11月末は「妥結率等に係る報告書」の提出期限です。皆さんはもう届出を完了しましたか?
全ての保険薬局は、毎年10月1日から11月末日までに同年4月1日から9月30日までの期間における医療用医薬品の取引価格の妥結率並びに医療用医薬品の取引に係る状況について地方厚生(支)局長に報告する必要があります。
この届出を行わない場合は翌年6月1日から翌々年5月末日までの調剤基本料が100分の50まで減算されることになってしまいます。
ただ、今年度から「妥結率等に係る報告書」の内容は大きく変更されています。
報告を行った方は驚いたのではないでしょうか。
この変更は「流通改善ガイドライン」の改訂によるものです。
「流通改善」というと製薬企業や医薬品卸売業者を対象としたもので薬局には関係ないものと思うかもしれませんが、医薬品における流通とは薬局や医療機関に納品されるまでを指し、ガイドラインの中では薬局や医療機関に関する記載も多く含まれています。
今回はこの「妥結率等に係る報告書」と「流通改善ガイドライン」について徹底解説!したいと思います。
10月1日から11月30日に「医療用医薬品の取引価格の妥結率並びに医療用医薬品の取引に係る状況について」の報告を行う必要がありますが、今年度から「妥結率等に係る報告書」の内容が大きく変更されました。「妥結率等に係る報告書」は薬価調査時点での妥結完了を促すことで、取引価格を正確に薬価に反映させることを目的に作られました。ですが昨今の医薬品供給不安を通じて、過度な薬価引き下げが問題となる中で、医療機関や薬局と医薬品卸売業者の取引にも焦点が当てられた結果、ガイドラインを通じた取引慣行の見直しに実効性を持たせる役割を担うようになりつつあります。
1、調剤基本料における未妥結減算とは?
「妥結率等に係る報告書」は平成26年度診療報酬から設定されています。妥結率が低い(50%以下)場合や報告書を提出しない場合は調剤基本料の減算の対象となり、調剤基本料が1/2になってしまいます。妥結率とは取引を行っている医薬品のうち、取引価格が決まっているものの割合です。
妥結率が低い保険薬局の適正化は平成26年度診療報酬改定(2014年度)から設定された項目で、令和6年度診療報酬改定における調剤基本料では注4に規定されています。
第 91 調剤基本料の注4に規定する保険薬局
特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(通知)(令和6年3月5日 保医発0305第6号)
1次のいずれかに該当する保険薬局は「注4」の規定により、調剤基本料を100分の50に減算する。
(1)当該保険薬局における医療用医薬品の取引価格の妥結率が5割以下であること。
(2)当該保険薬局における医療用医薬品の取引価格の妥結率、医療用医薬品の取引に係る状況及び流通改善に関する取組状況について、地方厚生(支)局長に報告していない保険薬局であること。
(3)薬剤師のかかりつけ機能に係る基本的な業務を1年間実施していない保険薬局であること。ただし、処方箋の受付回数が1月に600回以下の保険薬局である場合を除く。
- ・調剤基本料1:45点 → 23点
- ・調剤基本料2:29点 → 15点
- ・調剤基本料3のイ:24点 → 12点
- ・調剤基本料3のロ:19点 → 10点
- ・調剤基本料3のハ:35点 → 18点
- ・特別調剤基本料A:5点 → 3点
- ・特別調剤基本料B:3点 → 3点
11 次に掲げる調剤基本料に規定する加算及び減算について、これらのうち複数に該当する場合は、最初に所定点数に「注3」(100 分の 80)及び「注4」(100 分の 50)のうち該当するものを乗じ、小数点以下第一位を四捨五入する。次に「注5」(地域支援体制加算)、「注6」(連携強化加算)、「注7」(後発医薬品調剤体制加算)、「注8」(後発医薬品減算)、「注12」(在宅薬学総合体制加算)及び「注13」(医療DX推進体制整備加算)のうち該当するもの(特別調剤基本料Aを算定する保険薬局においては、「注5」、「注7」及び「注12」の所定点数に100分の10を乗じ、それぞれ小数点以下第一位を四捨五入する。)の加算等を行う。ただし、当該点数が3点未満になる場合は、3点を算定する。
診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)(令和6年3月5日 保医発0305第4号) 別添3(調剤点数表)(令和6年10月1日から適用)
令和6年度診療報酬改定において「妥結率等に係る報告書」の正式名称は「医療用医薬品の取引価格の妥結率、医療用医薬品の取引に係る状況及び流通改善に関する取組状況についての報告書」となり、内容が大きく変更されていますが、このことについては後半にまとめたいと思います。
この報告書の基本となる部分は「医療用医薬品の取引価格の妥結率」(以降、妥結率と省略します)に関する報告で、そこは変更ありません。妥結率というのは以下の計算式で定義されています。
要は取引を行っている医薬品のうち、取引価格が決まっているものの割合です。
医薬品の取引に関わっていない方にとっては、購入しているのに取引価格が決まっていないことは驚きかもしれませんが、医療用医薬品は治療の必要性に応じて購入が決定するため、予めの価格交渉を行うことが難しく、購入後に価格交渉を行うことは珍しくありません。
ただし、未妥結減算の対象が妥結率5割以下の薬局(もしくは報告を行なわない薬局)になっていることからもわかるように、9月末までに取引価格を決定することが推奨されています。
2、妥結率等に係る報告書の経緯
薬価改定は薬局や医療機関の購入価格を元に行われます。そのため、薬価調査の時点で取引価格が決定(妥結)していないと、正確な薬価改定を行うことができません。一部のチェーン薬局や医療法人で妥結が進まないケースがあることを踏まえ、平成26年度診療報酬改定で「妥結率等に係る報告書」の届出ルールが追加されました。
妥結率の問題について話す上で避けられないのが薬価改定と医薬品価格調査です。
みなさんは薬価改定のルールについてご存知ですか?
もしご存知でなければ第23回のコラム(迫る23年度薬価改定〜医薬品安定供給への影響は?)を読んでいただければと思いますが、簡単に紹介します。