【在宅現場の『コレってどうする?!』/ 福島 梨沙】
このシリーズでは、初めて在宅の患者さんを担当する方や、日頃の在宅訪問に不安を感じている方へ、明日から役立つコツを実例をもとにお伝えしていきます。
「あれ、最近食事が減っているな?」
「お昼の飲み忘れが増えたけど、食事のタイミングが変わったのかな?」
在宅訪問していると、患者さんの食事の変化や問題に気づくこともありますよね。
今回のコラムでは、実際に栄養介入をして栄養剤の処方提案に至った事例をご紹介します。
(前回の記事はこちら→vol.18 ポリファーマシーを解決!~患者さんの暮らしにあった減薬提案事例~ )
●在宅患者さんは低栄養になりやすい
在宅現場で「フレイル」という言葉を耳にするかもしれません。
「フレイル」は健康な状態と要介護状態の間に位置した状態のことをいい、早期に発見、介入することが大切とされています。フレイルの進行を防いだり、寝たきりにならないように、ケアしていくのも在宅薬剤師の役目です。
加齢と共に心身の活力(運動機能や認知機能)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援ににより、生活昨日の維持向上が可能な状態
在宅では、
「コロナに罹患して、自宅療養中に栄養が取れておらず、体重が減少してしまった。」
「入れ歯が合わずに食事が思うように取れなくて、食事が取れていない。」
など、栄養不足や口腔機能の低下による低栄養が原因でフレイルが進行してしまうケースもあります。
*低栄養の部分では、経口栄養補助剤を中心に薬剤師が関わることができます。コラムの後半に事例を用いてご紹介します。
フレイルは改善できる
前述したように、フレイルは「可逆的」であることが特徴です。つまり改善できるということです。
では、フレイルの在宅患者さんにどのようなアプローチをしたら良いでしょうか。
□食事を確認する
どんなものを食べている?1日何回食べている?
カロリー、タンパク質、ビタミンは十分摂取できている?
□栄養状態のスクリーニング
簡易栄養状態評価表(MNA®- SF)に基づいた質問に回答することで、患者の栄養状態を3段階(14点満点)で評価することができます。評価表の質問に従い、体重減少や食欲不振があるかなど、薬剤師でも聞き取ることができます。気になる患者さんがいたら、お伺いしてみましょう。
食事の改善が難しい、食べられない時は・・・経口栄養補助剤などを在宅チームに提案してみましょう。
食事のことはヘルパーさんやケアマネさん、筋力や歩行に関しては訪問リハビリさん、体重や身体的なことは訪問看護師さんがよく把握しています。経口栄養補助剤が必要かな?と思ったら他職種と意見交換をしてから、先生に提案するとよりスムーズですよ!
●事例紹介
●慢性心不全、脳梗塞後遺症 独居・80歳代 男性
妻に先立たれ10年ほど一人暮らし。身の回りのことは自分でできるが、少々頑固な性格。
在宅診療と訪問薬局、訪問看護は介入して2年ほど。肺炎での入院エピソードはあったが、安定して自宅で過ごせていた。
食事は、自分で近くのスーパーに行くか、ヘルパーさんに買い物補助をお願いして自炊をしていた。お魚が好きでよくキッチンで焼いて食べていた。お昼はおかずのみの配食サービスを利用し、余った時は冷蔵庫に保管して自分のペースで食べている。
管理方法:一包化(カレンダー管理)
服薬介助:服薬忘れの際にヘルパー声がけ
【処方内容】
ファモチジン錠20mg 1錠
ワーファリン錠1mg 3錠
フロセミド錠20mg 1錠
分1 朝食後
ケトプロフェンテープ20mg
1日1回 両側の足に貼付
フレイル・栄養状態の経過
【栄養介入のきっかけ】
・お昼前に訪問するといつもはキッチンに立って何かを作っているが、その姿が最近みられなくなっていた。自力での買い物が難しくなり、調理の気力も低下している様子だった。
・配食サービスのおかずも、冷蔵庫に溜まり気味。食事量の低下を感じた。
【患者さんとの会話】
「最近食べれてないですか?」と話を聞くと「暑くて、食欲がでない。」とのこと(8月ごろのお話です)。暑さで外に買い物に出れず、自分の食べたいものを買いに行けないから、料理をする気にもならない。また、「疲れやすく、元気もでない。」と疲労感もあるため、負のスパイラル状態。 配食も美味しくないから増やしたくないとこだわりが強く、追加の生活支援については否定的・・・。