【Pick up1】
四方山話
『伝統』という言葉があります。辞書を引いてみると“昔から受け継がれてきた有形・無形のもの。風習・しきたり・傾向・様式”などと書いています。いわゆる『脈々と受け告げられてきた何か』という事なのでしょう。
新参者が何か納得できない事があったとしても、「これは伝統だから」と説明されるとあまり良い印象を受けないかもしれません。「古い!今の時代に合わない!」とさえ思ってしまうかもしれません。実際わたしもそう思いそうです。
新しい風が吹くこと自体は悪い事ではありません。さらに素晴らしいものへと昇華していくキッカケになる事もままあります。しかし一方で、「伝統」として受け継がれてきたのには一定の理由があるのだとも思います。それが長く続けられてきたのは事実であって、その本質を理解したうえで意見できなければ、本当の意味での改革に繋がらないのではないでしょうか。
何が言いたいかというと、今こそ「温故知新」という言葉を見直す必要があるのではないか、という事です。
コロナ禍で一気にデジタル化が進んで「素晴らしい!イケイケ!」の勢いを感じますが、何か大事なものを見落としているような気がしてなりません。例えば。学校教育DXでタブレット授業が一気に進みました。それはそれで授業の進み具合を確認したり重い教科書を運ぶ必要が薄れたりしてメリットも多くありますが、相対的に紙の本に触れる機会は減ります。辞書を引く際の紙の匂いだったり、教科書をめくる時のケガだったり、はたまた偉人への落書きだったり…。なんだかそういうものって横一列な日本の教育の中では、大切な“何か”なような気がするのです。他の業界、我々の業界でも同じような部分が今後かならず出てくるように(私は)思っています。
人の本質はそうそう変わるものではありません。人類200万年の歴史の中では、今の出来事は一瞬とも言えます。DXなど技術革新の良いところは取り入れつつ、受け継がれてきた意味を理解して改革を進める事が大切なのではないでしょうか。