薬剤師取材

在宅医療現場での多職種連携による患者フォローアップ

クラフト株式会社 さくら薬局壬生店 加藤悠先生

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多職種連携に力を入れる「みぶの会」のメンバーとして、2014年から訪問薬剤管理指導に取り組むクラフト株式会社さくら薬局壬生店の加藤先生。現在は月に個人宅14人と契約を結び、チームで在宅医療に取り組みます。加藤先生に在宅医療に取り組む意義、ツールを活用した多職種連携についてうかがいました。

医療・介護の連携ツール
「どこでも連絡帳」

常勤薬剤師は私を含めて2人で、訪問は主に私の担当です。訪問スケジュールは、薬局が午前営業の水曜・土曜日をのぞくほぼ毎日。正午から16時頃まで訪問していて、それ以外の時間は外来の調剤を行っています。また土曜日も隔週で訪問しています。

患者さまが安心して、できるだけ長くご自宅で過ごすためには、さまざまな職種がチームで関わることが欠かせません。そこで多職種で情報共有・連携するためのツールとして活用しているのが、クラウドサービスを利用したコミュニケーションツールである「メディカルケアステーション(MCS)」です。MCSでは堅苦しいので、私たちは「どこでも連絡帳」と呼んでいます。

もともと当薬局のある栃木県下都賀郡壬生町では、2007年頃から「みぶの会」という多職種連携の場をもうけて、医療と介護の連携を進めてきました。

ここに参加する職種は医師、歯科医師をはじめとして薬剤師、看護師、保健師、ケアマネジャー、社会福祉士、民生委員など多岐にわたります。当然のことながら、それぞれの職種の活動時間や拠点などはバラバラです。そこで、多職種(※)がより効果的に患者情報を共有するため、みぶの会共通のツールとして「どこでも連絡帳」を導入しました。

他職種(※)のちょっとした気づきが
薬物治療の質を高める

ツールの導入にあたって気をつけたことは、やはり個人情報の取り扱いです。「どこでも連絡帳」は検査値や紹介状、画像所見など多くの個人情報が閲覧できます。そのため、ログインする際のパスワードは端末に保存しない、各フォルダには必ずロックをかけるなど、情報の取り扱いには細心の注意を払っています。

実際の運用にあたっては、患者さまごとにタイムラインの画面があり、ここにさまざまな情報が書き込まれます。情報共有の方法は主に2つで、多数への情報共有は「グループ」機能を使い、「つながり」と呼ばれる機能では、1対1でのやり取りができます。

薬剤師側から発信する情報は、初回訪問時であれば、持参薬や退院時処方、残薬、次回処方のタイミングなど。そのほかにも外来と同様に、体質チェックなどの情報も提供しています。

実際に「どこでも連絡帳」を使ってチーム医療を行ってみて、強く感じたのは、他職種のちょっとした「気づき」が、薬物療法の質を向上させるのにとても役立つということです。

例えばヘルパーさんから「この薬を飲んでから、表情が明るくなった」、「身だしなみが乱れてきた」などの、ちょっとした気づきが大きなヒントになります。フィードバックを受けて「薬が効きすぎているかもしれない」、「用量が足りていないのでは」という判断材料につながるからです。

※本文では「多職種=多くの職種」、「他職種=ほかの職種」と用語を使い分けています

医師との橋渡し役として認知

このほかのメリットでは、「どのような種類のトラブル」は「誰に相談すべきか」が明確になったことです。例えば、生活で困ったことがあればケアマネや社会福祉協議会の担当者へ、バイタルチェックや身体観察で気になることがあれば看護師に相談など、他の職種に対する理解が深まりました。

同じことは薬剤師自身にもいえます。他の職種からみれば薬剤師も活動内容がみえにくい職種のようです。しかし在宅を通じてさまざまな職種と関わることによって、患者さまや医師以外からの相談が増えました。

例えば「医師が処方変更してくれないと患者さまが困っている、薬剤師から医師に説明してくれないか」など、薬の専門職として医師との橋渡しができる存在であることが、他職種に理解してもらえるようになりました。

「どこでも連絡帳」を使わなくても在宅医療はできますが、ケアの質を上げるには何らかのツールを使うことが有利です。ツールがなければそれぞれの職種が気づいた情報は、患者宅のノートに書くしか手段がなく、情報共有にタイムラグが生じてしまいます。ですが「どこでも連絡帳」を使えば、それぞれの職種が気づいた情報を数分後には共有できるのです。

