コラム記事

緩和ケアにおける在宅薬剤師の関わり方<前編>

【在宅現場の『コレってどうする?!』/ 福島 梨沙】


このシリーズでは、初めて在宅の患者さんを担当する方や、日頃の在宅訪問に不安を感じている方へ、明日から役立つコツを実例をもとにお伝えしていきます。

「在宅には少しずつ慣れてきたけど、末期がんの方を担当するのは自信がない・・」
「緩和ケア患者さんのご家族とどう接していいかわからない・・」

在宅訪問服薬にはやりがいを感じる反面、「死」と密接に関わる末期がんの方の訪問服薬の対応に悩んでいる薬剤師の方も多いと思います。今回からがん終末期医療への薬剤師の関わりについて2回に分けてお伝えします!
(前回の記事はこちら→vol.15 在宅褥瘡治療への介入~一人ひとりにあったケアポイント(褥瘡患者さん編)~


●緩和ケアの患者さんと接する前に知っておきたいこと

薬剤師が「緩和ケア」に関わる上で鎮痛剤や医療用麻薬の知識などは必須となりますが、それだけでなく、死へ向かっていく方・ご家族と向き合う上で一人の人として心構えが同時に必要となります。
在宅で緩和ケアの患者さんを担当し、ご家族と共にお看取りをするということは薬の説明だけではない、死にゆくことのへ寄り添いが大切だからです。

WHO(世界保健機関)では2002年に「緩和ケア」を以下のように定義しています。

緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやそのほかの身体的な問題、心理・社会的な問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメント(評価)と対処(治療・処置)を行うことによって、苦痛の予防と軽減を図り、生活の質(QOL)を向上させるためのアプローチである。


日本では、「がん対策推進基本計画」において、「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が重点的に取り組むべき課題として位置づけられました。全国のがん診療連携拠点病院を中心に「緩和ケアチーム」の設置など、「緩和ケア」が受けられる体制が整備されつつあります。

ご自宅で最期を迎える方の訪問服薬を担当する時に、最低限知っておきたい用語や概念を以下に説明します。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)


ACP(アドバンス・ケア・プランニング)(愛称「人生会議」)とは、もしものときのために、望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みのことです。
ゼロから始める人生会議(参考:厚生労働省)

例えば、「最期はどこで迎えたいのか」「こんなケアはされたくない」「こんな治療はしたくない(胃ろう・心肺蘇生等)」など、人それぞれ考えがあると思います。ACPは元気なうちから自分の最期について考え、周りの人に共有しておくことを推奨しています。ですが、なかなか取り組めていないのが日本の現状です。

在宅で関わる終末期の患者さんでは、病院で予後の話を聞き「一度は自宅に帰りたい」と希望されて退院となるケースがあります。自宅に戻り家族と過ごして「一時帰宅のつもりだったけど、やっぱり最期は家にいたい」と考えが変わる方もいらっしゃいます。いつでもプランは変えられる。そして、患者さんの意志やご家族の想いを繰り返し確認しながらケアチームで方針を決定していくのが大切なのです。

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