今回は令和6年度介護報酬改定についてまとめます。
2024年度改定は医療・介護・障害福祉サービスのトリプル改定になっており、介護報酬の医療関連部分においては、診療報酬との足並みをそろえた改定になることが予想されています。
診療報酬改定の施行が4月から6月に後ろ倒しされたのと同様に、介護報酬のうち、居宅療養管理指導、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションについては6月1日に施行されます。(それ以外は4月1日に施行されました)
令和6年度診療報酬改定は在宅に関する改定が注目されましたが、薬局の在宅について主要な部分を担う介護報酬はどのような形に変化するのか、徹底解説したいと思います。
令和6年度介護報酬改定で薬局が関連する見直しは4つで、いずれも診療報酬に合わせる形の見直しです。一つはオンラインでの居宅療養管理指導の評価で調剤報酬における在宅患者オンライン薬剤管理指導料と同等の評価に見直されます。次に麻薬持続注射(医療用麻薬持続注射療法加算)と中心静脈栄養法(在宅中心静脈栄養法加算)について、これも調剤報酬に合わせる形で評価が新設されます。4つめは居宅療養管理指導の算定回数の上限が月8回となる対象に「注射による麻薬の投与を受けている者」が追加されます。これら4つの変更により、在宅における薬学管理をさらに推進するような改定になっています。
1、基本報酬の見直し
令和6年度介護報酬改定では居宅療養管理指導費の基本報酬について見直しが行われ、単一建物居住者の人数や職種に関わらず、すべてのパターンが1単位プラスになっています。情報通信機器を用いて行う場合については、令和4年度の調剤報酬改定における在宅患者オンライン薬剤管理指導料の算定要件に合わせる形で変更が行われます。
まずは改定後の居宅療養管理指導費(薬局の薬剤師が行う場合)の単位数の見直しについてです。
要支援を対象とする介護予防居宅療養管理指導費(薬局の薬剤師が行う場合)も同じ単位数になります。
- ・単一建物居住者が1人:518単位(改定前 517単位)
- ・単一建物居住者が2〜9人:379単位(改定前 378単位)
- ・単一建物居住者が10人以上:342単位(改定前 341単位)
- ・情報通信機器を用いて行う場合:46単位(改定前 45単位)
全てプラス1単位となっています。
これは薬局薬剤師が行う場合に限らず、全職種が行うものについて、同様の改定となっています。
令和6年度介護報酬改定の改定率は全体で+1.59%(国費432億円)となっており、そのうち介護職員の処遇改善分(+0.98%)を除くと+0.61%の改定率になります。
それがプラス1単位の形で反映されたということですね。
情報通信機器を用いて行う場合の算定要件 見直し
「薬局の薬剤師が情報通信機器を用いて行う場合」の居宅療養管理指導費については単位数がプラスされただけでなく、算定要件についての見直しが行われます。
診療報酬では「在宅患者オンライン薬剤管理指導料」に相当する内容になりますが、在宅患者オンライン薬剤管理指導料については令和4年度診療報酬改定で算定要件の見直しが先立って行われていました。それぞれの内容を比較してみます。
令和4年度診療報酬改定における在宅患者オンライン薬剤管理指導料の算定要件見直し
- 「在宅時医学総合管理料に規定する訪問診療の実施により処方箋が交付された患者であって、在宅患者訪問薬剤管理指導料が月1回算定されているものに対して」
- →「訪問薬剤管理指導を行っている保険薬局において、在宅での療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して」(変更)
- 「月1回に限り算定する」
- →「月4回に限り算定する」(変更)
- 「オンライン服薬指導は、当該保険薬局内において行うこと。」
- →(削除)
- 「患者の同意を得た上で、対面による服薬指導とオンライン服薬指導を組み合わせた服薬指導計画を作成し、当該計画に基づきオンライン服薬指導を実施すること。」
- →(削除)
- 「オンライン服薬指導を行う保険薬剤師は、原則として同一の者であること。ただし、次のア及びイをいずれも満たしている場合に限り、やむを得ない事由により同一の保険薬剤師が対応できないときに当該薬局に勤務する他の保険薬剤師がオンライン服薬指導を行っても差し支えない。
ア 当該薬局に勤務する他の保険薬剤師(あらかじめ対面による服薬指導を実施したことがある2名までの保険薬剤師に限る。)の氏名を服薬指導計画に記載していること。
イ 当該他の保険薬剤師がオンライン服薬指導を行うことについてあらかじめ患者の同意を得ていること。」 - →(削除)
令和6年度介護報酬改定における「薬局の薬剤師が情報通信機器を用いて行う場合」の居宅療養管理指導費の算定要件見直し
