少し遅いですが、皆さん、あけましておめでとうございます。
薬トレでは今年も薬局に関わる様々な動向について、できるだけわかりやすく解説していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
さて、新年最初の記事は「令和7年度薬価改定」についてです。
令和7年度は毎年薬価改定における中間年改定に該当します。
昨年末に向けて、中間年改定を廃止(元通り2年に1回の薬価改定に戻す)すべきだという声が大きくなり、国会でも議論が行われてきましたが、結果としては令和7年度も薬価改定が実施されることになりました。
2024年12月25日に開催された中医協総会では「令和7年度薬価改定の骨子(案)」が公開され、その概要が明らかになりました。
今回は令和7年度薬価改定の概要について、毎年薬価改定についての復習も兼ねて徹底解説!したいと思います。
令和7年度も薬価改定が実施されることになりました。過去の中間年改定は前年9月取引分についての薬価調査で得られた平均乖離率の0.625倍を対象範囲として実施されてきましたが、平均乖離率が過去最低の5.2%だったことを踏まえてか、今回は品目ごとに対象範囲を変えて実施されることになりました。算定ルールについても変化があり、過去の中間年改定では実施されていなかった「新薬創出等加算の累積加算分控除」が実施されます。また、最低薬価についての見直しが行われることも決定しており、ここ数年の問題となっている医薬品の供給不安についてどのような影響を与えるか注目されます。
1、薬価改定の仕組みと毎年薬価改定(中間年改定)
薬価は定期的に市場実勢価格に併せた見直しが行われます。薬価調査により明らかになった市場実勢価格に流通コスト等を踏まえた調整幅(2%)を加えて計算されます。元々は2年に1度、診療報酬改定に併せて実施されていた薬価改定ですが、令和3年度からは毎年実施されています。従来の薬価改定(本改定)に対して、毎年薬価改定を行うようになって追加された薬価改定を中間年改定と呼びます。令和7年度薬価改定は中間年改定にあたります。
まずは薬価改定の仕組みについて簡単に復習してみたいと思います。
医療保険が適用される医薬品は薬価が定められていますが、薬価は定期的に見直しを受けます。
これが薬価改定です。
薬価改定は市場実勢価格に基づいて行われます。
市場実勢価格というのは市場で実際に取引された価格を指します。
つまりは薬局や医療機関の納入価のことです。
市場実勢価格はその年の9月分の取引を元に調査されます。
いわゆる薬価調査です。
この薬価調査を正確なものとするために行われるのが妥結率の調査(平成30年度 診療報酬改定にあわせて開始)です。
薬価改定により薬価は市場実勢価格を踏まえた価格に見直されますが、改定後の薬価=市場実勢価格というわけではありません。
薬価を市場実勢価格にまで下げてしまうと、医薬品の流通管理に必要なコスト(配送・保管・廃棄等)が無視されてしまうため、現在の制度では改定前薬価の2%が保たれるように「調整幅」が設定されており、改定後の薬価は以下の計算式で算出されます。
(市場実勢価格加重平均値調整幅方式)
改定後の薬価(新薬価)=市場実勢価格(税抜) + 消費税 + 調整幅(改定前薬価の2%)
※令和3年度薬価改定では「新型コロナウイルス感染症特例」として、調整幅とは別に一定幅(0.8%)の加算あり
薬価改定は令和2年度(2020年度)までは2年に一度(令和元年度のような消費税増税時 等を除く)実施されてきましたが、令和3年度(2021年度)からは毎年実施されています。
これは高額薬価の薬剤が登場したことにより国民皆保険制度の維持が困難になるという考えの中で、市場実勢価格を速やかに薬価に反映すべきという考えから生まれたものです。
2016年12月に当時の官房長官、厚生労働大臣、財務大臣、経済財政担当大臣の合意(4大臣合意)のもと「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」が決定され、それに基づき毎年薬価改定が実施されるようになりました。
2年に一度のタイミング(診療報酬改定時)で実施される従来の薬価改定(本改定)に対して、毎年薬価改定により追加されたものを中間年改定と呼びます。
令和7年度の薬価改定は中間年改定にあたり、3回目の中間年改定になります。
2、乖離率と薬価改定の対象範囲
過去の中間年改定では薬価調査で明らかになった平均乖離率を元に薬価改定の対象範囲を決定してきました。令和3年度・令和5年度改定では乖離率が平均乖離率の0.625倍の数字を超えた場合が対象とされました。令和6年度に実施された薬価調査では平均乖離率が5.2%と例年より低くなっており、どのように対象を決定するのか注目されましたが、医薬品の種類によって対象となる乖離率の範囲を変える形に決定しています。
通常の薬価改定では全ての医薬品が薬価改定の対象となりますが、中間年改定の対象となるのは「価格乖離の大きな品目」とされています。