【イベントレポート】薬剤師が関わる「生」と「性」セミナー

Session 3 これからの女性のキャリアと健康~妊活×はたらく体験を通して
株式会社Will Lab(ウィルラボ)代表取締役 小安 美和 氏

約30分の休憩を挟んで後半の講演へ。3つめのセッションに登壇したのは、「子どもを授からなかった高度生殖医療体験者」として積極的にメディアでの発言を行っている株式会社Will Labの小安美和氏です。リクルートグループの会社で執行役員として活躍していた39歳のとき体外受精をスタートし、約5年間、働きながら不妊治療に取り組みました。現在は、女性の就労促進やリーダー育成などを行っています。
 

「不妊治療に取り組む女性のうち95.6%もの人が『仕事と不妊治療の両立は困難である』と回答しています。実際、約2割の女性が、治療を理由に離職しているのです」
このように切り出し、実際に体験したからこそわかる体外受精の身体的苦痛、精神的苦痛について説明。体外受精のスケジュールがいかにコントコロールしにくく、麻酔による採卵がいかに苦しいものか、結果を得られなかったときの精神的ダメージが大きなものかを語りました。
 

「とある婦人科の先生に、『不妊治療に取り組む女性は、毎月、子どもをひとり亡くすのと同じぐらいのダメージを受けている』と言われたことがありました。そのぐらい大きな精神的な負荷を抱えているのに、周りには話しにくく、だからこそ仕事の時間もうまく調整できない。実際に私も、およそ1,500人の社員をマネジメントし、モチベートしなければいけない立場にありながら不妊治療を続けていたわけで、本当に何度も何度も、『仕事を辞めようかな』と思いました」(小安氏)
 

しかし、不妊治療には、1周期につき平均30~50万円と言われるほど多額の治療費がかかります。仕事を辞めたいけれど経済的負担を理由に辞められず悩み続ける人、治療費の負荷を抱えながらも仕方なく仕事を辞めてしまう人と、多くの女性がキャリアの形成に苦しんでいるのです。
 

「薬剤師さんには、不妊治療に取り組む女性がどんな負を抱えているか知っていただけると嬉しいです。その上で、お願いがあります。ぜひみなさんには、笑顔で患者さんに接してほしいなと思います。病院も暗い、そこで待っている人も暗い、受付の方も暗い、自分も暗い……。そんななか、薬剤師さんが笑顔で接してくれること、優しいひとことをかけてくれることがどれだけ励みになるか。ぜひ素敵な笑顔を忘れないでくださいね」 最後に、こう締めくくった小安氏。その明るい表情や前向きな姿勢に会場の参加者も自然と笑顔になり、あたらこちらでうんうんと頷いている様子が見て取れました。

Session 4 現代女性の悩みと健康サポート~薬剤師としてできることを
大岡山北口薬局 管理薬剤師 杉本 園子 先生

最後に登壇した杉本園子先生は、大岡山北口薬局で地域住民の健康管理に奔走する現役の管理薬剤師です。数年前に企業の薬剤師向け教育プログラムに参加したことがきっかけで女性の不調とホルモンが深く関わっていることを知り、以降、女性の健康をサポートする活動を積極的に行っています。
 

まずは女性の体調とホルモン、更年期などについて、詳しく解説。その上で「更年期について、理由もよくわからず『悪』だと思っている患者さんが多い。私はまず、『更年期はエストロゲンの低下によって起こるものであり、それは卵巣機能の低下によって引き起こされ、脳がパニックになって自立神経のバランスが崩れるんですよ』という仕組みをていねいに説明しています」と杉本先生。ここまで話すと患者さんの理解が進み、目がキラッと光って、さまざまな質問が飛び出すそうです。
「不調の背景に起こっていることをしっかり説明すると信頼関係が出来上がり、患者さんがどんどん喋ってくれるようになります。そこから、婦人科検診をすすめたり、漢方やサプリをすすめたりと、より踏み込んだサポートができるようになるんですよね」
こう話す杉本先生。最近は過度なダイエットによって体調を崩しがちな10代女性の栄養教育、40~50代女性の骨量減少対策、高齢者に対し継続して骨粗しょう症の治療を行うことの大切さを伝える啓蒙活動などに特に力を入れていると言います。
 

「活動のひとつとして、薬局で骨密度や血管年齢を測定するイベントを行いました。多くの地域住民の方が来てくださり、うち数名の方には、病院を紹介したり、サプリを紹介して継続的に飲んでいただくことができています。また、このイベントをきっかけに、自分の体調を報告してくれる人、家族ぐるみで相談に来てくれる方が増えました」(杉本先生)
その他、薬局と医療機関との連携がいかに重要か、医療機関との関係性のつくり方などについても言及。「近隣医院に勤める女医さんとコンタクトを取り、女性の健康支援を行っていることをアピールする」「DXAのある形成外科に調べ、連携の要請を行う」など、薬局側から積極的に関係づくりのためのアクションを行っていると説明しました。「女性の健康に関する薬局からの情報発信」について、薬剤師ならではの視点での講義が行われた本セッション。会場の皆さんも、熱心に耳を傾けていました。
 

著名婦人科医、最新検査キットの開発者、不妊治療体験者、現役薬剤師と、幅広い登壇者が集まった本イベント。薬剤師にとって踏み込みにくい生と性について総合的に考える、ひとつのきっかけになったようでした。セミナー終了後も、登壇者に質問をしたり、展示ブースに足を運んだりする参加者が。熱気の冷めやらぬなか、約3時間半のイベントが閉幕しました。

展示会ブースコーナーの様子

女性ならではの悩みをサポートするさまざまな商品を展開する企業様にご協力いただき、ミニブースコーナーを設置しました
 

<展示ブース出展企業> 株式会社リクルートライフスタイル / シミックヘルスケア株式会社 / 一般社団法人日本家族計画協会 / REDAS株式会社 / ゼリア新薬工業株式会社

当日の参加者へご協力企業から提供いただいた商品サンプルやリーフレットをお土産セットとしてお配りしました


<お土産ご協力企業> ロート製薬株式会社/一般社団法人日本家族計画協会/REDAS株式会社/ゼリア新薬工業株式会社/オカモト株式会社/株式会社アイセイ薬局/バイエル薬品株式会社/大塚製薬株式会社/NPO法人Fine

参加者の声(開催後アンケートより抜粋)

●不妊治療に悩む方が多いことは知っていましたが、薬剤師としての具体的なサポートについての知識を深めることができました
●妊活や不妊についてもっとオープンにできる薬局づくりをしていきたいと感じました。
●不妊治療中のため、そこに関するお話にはすごく共感したし、こういう話がもっと一般に広まる事を望みます。その一端を薬剤師として担う事が出来ればと思いました。
●とても参考になりました。特に男性も妊活に協力的になることの重要性を強く感じました。
●今までなんとなく関係なさそうという感覚で、知ろうとしてこなかった女性の健康について、初めて正面から向かって勉強することが出来ました。

<イベント企画メンバーからのメッセージ>

本イベントは、「患者や地域住民の方とのコミュニケーションをより活性化させたい」と思う薬剤師の皆さまの応援プロジェクトとして、女性が中心となって企画を行い、初開催いたしました。当日は41名の方にご参加いただき、多くの医療関係者のみなさまと、新たな発見や横断的な学びが共有できたと実感しています。 “薬剤師コミュニケーション応援プロジェクト”は、今後も切り口を変えながら継続していきたいと思います
 

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