- 「医科診療報酬点数表の区分番号C00二に掲げる在宅時医学総合管理料に規定する訪問診療の実施により処方箋が交付された利用者であって、居宅療養管理指導費が月1回算定されているもの」
- →「在宅の利用者であって通院が困難なもの」(変更)
- 「月1回に限り算定する」
- →「1月に4回に限り算定する」(変更)
- 「情報通信機器を用いた服薬指導は、当該薬局内において行うこと。」
- →(削除)
- 「利用者の同意を得た上で、対面による服薬指導と情報通信機器を用いた服薬指導を組み合わせた服薬指導計画を作成し、当該計画に基づき情報通信機器を用いた服薬指導を実施すること。」
- →(削除)
- 「情報通信機器を用いた服薬指導を行う薬剤師は、原則として同一の者であること。ただし、次のa及びbをいずれも満たしている場合に限り、やむを得ない事由により同一の薬剤師が対応できないときに当該薬局に勤務する他の薬剤師が情報通信機器を用いた服薬指導を行っても差し支えない。
a 当該薬局に勤務する他の薬剤師(あらかじめ対面による服薬指導を実施したことがある2名までの薬剤師に限る。)の氏名を服薬指導計画に記載していること。
b 当該他の薬剤師が情報通信機器を用いた服薬指導を行うことについて、あらかじめ利用者の同意を得ていること。」 - →(削除)
簡単に整理すると
- ・処方元での在宅時医学総合管理料の算定→(削除)
- ・居宅療養管理指導費を月1回算定していること→(削除)
- ・月1回のみ算定可能→月4回まで算定割合
- ・薬局内で実施すること→(削除)
- ・服薬指導計画の作成→(削除)(対面における薬学的管理指導計画に包括)
- ・対面による服薬指導を実施したことがある薬剤師(2名まで)→(削除)(初回から算定可能)
- ・あらかじめ同意を得る→(削除)
という風にほとんどの制限が廃止され、対面による居宅療養管理指導とほぼ同じ条件で算定可能となっています。
医療保険と介護保険での評価の違い
介護報酬と医療保険では在宅患者に対する服薬指導の評価(単位・点数)が異なります。
また、医療保険における在宅患者訪問薬剤管理指導料については以下の制限があることも注意です。
- ・保険薬剤師1人につき、在宅患者訪問薬剤管理指導料1から3までと合わせて週40回に限り算定
- ・患家の希望により16キロメートルを超えて訪問薬剤管理指導を行った場合の在宅患者訪問薬剤管理指導料は保険診療としては認められない
(介護保険においては上記の制限はありません)
2、麻薬持続注射と中心静脈栄養法を行なっている場合の加算が新設
診療報酬では令和4年度改定で麻薬持続注射(在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算)と中心静脈栄養法(在宅中心静脈栄養法加算)に関する評価が設けられていましたが、介護保険では設定されておらず、(介護予防)居宅療養管理指導費を算定する場合は加算を算定することができませんでした。ですが、今回の介護報酬改定で医療用麻薬持続注射療法加算と在宅中心静脈栄養法加算が新設されたことで、(介護予防)居宅療養管理指導費を算定する場合でも麻薬持続注射や中心静脈栄養法に取り組む薬局が評価を受けることが可能となります。
令和6年度介護報酬改定では新たに麻薬持続注射と中心静脈栄養法を行なっている場合の評価が新設されます。
- ・医療用麻薬持続注射療法加算:250単位(新設)
- ・在宅中心静脈栄養法加算:150単位(新設)
いずれも(介護予防)居宅療養管理指導費の加算です。
医療保険(診療報酬)においては令和4年度診療報酬改定で在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算と在宅中心静脈栄養法加算が新設されていましたが、介護報酬では同様の評価が存在しないため、(介護予防)居宅療養管理指導費を算定する場合は在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料のいずれかを算定する場合に限っての加算となっていました。
今回、介護報酬で対応する点数が新設されたことにより、介護保険を利用している場合でも医療保険と同様の評価を受けることができるようになりました。
単位数(点数)も全く同じです。
医療保険において在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算を算定する場合に麻薬管理指導加算を算定できないのと同様に、介護保険でも医療用麻薬持続注射療法加算を算定する場合は麻薬管理指導加算(厚生労働大臣が定める特別な薬剤の投薬が行われている利用者に対して、当該薬剤の使用に関する必要な薬学的管理指導を行った場合)は算定不可です。
それが在宅中心静脈栄養法加算との単位数の差(100単位)に表れているのだと思います。