宅に対する気持ちというのは、街で重い荷物を持っている高齢者に声をかけるような感覚に似ているのかなと思います。そういう方を見かけたら「大丈夫かな?」と感じますよね? その気持ちをストレートに患者さんに向けてもらえたら、在宅医療にもつながっていくのかなと思っています。
今後は、外来の患者さんとのお付き合いが在宅へとシフトしていくといいなと考えています。これまでの患者さんは在宅から始まるケースがほとんどで、中には数年ほどのお付き合いで終わってしまうこともあるのです。できれば、若いうちから交流が始まり、最後は看取りまで……そうした携わり方が実現するならば、まさに薬剤師冥利に尽きると思います。外来に来られた方の中に、何種類ものお薬をのんでいたり、来店される期間が不規則だったり、歩き方や立ち上がりが不安定だったりする患者さんがいたら、積極的に声をかけていきたいと思います。そうして、外来から在宅へとつなげていくことにも期待を高めています。
ケアマネジャーの資格を取ったときから今もずっと変わらない思い。患者さんがなりたい自分に近づくために。これからも、患者さんの幸せを第一に在宅医療に関わっていきたいと思います!

 

<アトム薬局 アルプス通り店>

山梨県甲斐市万才821-3
☎055-275-8493

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