安川 孝志 氏 (厚生労働省保険局医療課薬剤管理官)
令和5年度は特例的に診療報酬改定が行われましたが、その背景には未だ解消されない後発医薬品を中心にした流通問題、オンライン資格確認の普及促進があるそうです。また、今後は医療DXが進む中で「情報を活用する薬剤師」が地域医療を支える上で大事なポイントになります。
「情報活用」ってどうすればいいの?
私たちは何をしなければいけないの?
そんな疑問を、厚生労働省で調剤報酬など薬剤師業務を医療保険制度の立場から担当されている安川さんに聞いてきました。
薬剤師が得られる情報が増える中で、どう活用していくのか
―今回の令和5年度診療報酬改定の背景やポイントを教えてください。
安川 令和5年度改定は通常の診療報酬の改定とは異なり、薬価の中間年改定に合わせて対応することが予算編成の過程で決まりました。その際に直面している課題に関して、特例的に令和5年4月から12月までの9ヵ月間行う措置となっています。
薬局に関係するポイントは2つあります。1つはオンライン資格確認(以下、オン資)、あとは後発医薬品を中心とした医薬品の安定供給への対応ということです。この2つは昨今の動きの中できちんと対応すべき事項とされたものです。
―それぞれについて解説していただけますか。
安川 オン資は、まさに医療DXを進める上で基本となるものであり、本年4月より医療機関・薬局においては導入が義務化されました。このオン資は元々、医療保険の資格確認の仕組みですが、あわせて薬剤情報や特定健診情報などの患者情報が閲覧可能になり、情報活用ツールの基盤と言えます。薬剤師にとっては、それらから得られる情報をどう活用するかが課題になっていると思います。診療報酬上は、令和4年度診療報酬改定時に評価された後、昨年10月に新たな評価となりましたが、今回の特例的措置でオン資の導入・普及をさらに進めようとするものです。
医薬品の安定供給への対応については、薬局の現場では出荷調整などへの対応が大変な状況にあると思いますが、地域の医療機関とのやり取りや薬局間での調整など、その解決に向けた取り組みを後押ししますという趣旨で、調剤報酬の点数として評価しました。今回の報酬の評価により安定供給の課題が解決するものではないですが、薬局の取組を促すため、4月からの9ヵ月間の時限的な対応として、この間に地域での取組をしっかり進めてもらいたいという趣旨で設けたものです。