2024年10月3日、厚生労働省は健康サポート薬局に認定制度を導入することを示し、厚生科学審議会の医薬品医療機器制度部会で了承されました。「健康サポート薬局」が法令に規定されることで、名称独占となることも予定されています。
健康サポート薬局の認定制については「薬局・薬剤師の機能強化に関する検討会」で地域医療における薬局の機能や役割についての見直しについて議論される中で生まれたものです。検討会では健康サポート薬局だけでなく、認定薬局についても議論され、特に健康サポート薬局と地域連携薬局については、それぞれの位置付けを明確にすることについても検討されました。
健康サポート薬局は、生活習慣病の予防や健康相談の場として、地域住民の健康増進に貢献する薬局です。一方、地域連携薬局は、医療機関や介護施設との連携を行う薬局です。これらの薬局は、地域における医療体制の中核を形成することが期待されていますが、制度・運営面での課題が残されています。
今回は、「薬局・薬剤師の機能強化に関する検討会」での議論のまとめとして公開された「地域における薬局・薬剤師のあり方」を解説し、薬局と薬剤師が今後どのような役割を果たしていくべきかを考察してみたいと思います。
患者のための薬局ビジョンでは対物業務から対人業務への移行が示され、医療機関等との地域連携が求められています。その中で健康サポート薬局や認定薬局が生まれましたが、それぞれの機能はまだ明確になっていない状態です。今後、薬局が地域に求められる機能や役割を発揮するために、それぞれの役割や機能を明確化し、相互連携を深めていくことが重要になります。
1、地域における薬局・薬剤師のあり方
患者のための薬局ビジョンが公開され、かかりつけ薬剤師としての役割を発揮するために、対物業務から対人業務への移行が進められています。対人業務への移行が進んだことで、今後は地域全体で、健康サポートや地域連携、高度薬学管理機能を発揮していくことが求められています。その役割を担う薬局として、健康サポート薬局や認定薬局が存在しますが、その役割や機能はまだ明確にはなっていません。
2015年10月に厚生労働省が公開した「患者のための薬局ビジョン」により、かかりつけ薬剤師としての役割の発揮に向けて、薬剤師が対物業務から対人業務に移行していくことが示されました。
それから10年弱を経て、対物業務から対人業務への移行が進み、地域医療における薬局の役割は、これまでの「医薬品提供の場」から、「適切な処方の確認」、「在宅を含めた薬学管理」、「調剤後の服薬フォロー」といったより患者中心の業務に変化しつつあります。また、それに加えて地域住民の健康管理や予防医療の提供、医療機関との連携強化といった分野も進化し続けています。
このような流れの中で2016年4月には健康サポート薬局、2021年8月には認定薬局(地域連携薬局、専門医療機関連携薬局)が登場しています。
それぞれが有する機能を簡単にまとめると以下のようになります。
- 健康サポート薬局:かかりつけ薬剤師・薬局機能 + 健康サポート機能
- 地域連携薬局:かかりつけ薬剤師・薬局機能
- 専門医療機関連携薬局:高度薬学管理機能(現在は「がん」のみ)
このような中、「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」は以下の内容を中心に、薬局・薬剤師に関する諸課題について2023年12月から検討を行っています。
- ・夜間・休日及び離島・へき地での外来・在宅医療における薬剤提供のあり方
- ・認定薬局、健康サポート薬局など薬局の機能の在り方
認定薬局や健康サポート薬局については、議論の中で、認知が進んでおらず、利用者のメリットが不明確、薬局側にとっても名称を使用(表示)できる以外のインセンティブがないことから、十分に活用されていない状況にあると指摘されています。
特に健康サポート薬局と地域連携薬局については、在宅対応を含むかかりつけ薬剤師・薬局としての機能が基準の一部とされている点など共通している部分があり、地域の中で位置付けがわかりにくいということも指摘されています。
地域において求められる薬剤師サービスは以下のように多岐に渡っています。
- ・医薬品の供給拠点
- ・在宅対応
- ・夜間/休日の対応
- ・健康サポート(セルフケア・セルフメディケーションの啓発・推進)
- ・新興感染症/災害等の有事対応
- ・医薬品関連情報の発信
- ・薬事衛生 等
これらを全ての薬剤師が個別に対応することは困難であるため、個々の薬局がかかりつけ薬剤師・薬局としての役割を果たすことはもちろん、地域の薬局が連携して対応する仕組みが重要であると指摘されています。
2、地域における薬局の役割・機能
地域の薬局に求められる機能は多岐にわたります。これらの機能・役割について個別での対応が可能だとしても、地域全ての対応について一つの薬局がカバーするのは不可能です。検討会では、薬局単位で確保すべき機能と、地域全体で確保すべき機能の分類が行われています。地域で確保すべき機能のうち、どんな機能を有するかが今後の薬局の個性に繋がり、それを成長させていくことが認定薬局につながっていくことになりそうです。
薬局は地域の医療・健康における公共的な活動方針を理解の上、地域において薬剤師の専門性を発揮することで医療提供施設としての役割を果たすことが求められています。
ですが、医療資源には限りがあり、すべての機能を個々の薬局が確保するのは困難な場合もあります。
そういった場合は薬局間の連携等により地域・拠点で必要な機能を確保していくことが必要であり、検討会では、個々の薬局に必要な機能と地域・拠点で確保すべき機能の整理が行われました。