薬剤師こだわり図鑑

在宅医療にこだわり vol.4

J-HOPリレー連載企画
「患者さんが心底喜ぶケア」の実現のために薬剤師ができること

川添 哲嗣 先生

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‘90年、神戸学院大学を卒業後、営業職、病院薬剤師の後、’98〜’14年、くろしお薬局にて在宅医療や多職種連携に取り組む。’14〜’18年、南国病院薬剤部長、’18年5月からは南国病院と高知調剤薬局の双方を掛け持ちで働いている。

1)地域包括ケアの実践と在宅医療の普及と啓発

こだわりを持って取り組んでいることは3つあります。
まず一つ目は、「地域包括ケアの実践と在宅医療の普及と啓発」です。薬局時代に在宅医療に関わった経験と病院で行なっている退院支援がつながっていることを確信したため、その中身とノウハウを普及・啓発していきたいと思ったわけです。

在宅医療では、医師、看護師、ケアマネジャーらと連携して、在宅療養生活の再構築、維持そして向上のために医療と介護の両面から支援をしていきます。薬剤師による服薬支援は在宅生活の維持につながり、結果としてケアプランにある目標の達成にも寄与します。

退院支援も同じです。病棟でのカンファレンスでは退院後の在宅療養生活を想定した話し合いがなされます。それぞれの専門職が患者個々の目標達成のために必要な事項についてコンサルテーションします。薬剤師は、自宅に戻った後も服薬が継続できる服薬支援方法(後記)を入院中から考えます。その際、支援者の選定も同時に考えます。支援者は家族、ヘルパー、訪問看護、そして薬局薬剤師など様々です。かかりつけ薬剤師の名前が薬手帳に記載されていれば、退院前から連絡を取り合うことも大切です。
以上の通り、在宅医療と退院支援に関して、患者と家族を中心として、 連携した多職種で患者の療養を支援するのです。それが真の地域包括ケアにつながります。

多職種連携に苦手意識を感じている方は、まず訪問看護とケアマネジャーと情報を共有するところから始めてみてください。共有すべき最重要項目は、個々の患者さんの「思い、目標、在宅療養の目的」です。その目標や目的を共有し、その達成のために薬剤師として何をすればいいかを考えていけば、自然とチーム意識がみんなに芽生えます。達成したら共に喜びあえます。こ
れは在宅医療も退院支援も同じです。目標なき医療、看護、介護は無いのです。それを薬剤師は知らぬまま、ただひたすら調剤し、飲めるようにすることだけに傾注してきた時代が長く続いた結果、連携することがとんでもなくレベルの高いスキルのように感じているだけです。本当は当たり前のことなので、スキルなんて不要ですし、すぐに誰でもできます。 全国薬剤師・在宅療養支援連絡会(J-HOP)では、在宅訪問の基礎講座とともに、地域包括ケアへの関わり方もブロック研修会やメーリングを通して学び合っています。私もこの内容の普及と啓発には今後もこだわって関わっていこうと思います。ぜひ、皆さんもJ-HOPにご参加ください。

2)薬物療法の適正化を踏まえた処方提案

二つ目のこだわりは「薬物療法の適正化を踏まえた処方提案」です。
ここ数年、日本老年薬学会の研修を通してかなりの知識とノウハウが増え、実践してみることで本当にいい提案ができるようになってきました。
具体的には、まず、処方内容、併用薬、検査値、バイタル、病状のみならず精神因子や環境因子も加えて課題を見つけることを行います。そして、患者や家族の意向を踏まえた薬物療法適正化の目標設定をし、処方提案を行います。高齢者総合評価(CGA)や国際生活機能分類(ICF)もできるだけ意識するようにしています。

これらの知識と技術をきちんと修得するためには、J-HOPや老年薬学会への入会をおすすめします。そこでアンテナを張って研修会にご参加ください。特に老年薬学会では、著名な医師、薬剤師による認定セミナーや実践ワークショップが多数開催されています。また、私自身も老年薬学会や個人の講演を通じて全国各地にお伝えしていっています。

おすすめ書籍も列挙しておきます。学会や研修会への参加よりまず先に、これらを自分自身で読みまくることが大切です。熟読して得た基礎知識や疑問点を抱えて研修会に参加し、演者に質問することが、修得のための王道であり、近道であると考えます。

・高齢者の安全や薬物療法ガイドライン2015(メジカルレビュー)
・月刊薬事2018年6月「リハ栄養とリハ薬剤」(じほう)
・月刊薬事2018年8月「患者中心のポリファーマシー対策」(じほう)
・ポリファーマシー見直しのための医師・薬剤師連携ガイド(南山堂)
・レジデントノート2016年Vol.16,17「ポリファーマシー~その症状は薬のせい!?」(羊土社)
・総合診療のGノート2016年Vol.3 No.7「ポリファーマシー対策」(羊土社)

3)服薬支援方法の確立

そして三つ目のこだわりは「服薬支援方法の確立」です。南国病院で多くの方の服薬支援に携わりました。その中で、在宅生活を続ける上で服薬支援は大変重要で、しかも通り一辺倒ではない個別支援策が現代社会全体のニーズだと感じ、取り組んでいます。例えば、「週間投薬カレンダー」でも飲めなくなった人には「日めくりカレンダー」を導入しています。認知症の方だけでなく、統合失調症や抑うつの強い方にも有効です。

服薬支援で重要なのは「飲めない原因」「飲まない原因」を分析することです。(表:残薬発生原因)原因を抽出することで、対策は立て易くなります。これは外来、施設、在宅など療養シーンを問いません。皆さんも下記の表を使用して心理、身体、環境因子ごとに原因抽出をしてみてください。特に物理的支援策である薬カレンダーや薬仕分け箱にこだわりすぎると心理面や身体面の課題を見落とすことがありますので注意が必要です。また、環境面に含んでいますが、服薬支援者を探すことはとても重要です。薬剤師だけで頑張っても限界があります。家族やサービス業者も含めたチーム医療、チーム介護を心がけ、服薬支援のコーディネートを薬剤師がすることが、結果的に患者さんのためになるのです。

「患者さんが心底喜ぶ在宅医療と地域包括ケアの普及と啓発」を目指して

J-HOPでの研修会の実施
患者さん個々に設定された目標が達成され、喜んでもらえる退院支援や在宅医療に関われることは最高のやりがいです。在宅訪問だけでなく、薬物療法適正化の手法や服薬支援方法の確立も含め、その真髄とノウハウを全国の皆さんにお届けするのは私のライフワークだと思っています。全国薬剤師・在宅療養支援連絡会(J-HOP)では、わかりやすく、楽しく、そして充実した研修会を提供しています。どうぞお近くのJ-HOPの研修会にお越しください。

臨床研究を論文として残す
また、実践内容の論文化も今後積極的に取り組んでいこうと思っています。今までやってきたことも含め、取り組み内容は本当に有効と言えるのかと聞かれた時に、きちんとした臨床研究でそれを証明していれば後世に残りますから。

<J-HOP連載企画~在宅最前線~について>

J-HOP(一般社団法人 全国薬剤師・在宅療養支援連絡会)と協力し、在宅を実施している薬剤師の最前線の情報を提供する事を目的に連載企画として実施しています。

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