
大幸 淳(だいこう あつし)
2005年、北里大学大学院(臨床薬学履修コース)修了後、神奈川県横須賀市の衣笠病院に入職。東部病院への入職は2006年10月。「地域連携」への深い思い入れがあり、横浜市鶴見区の薬局ならびに病院に在籍する若手薬剤師で構成する勉強会の立ち上げなどに尽力する。
「地域連携」をライフワークに掲げ
薬局・病院薬剤師の「共通知」育む
2006年10月に済生会横浜市東部病院の「開設準備室」に入職しました。翌2007年4月に開院した東部病院には立ち上げの段階からの参画です。現在は「医薬品情報(DI)室」を担当しています。
私には4つの「ライフワーク」があります。主担当業務のDIはもちろんのこと、これに加え「フォーミュラリ」と「マネージメント(部門管理)・教育」、そして今、最も思い入れ深く力を注いでいるのが「地域連携」です。キーワードに掲げているのは「つなぐ」。“主語”である患者さんや地域住民のケアの主体は「地域」で、その地域の医療を担う薬局薬剤師と病院薬剤師が連携することによって、安心で安全な薬物療法の提供が実現できるのではないかとの期待が背景にあります。
そんな思いが、横浜市鶴見区内に勤務する薬局薬剤師と病院薬剤師が協働する「TYP-net」(Tsurumi Young Pharmacist Network、鶴見若手薬剤師の会)という勉強会の発足につながりました。
2019年2月にスタートしたTYP-netでは、安心安全をテーマにヒューマンエラーに関しての共通認識をもつこと、日常業務を振り返り、いかにすれば患者さんのために未然にリスクを回避することができるのかをテーマに、有害事象の早期発見に関するアプローチや情報提供についての勉強会を年に数回、定期的に開催してきました。
薬局と病院の薬剤師が同じ患者さんを同じ目線で見るためには、知識の共有と症例情報の連携が必要です。そのためのツールとして、薬薬連携には不可欠な「トレーシングレポート(TR)」の活用を目指しました。TRについては薬局と病院の薬剤師の価値観を合わせておかないと利用が難しくなる懸念があります。薬局からすれば、どんな情報を送ればいいのか分からない。病院からすれば、こんな情報がありがたい。そんな課題をすり合わせることで、TRによって医療機関側でリスク回避や治療効果の向上につながった症例を「Good Job Report」と名付け薬局にフィードバックすることで、質の高いレポートの提出につなげることができました。ちょうどTRが創成期から普及期に入りかけたタイミングとも合致し、疑義照会とTRの境界に関する目線合わせや、効率的な運用ができる書式・フォーマットの作成などについて、薬局、病院の双方の立場でディスカッションし相互のコンセンサスを確立してきました。いわば「共通知」の醸成です。
今年1月に開催した勉強会で19回を数えます。会場となる東部病院に直接来訪される方のほか、勤務先や自宅からのWeb参加を合わせると、毎回、30人ほどが参加しています。