コラム記事

最期まで自宅で過ごすための疼痛コントロール~医療用麻薬のケアポイント(終末期オピオイドスイッチの患者さん編)~

【在宅現場の『コレってどうする?!』/ 福島 梨沙】


このシリーズでは、初めて在宅の患者さんを担当する方や、日頃の在宅訪問に不安を感じている方へ、明日から役立つコツを実例をもとにお伝えしていきます。

「終末期の患者さんに貢献したいけど、緩和ケアや医療用麻薬の扱いに自信がないんです。」
というご相談を受けることがあります。その気持ちはすごくわかります。

私は、在宅訪問を始めて6年経ちますが、いまだに「本当にこの対応でよかったんだろうか、もっとできることがあったんじゃないか」と思うことがあります。

今回は、がん終末期においてオピオイドスイッチした患者さんの事例を元に、お看取りまで患者さんやご家族、在宅チームの他職種とどう関わったら良いかについてもご紹介します。

(前回の記事はこちら→vol.19 フレイルかも?在宅での栄養介入~一人ひとりにあったケアポイント(低栄養の患者さん編)~


●緩和ケア患者さんの疼痛コントロール

緩和ケアに移行した在宅患者さんの場合、ACPやお看取りの方針が決まりつつあり、疼痛コントロールではすでにオピオイドの使用が開始されていることが多いでしょう。

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とは、もしものときのために、望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みのことです。

緩和ケアについての前回コラムでも取り上げさせていただきましたが、在宅で関わる私たち薬剤師は内服が困難になる前に、適切な処方変更の提案をすることが大事なことではないかと思います。

私の失敗エピソード
訪問クリニックより入電。
「ご家族より、『昨日の夜からオキシコドン徐放錠が服薬できていない。』との訴えがあり、今朝、医師が臨時往診しました。今後内服は困難と判断し、フェンタニル貼付剤(24時間製剤)に変更することになりました。今から処方せんのFAXをいたします。薬剤師さんが訪問次第、フェンタニル貼付剤(24時間製剤)に変更にお願いします。」  
 
調剤を行い速やかに訪問し、ご家族に貼付剤の指導と実際に貼ってもらいました。
ですが、すでに昨晩から徐放錠を服薬できておらず、どんなに早くフェンタニル貼付剤(24時間製剤)に切り替えたとしても、血中濃度が安定するまで時間がかかります。患者さんに苦しい思いをさせてしまいました。



このようにならないために、嚥下が難しくなってきた兆候を聞き取り、内服薬を完全に服薬できなくなる前に処方変更の提案をするべきなのです。  

*合わせて読みたい:緩和ケアにおける在宅薬剤師の関わり方<後編>~がん疼痛とオピオイドの使い方~ (アスヤクLABO)

オピオイドスイッチングとは?

オピオイドスイッチングとは、増量しても鎮痛が十分でない時や、副作用のためにオピオイドの種類を変更するときに行います。また、お看取りが近い患者さんの場合、嚥下困難の兆候が見られた際には、内服が困難になることを踏まえ、貼付剤や注射剤オピオイドに変更になるケースもあります。

原則 1.力価表に従って、現在のオピオイドと等力価の新しいオピオイドの投与量を求め、オピオイドを変更する。
2.必要に応じてレスキューを変更する。
3.変更後は、痛みと眠気の観察を行う。
・痛みが増強したら20〜30%増量する。
・眠気が出たら20〜30%減量する。
4. 経口モルヒネ換算で60 mg/日以上の場合は、変更によって疼痛・副作用が増強する可能性があるので、一度に変更せずに30〜50%ずつ徐々に置き換える。徐々に変更する過程で、変更の目的が達成されたら2つのオピオイドを併用してもかまわない。


引用:新版 がん緩和ケアガイドブック(P49、オピオイド力価表P52)


□他剤からフェンタニル貼付薬への変更のときの注意
フェンタニル貼付薬は24時間製剤なので、血中濃度が上昇するのに時間がかかります

きちんと製剤の特性をお伝えし、レスキューで対応するように訪問時に説明していても、製剤の切り替え後に急に痛みを感じると不安になって、自己判断でフェンタニルを剥がしてしまった。という患者さんがいました。

疼痛を感じたら血中濃度が安定するまで、レスキューで対応するように指導することは、とても重要なことです。

□先行オピオイドを中止するタイミング
12時間製剤と24時間製剤で切り替え方が異なるので、注意しましょう!

例1.12時間徐放性オピオイドの場合

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