ルーティンワークの他にも
薬局としてできることはないか考えるようになる
入社してすぐは仕事を覚えることと知識を吸収することに必死でしたが、3年ほどで一通りの業務がこなせるようになり、仕事を俯瞰して見る余裕ができました。外来業務では、窓口で患者さんとの接遇時間をできるだけ確保するために、処方箋受付から窓口に出るまでの作業の部分は「正確に速く処理する」ことを追求し、窓口では、薬を飲んでいる間や飲み終えた後の疑問や不安ごとが生じた場合に薬局に相談しようという発想を持っていただけるよう、感じの良い接客を心がけていました。
しかしその中でも「もっと薬剤師の仕事を広げれば、薬局を違った形に出来るはず…。」と、漠然とした想いを抱えながらも具体的に何をしたらいいのか、行動に移すためにどうしたらいいのかも分からず、一歩を踏み出せずにいました。
「この地域に根を張った仕事をしていいよ」
上司の一言が、一歩を踏み出すきっかけに
5年前、開局のタイミングで現在の店舗に異動になりましたが、私のモヤモヤした想いは続いていました。そんな時、同店のパート薬剤師に相談したところ、志を持って様々な活動をされている薬剤師さんが集まる会合に招待してくれました。スポーツファーマシストの資格を活かして起業して精力的に活動されている方、災害医療薬剤師としても第一線で活動されている方、NST専門療法士の資格を持ち、透析・注射薬調剤などにも精通したこだわりの薬局を立ち上げた方など、様々な分野を通して地域活動に熱心に取り組まれている方々の話を聞いたことで「薬剤師にも様々な働き方があるんだ」と刺激を受けました。
また同じ頃、地域包括支援センターのケアマネジャーさんから相談を受けたMCIの男性患者さんとの出会いがありました。その方は奥様を数年前に亡くされ、寂しさや不安から年38カ所もの病院、薬局に通い、私が訪問した際には、ご自宅には睡眠導入剤や下剤など大量の残薬を溜め込んでいる状態でした。
男性は女性と比べて地域住民との交流が少なかったり、性格的に社会参加が難しかったりする方が多い傾向にあります。勝手な推測ですが、この方が多くの医療機関を受診し、その先々で門前の薬局で睡眠導入剤や下剤を交付されていた(しかし服用されていないため1000T以上の残薬として溜め込む結果に。)その根底の部分には、対等に相手をしてくれる人・場所を探していたということがあるのかもしれないと考えることがありました。