少子高齢化が高い割合で推移している山口県。全国的に薬剤師の高齢化や薬剤師不足が課題となるなか、人口当たりの薬局数は全国でトップクラスという強みもあり、地域住民にとっては、薬局にアクセスしやすいことがメリットとなっています。そのような中、今年度からスタートさせた山口県独自の「健康エキスパート薬剤師制度」は、健康サポート薬局の研修者を活用すべく生まれたといいます。山口県薬剤師会会長の吉田力久氏に、独自の取り組みや薬剤師教育についてお話を伺いました。
人口当たりの薬局数の割合は高いが
薬剤師の高齢化が懸念される
―山口県内の薬局、薬剤師をとりまく環境や特色について教えてください。
山口県は、人口当たりの薬局数が全国で非常に高い位置にあります。逆にいうと、1薬局あたりの薬剤師数が少なく、小規模な薬局が多くなっています。そのため、在宅訪問などの業務数が増えると、規模の小ささゆえに対応が難しくなっているのが現状です。そんな状況下ではありますが、薬剤師、薬局の薬剤師会への組織率は非常に高い割合で推移しています。山口県内には医薬品のもととなる原薬メーカーが多く存在し、全国でも1、2位を争う生産量です。原薬メーカー、卸業者、行政も併せると、県内に3,433名の薬剤師がいます。そのうち、薬局・医療施設に従事する薬剤師は2,834名で、この中の2,638名が山口県薬剤師会の会員となっています。薬局に関しては、県内に760薬局あるうちの742薬局が薬剤師会の会員となっています(2021年8月末時点)。
小規模な薬局が多くそれぞれでできることに限りがあるため、会として、例えば、調剤報酬改定の注意点やスムーズな算定方法など、適宜各支部を通じて細かく情報を発信し、さまざまな形でバックアップして参りました。会員の皆さまも、所属するメリットを感じて、会の意向を汲んでさまざまな活動をしていただけているのだと思います。
―山口県が抱える課題にはどのようなものがありますか。
県内の人口は昭和60年の160万人をピークに令和2年までに134万3,000人にまで減少しています。人口比率だけではなく、少子高齢化は全国のなかでも高い水準で推移しています。薬局の薬剤師も高齢化が進んでおり、今後、高齢の薬剤師が引退する際の事業継承が懸念事項です。また、三方を海に囲まれている山口県では、日本海側に人口が少なく、それに伴って、薬局や医療機関も少ない状況です。当然、若い方も日本海側は少なく、薬剤師含め働き手が減少しています。
2018年には念願の薬学部創設
薬剤師不足解消に期待を寄せる
―薬剤師不足が課題とのことですが、課題をクリアにするためにどのようなことに取り組んできましたか。
2018年に山陽小野田市立山口東京理科大学に薬学部が設置されました。それまでは、県内に薬学部はなく、かつ、県外で薬学部に進学した方が戻ってくることが少ない状況でした。山口東京理科大学は、もともと山陽小野田市にあった東京理科大学工学部を公立化し、薬学部を創設したもので薬剤師不足解消の一助になるのではないかと期待しています。創設から4年、第一期生の卒業までにまだ2年程ありますが、定員120名のうち3割程度が県内からの学生です。県外から入学した学生に対しても、山口県に定着していただけるよう、大学や県(行政)と連携していく予定です。
県内に薬学部ができるメリットには、薬剤師不足の解消だけではなく県全体の経済的活性化にも繋がることが見込まれています。先ほども申しました通り、県内には原薬メーカーは多いものの、実は製薬工場は少ないのです。背景には、メーカーに勤務する薬剤師が確保できないという点がありましたが、薬学部ができたことでそれらも解消され、企業誘致にも優位に働くのではないかと思われます。