激動の書店業界で躍進する人気店の哲学から
街の小さな書店が地域に選ばれ生き残る理由を探ります。
大型書店チェーンの台頭やEC販売の普及など、時代の潮流とともに街の書店は急激に衰退。20年ほど前は2万店を超えていた店舗数も、実店舗に限ると近年では1万店を下回る※ほどに。そんな中、今も街の人気店として書店経営をつづける隆祥館二代目店主二村知子さんに、その理由や背景を伺いました。
景気後退や法律改正、取次の冷遇……
店を継いだ当初は逆境の連続でした。
両親が経営するこの店を継いだのは今から25年ほど前。ちょうど書籍のEC販売やコンビニチェーンでの取り扱いがはじまった頃でした。しかもその後、街の中小の店舗を守る大店法(大規模小売店舗法)が廃止され、私たちのような小さな書店は逆風にさらされることになりました。
世の中の景気後退の影響も重なり、取次業者(出版社と書店の間をつなぐ卸売問屋の役割)も個人店に少数ずつ配本するコストを抑え、大手チェーンへ優先的に、大量に配本を行うようになっていきました。仕入れ時の精算もそれまでは全額負担をせずとも良かったものが、中小には便宜を図ってくれなくなる、といった理不尽も起こるように。
そうした変化の中で廃業に追い込まれる書店を多く見てきました。当店でも、過去に、新刊発売時から約3ヵ月間、東京の大手書店を抑えて日本一の販売数を売り上げた作品があったのですが、文庫化した際は一冊も配本されなかったことさえありました。