コラム記事

[アスヤクLIFE研修コラボシリーズ]
〜薬剤師研修会の未来を考える〜
第1回 福岡県薬剤師会 原口亨会長 

原口 亨 先生(福岡県薬剤師会 会長、有限会社ファルマウニオン 代表取締役)
福岡大学薬学部卒業。福岡大学大学院薬学研究科修了。九州大学大学院修了(MBA)。病院勤務・薬局勤務を経て、平成9年12月薬局開局。

福岡県薬剤師会の原口亨会長は、早期にテレビ会議システムやオンラインシステムを取り入れるなどして、会議や研修を様々な人にオープンにすることに積極的に取り組んできました。また、福岡県では薬剤師会主催の研修を、年間150本以上実施して、非会員薬剤師の受講も受け入れるなど、積極的に薬剤師の資質向上に努めています。オンラインでの研修が急速に普及している今、原口氏に今後の研修会の在り方についてお話を伺いました。

研修会をオープンにすることで薬剤師の資質向上に努める

―現在、福岡県薬剤師会では積極的に研修会の情報をWEB等活用して発信しています。この取り組みの背景、狙いをお聞かせください。

私が会長に就任した3年程前からテレビ会議システムを取り入れて、サテライト(同時中継)方式で役員会などを実施していました。サテライト方式を取り入れた目的は、会議に出席している役員だけでなく、他の役員・委員等に会議の内容をオープンにすることで、議題に上がっていることを全員が共有し、本来の目的が伝わりやすいと思ったからです。薬剤師会の研修会を、会員限定ではなく、非会員にもオープンにしたいと考えているのは、これと同じ狙いです。

薬剤師会に入るメリットの一つとして、研修を受けられるというのはもちろんあると思います。ただ、今は研修だけをメリットとして訴求している時ではありません。非会員の薬剤師にも実際に研修に参加してもらい、自身で内容を評価した上で、入会してもらいたいという目的があります。

また、研修会をオープンにすることで、より多くの薬剤師に直接話を伝える機会ができます。我々の目的は、職能団体として薬剤師の資質向上と、社会に対するメリットを提供していくことですので、研修はあくまでも手段であると考えています。



―現在、福岡県薬剤師会でもオンライン研修を開催していますが、オンライン研修のメリットおよび課題についてお聞かせください

まず、遠方からの参加者は、オンライン研修になって参加しやすくなったというメリットがあります。移動に費やす時間や手間を大幅に削減でき、より多くの方が参加しやすくなりました。

デメリットとしては、参加する人のITリテラシーだと思っていました。システム操作が苦手という人が参加できなくなってしまうのではということを懸念していたわけです。苦手な人をフォローするために、コロナ対応をとった会場も用意するなど、必要な対策を講じていました。

しかし、実際にオンライン研修を開催してみると、みんなスマホを持っていますし、一度操作方法を把握すれば大抵の方は上手に扱うことができます。やってみればできるというケースがほとんどで、今では何の問題もなくオンラインで研修ができています。実際にオンライン研修に参加した、私より二回り年上の大学の先輩から「すごくいい!」と連絡があり、オンライン研修の操作や参加については、年齢を気にする必要もなかったのだと感じました。最初に考えていたデメリットは、実はデメリットではなかったと言えます。

ただ、一つ挙げるとすると、オンラインだと臨場感に欠ける部分がありますので、講演者の表情や声のトーンで、心に響くような研修というのは伝わりにくのかなと感じています。例えば、薬害の講演のように感情に訴えかける内容というのは、なかなか伝わりづらく難しいですね。また、ディスカッションについては参加者側も慣れていないので、まだ難しいなと感じるところもあります。ただこれについては、今後みなさん経験を重ねて慣れてくるでしょうから、いずれ問題なくなるだろうと思っています。

今後の研修はコンテンツの質やスピード感がより重要に

―コロナ禍において、今後、オンライン研修はますます進むと思われます。今後の研修の在り方はどのように考えていますか?

withコロナ、アフターコロナという言葉もできて、ニューノーマルの時代がはじまっています。オンライン研修を一度経験した人は、それも含めて研修を評価していくようになるので、コロナが終息した後もオンライン研修は残っていくと思います。



―会場とオンライン研修の使い分けについてはどう考えていますか?

感情に訴えかけるような内容ならば、リアルに伝えたほうが良いですし、実技を伴う研修などは、今後も対面で行うことになるでしょう。研修の目的や内容によって、上手く使い分けていく必要があると思います。

オンライン研修の普及で、受講人数の制限がなくなると、人気の研修に人が集中するようになります。そのため、今後はますますコンテンツの質が問われることになるでしょう。また、その結果を見ることで、いま求められていることをリアルタイムで知ることが可能になります。

いま必要な研修をすぐに実施するには、企画や告知にもスピード感が求められます。一年計画で考えるなどしていては追いつきません。そういったスピード感が求められる研修については、WEBやオンラインの活用が必須だと考えています。

ちなみに、来年の日本薬剤師会の研修は、会場とオンラインのハイブリッドで実施することになっています。より多くの方が参加されることを期待しています。

研修情報を一元的に得られるポータルサイトへ


アスヤクLIFE研修は、全国の薬剤師の研修一覧を集約するサイトとして11月にオープンしました。ご感想をお聞かせください。

研修を受ける薬剤師さんは、自分の興味ある研修を受けたいと思っているのでしょうが、どんな種類の研修があるかを知る方法があまりありません。薬剤師の多くは自分の所属する薬剤師会からメールやFAX、会報誌などで研修会の情報を得るため、エリア限定の情報になってしまいがちです。企業や学会が行なっている有料の研修なども含め、幅広い選択肢がある中で、自分の興味ある研修を知り、どれを受講するかなどの意思決定をするのは薬剤師さんであるべきだと考えています。

そういった研修情報を一元的に得られるポータルサイトになってくれればとても便利だと思います。オンラインを利用することで、エリアを超えて、自分が興味のある研修に参加できるようになる。これからももっと多くの人が賛同して、幅広い研修情報が提供されることを期待しています。



ページトップへ戻る