コラム記事

認知症患者さんの在宅訪問医療~一人ひとりにあったケアポイント(パーキンソン病患者さん編)~

【在宅現場の『コレってどうする?!』/ 福島 梨沙】



このシリーズでは、初めて在宅の患者さんを担当する方や、日頃の在宅訪問に不安を感じている方へ、明日から役立つコツを実例をもとにお伝えしていきます。

在宅の中でも必ずと言っていいほど直面する機会があるだろう認知症の患者さん。でも患者さんによって対応は十人十色。今回はvol.4の糖尿病患者さん編に次いで、パーキンソン病の患者さんの実例を紹介します!
(前回の記事はこちら→vol.5 失敗例から学ぶ!連休中の在宅対応を最小限に抑える先回り術 3選


●【実例紹介】 認知症×パーキンソン病×独居

在宅訪問となるまでの経緯

●Bさんの場合(認知症・パーキンソン病・独居 70歳代 女性)

Bさんは、60歳代でパーキンソン病に罹患し、長年病気と付き合っている。
夫は他界しており、現在は一軒家に一人暮らし。息子さんは二人おり、月1回程度訪問に来てくれる。キレイ好きで、ご自宅はいつも整理整頓されている。心配性で繊細なところがあり、パーキンソンの症状が出るとパニックになる時があるが、普段の生活はなんとか一人でできている。

夜間の足の痛みが強く、外来で受診したクリニックから頓用処方されたプレガバリンを自己調整して服薬していたが、認知症状の低下もあり自己調整ができず過量投与となり、状態悪化のため主治医である神経内科に入院となる。

入院前の状況は、神経内科(パーキンソン病)と内科の2箇所に通院しており、薬も一包化されておらず自己管理ができていない状況。パーキンソン病の薬は1日5回であり、15時の薬が飲めていなかった。

入院後経過は順調であり、自宅できちんと服薬できる体制を整えた上で退院させたいとの意向があり、ケアマネジャーから薬局の介入依頼があった。

退院前に、入院先での退院時カンファレンスが行われるため参加することとなった。


退院時カンファレンスは、医師、看護師、MSW(医療ソーシャルワーカー)、理学療法士などの病院のスタッフや在宅の担当医、訪問看護師、ケアマネジャーなど地域の関係機関が参加し、退院後のサービス内容について情報共有するために行われます。

退院時カンファレンスの内容

●参加者
Bさん、ご家族(ご長男さん)
病院のスタッフ:主治医、理学療法士、薬剤師、看護師、医療ソーシャルワーカー
在宅チーム:ケアマネージャー、訪問看護師、訪問薬剤師

本人の意向:いますぐ自宅に帰りたい。こんなに元気なのになんで帰してくれないの・・?薬だって毎日間違わずに飲めるから大丈夫。
家族の意向:そんなに家に帰りたいのだったら、退院させてあげたいと思うが、同居は難しいし、自宅に一人にするのは不安がある。前回入院の時も、薬がわからなくなり飲めずに状態が悪くなって入院しているので、いろんな人の手を借りて自宅で過ごせる体制を作れたらと思う。

【入院中の状況】
病棟ではカレンダーにセットしたものをご本人が管理して服薬を病棟看護師がチェックするという方法で間違えずに服薬できていた。
それによりパーキンソンの症状も緩和されつつあり、リハビリで毎日病院内を散歩したり、階段も自力歩行できている。自宅では、毎日お薬がきちんと服薬できれば退院も問題はなさそうである。

訪問薬剤師より提案:ご自宅では、24時間見守りは難しいため1日5回の服薬を4回に調整していただきたい。また頓用での薬の使用は、入院前の経緯から過量投与の可能性もあるため今後も行わない方針がいいだろう。

【退院後の方針】
病棟の薬剤師と主治医で服薬回数は調整してくださることとなり、頓用での薬は今後も行わない方針となった。その他、パーキンソンによる転倒対策や生活の見守りについてもケアマネージャーさん、医療ソーシャルーワーカーさんを中心に話し合いを行い、週3回のデイサービス、週1回のリハビリ、週1回の訪問看護さんに加えて、ヘルパーさんの買い物介助をサービスに盛り込むことが話し合われた。


【退院時カンファレンスに参加し見えてきた課題】
本人の認知症は軽度であるが、自宅では細かい薬の変更や頓用での管理は難しい様子。今後、主治医である神経内科の受診と自宅近くの外来クリニックの2つの病院との連携や薬の調整が必要であると考えた。
退院後は、外来ではなく往診クリニックに切り替えることをケアマネージャーさん、訪問看護さんと共に家族に提案。

在宅訪問へ移行後の変化

【退院日】
退院時カンファレンスでの提案から1日5回の薬を4回に調整してもらい、朝、昼、夕、寝る前の4回の服薬時点に変更となった。退院時には往診クリニックの医師の訪問もあり、薬は基本的に1日4回の服薬時点内での調整で行うことと、頓用や自己判断での服薬は本人が混乱してしまう可能性があるため難しいことを共有。今後往診クリニックの処方も薬局にて預かり、まとめて一包化することした。退院時の薬は、カレンダーセットし様子を見ることとした。

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