2014年から電子お薬手帳「harmo」(※)の事業をスタートさせた滋賀県薬剤師会。現在では、利用者10万人と全国でもトップクラスの利用者数を誇っています。
「まかせてよ! もっと身近に 薬剤師」のキャッチフレーズのもと、地域に根差したさまざまな取り組みを推進する滋賀県薬剤師会会長・大迫芳孝氏と常務理事の村杉紀明氏に電子お薬手帳の推進過程や今後の展望についてお話を伺いました。
※シミックヘルスケア・インスティテュート株式会社
お薬手帳はヘルスリテラシーを高める一助になる
―患者さん、薬剤師、薬局にとっての電子お薬手帳のメリットはどのような点がありますか。
大迫会長 : 患者さんにとっては、持ち運びのしやすさ、服用している薬の情報へのアクセスのしやすさといったメリットはもちろんのこと、パーソナルレコードとしての価値も大きいと考えます。提供された情報を誰かに見せるだけではなく、自身が飲んでいる薬は何か、これまでにどんな体調の変化があったかなどを確認していただくことで、自分自身の健康や医療に対する関心を高めるツールとしての価値も大きいと捉えています。
日本で医療費が嵩む要因のひとつには、生活習慣病などが挙げられます。ご自身の生活習慣を見直していくことによって、疾病の予防や重症化の予防につながっていくことが求められているものの、国民の多くは、医療に関する情報を処理したり、自身の行動変容を継続することに対してはあまり意識が向けられていないのではないでしょうか。電子お薬手帳など、あらゆる面で、日頃から自身の情報に触れ続けることで、ヘルスリテラシーを高める下地ができるのではないかと思っています。
村杉理事 : もちろん、紙のお薬手帳にも「直接書き込め、それらをコピーできる」といったメリットがあります。ただ、紙のお薬手帳は携帯性が良くなく、忘れる方もいらっしゃるのが現状です。災害時には、紙のお薬手帳そのものがなくなってしまうリスクもあります。電子であればデータをサーバーで保管していますので、端末を失くしてしまっても復元できるメリットがあります。紙も電子もそれぞれに良さがあり、個々で使いやすさは異なります。どちらが患者さんにとって使いやすいかを薬剤師が見極めて、メリットをどう生かしていくのかをコントロールすることが求められると思います。