例えば、看護師が訪問した際に熱中症で倒れていて、すぐに点滴をしなければならないことがありました。ですがその患者さまは心不全の病歴があり、利尿剤を使っていたのです。この表示を見てすぐに医師と連絡を取り、利尿剤の量を検討した上で駆けつけました。情報が来てから約15分後には患者宅へ着いたため、無事に利尿剤の量の調整をすることができたのです。

このように情報が瞬時にやり取りできるため、予期せぬ患者トラブルや不調にも対応できるのは大きなメリットです。在宅に移行する患者さまの多くが抱える「すぐに対応してもらえない」という不安を解消するのにも役立っていると感じます。

「どこでも連絡帳」は退院時カンファレンスにも役立っています。退院時カンファレンスにすべての職種がそろうことは難しく、時には看護師しかいないことも。その点、「どこでも連絡帳」を使えば場所を選ばずに、病院薬剤師との連携もスムーズに行うことができています。

「最初は誰でも不安」
できる範囲で最初の一歩を

すでに多くの職種がチームに関わっていますが、今後は管理栄養士やマッサージ師などとも関りを深めていきたいです。

管理栄養士については、寝たきりやADLの低下、褥瘡がある患者さまは栄養状態をよくすることで改善する可能性があるため、ぜひとも関わって欲しいと思います。

また柔道整復師なども参画してもらえたら、とても助かります。例えば精神科の患者さまで腰痛をきっかけにADLが低下し、気分が落ち込んで服薬状況にまで影響が出た方がいました。そこでケアマネと訪問看護師に相談し、整形外科の医師から訪問マッサージの指示を出してもらったところ、腰痛が和らぎ、服薬状況も改善したケースがありました。

チームにおける情報発信で、最初に感じたハードルは「医師や看護師など臨床の最前線にいる人に対して自分が発言してもいいのだろうか」という不安です。ですがこのことを医師に相談すると、「1人の薬剤師としてどう思うか、まずは感じたままを書いてほしい」とアドバイスをもらい、不安が少し和らぎました。

もっとも最初から上手に情報発信ができたわけではありません。患者さまとのやりとりや気づいたことをポンポンと書き込んだら「患者さんの御用聞きになる必要はない」と手厳しい説教を受けたこともありました。ですが経験を重ねるうちに、必要な情報とそうではないものを判断できるようになり、自信もつきました。これから在宅医療に挑戦したいと思っている先生には「最初は誰でも不安です。ぜひ、できる範囲で最初の一歩を踏み出しみてはいかがでしょう」とお伝えしたいです。

自宅で最後まで過ごしたい
患者の願いを叶えることが原動力に

今後は特に、ベテラン薬剤師の先生に参加していただくことが目標です。なぜなら、在宅ではコミュニケーションが非常に重要だからです。ベテラン薬剤師の先生は若手に比べてコミュニケーションスキルが高く、在宅では貴重な戦力になっていただけるはずです。また患者さんにとっても、自分のことを長く知ってくれている先生が訪問してくれれば、大きな心の支えになるはずです。

服薬指導後のフォローアップが義務化されましたが、横のつながりを活かしたフォローアップは私たちの得意とするところです。訪問看護師やケアマネには、普段から「何か気づいたことがあったら教えてください」と伝えてあるので、生活の中での気づきを薬物治療に生かせる環境が整いつつあります。

忘れられない患者さまがいます。ちょうど私が麻薬の持続皮下注射に挑戦し始めたばかりの頃でした。緩和ケアの患者さまで、最後は口から薬を飲むことができなくなり、注射に切り替えることになったのです。

でもご本人が「注射は怖いからいやだ」と。そこで医師がいったセリフは「今は薬剤師さんが麻薬の調剤をしてくれるようになったから、自宅で最後まで過ごすことができるのです。“自宅で過ごしたい”というあなたご自身の希望を叶えるために、一緒に頑張りましょう」。

患者さまは「自分が建てた家で、家族といたい」といって涙を流されました。私たちが在宅に取り組むことで、同じように感じている患者さまの最後の願いを叶えるお手伝いができるのです。それなら1人でも多くの患者さまの願いを叶えたい――この思いが今の私の大きな原動力なのです。

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