令和6年度調剤報酬改定は薬局をどう変化させる?〜気になる議論を徹底解説!

令和5年も年末となり、来年に控える診療報酬改定の議論も大詰めとなっています。

そこで今回は令和6年度調剤報酬改定について、気になる議論を紹介、ぺんぎん薬剤師の個人的な予想を交えて解説したいと思います。

令和6年度の調剤報酬改定により薬局の業務、薬剤師の姿はどう変化していくのか?

記事を読んでいただくことで皆さんと一緒に考えることができればと思います。

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令和6年度診療報酬改定 本体は0.88プラス改定となる見込みです。ただし、物価高騰による対応がプラス部分で、従来の診療報酬部分については適正化を進めることでマイナスになる計算になっています。具体的な改定の内容については中医協で議論された上で決定しますが、調剤基本料については敷地内薬局に対する考え方が大幅に変更になりそうです。薬学管理料についてはかかりつけ薬剤師、フォローアップ、認知症対応等、これまでも行なってきた業務が評価されることが期待されています。リフィルや供給不安時の処方変更等も検討されています。また、長期収載品の一部自己負担という全く新しい制度も導入される方向で進んでおり、かなり多岐にわたる改定が予想されます。

1、令和6年度改定の背景

この章のPOINT

令和6年度診療報酬改定では、本体改定率がプラス0.88%になる方向で進んでいます。プラス改定と決まったということは、診療報酬改定後の報酬単価がプラスになるということです。ただし、プラスとなる要因は物価高騰に伴う対応によるもので、従来の医療費部分に対しては適正化によるマイナス措置が行われます。また、2024年から診療報酬改定は4月ではなく6月実施になります。さらに、今回の改定は医療・介護・障害の3つが同時に改定されるトリプル改定であることにも注目です。3つの医療・福祉サービスの連携がどのような形で強化されるか確認しましょう。

まずは改定全般に関するトピックについて整理しておきたいと思います。

まさかのプラス改定!?

12月15日、令和6年度診療報酬改定について政府が本体改定率プラス0.88%で調整に入ったことが報じられました。

予想より早めに本体改定率が出たことにも驚きましたが、何よりプラス改定になったことに驚きました。


診療報酬改定の議論で、診療報酬本体の改定率は大きな焦点の一つです。

高齢化が進めば、医療費は増大します。
改定率は自然増を除いて考えた場合の医療費の増加、つまり平均単価の変化率に該当します。
プラス改定であればそれを支えるだけの予算が医療費に割かれるわけですし国民の医療保険料負担も増えます。
逆にマイナス改定であれば医療費が下がり、税金や医療保険の負担は軽減されますが、医療機関や薬局の収入は減少する形になります。

診療報酬改定に向けて、まずはこの改定率をめぐって、中医協では診療側(医師会や薬剤師会等)と支払側(保険者)、政府内では厚生労働省と財務省の意見がぶつかりあいます。


プラス改定になれば、医療機関や薬局が受け取る報酬が増えるわけですから、医療従事者の生活を支えると同時に、設備投資等も進めることが可能となり、より質の高い医療を国民に提供することが可能となります。
特に、今回の議論では物価高騰に伴う医療従事者の賃上げを行う必要があるとして、医師会は最低でも1%の引き上げが必要と訴えていました。


マイナス改定になれば、医療費が削減される形になります。
来年度は少子化対策が行われることが決定していますが、その予算は社会保障費の中から捻出しなければいけません。医療費に回す予算が減ればその分、少子化対策を充実させることができます。
また、昨今問題になっている医薬品の供給不安ですが、その原因の一つに薬価の引き下げが挙げられています。
これまでの改定では薬価引き下げにより浮いた医療費を診療報酬改定に回すことで予算を捻出していました。ですが、医療用医薬品の供給が不安定になっている状況で大幅な薬価引き下げを行うのは難しいのではないかと予想されます。
さらには現在の景気低迷を考慮して、医療保険や税金の国民負担を軽減させるべきだという意見もありました。


特に今回の議論においては財務省の意見が強く、財務省主導の形で予算編成が進んでいくかのように見えました。

R6年度改定に向けた予算争い

ですが、蓋を開けてみればプラス改定。
しかも、0.88%のプラス改定となれば、過去10年で最大の改定率となります。

診療報酬本体改定率の推移

ただし、その内訳は、「医療従事者の賃上げ・物価高騰に伴う対応」、「入院患者の食費引き上げ」というプラス要因「診療報酬の適正化」というマイナス要因とで構成されています。

つまりは、賃上げや物価高騰の問題がなければマイナス改定という形です。

予想外に、近年では大きなプラス改定となりましたが、それが具体的にどのような形で反映されるかはこれからの中医協の議論で決まっていきます。

令和6年度診療報酬改定は後ろ倒しで実施

令和6年度の診療報酬改定では、改定時期が4月から6月に2ヶ月後ろ倒しされることが決定しています。

○医療DXについて(その2) 中央社会保険医療協議会 総会(第551回)議事次第

これまでは4月に実施されていた診療報酬改定ですが、答申や告示から施行、初回請求までの期間が短く、医療機関・薬局等及びベンダの業務が逼迫し、大きな負担がかかっていることが問題となっていました。

今回実施時期が6月になったことで、告示後に十分な準備を行なった上で改定に対応することが可能となります。

医療、介護、障害福祉サービスのトリプル改定

2024年度は診療報酬改定と介護報酬改定、障害福祉サービス改定が同時に行われるトリプル改定となっています。

診療報酬改定は2年ごと、介護報酬改定・障害福祉サービス改定は3年ごとに実施されているため、6年に1回トリプル改定がやってきます。

特に今回はトリプル改定に加えて、ポスト2025年を見据えた最後の診療報酬改定ということで、介護や障害福祉サービスと医療の連携を深め、地域における切れ間ない構築することが求められています。

「地域包括ケアシステム」と「地域医療構想」2025年に完成させるべく、どのような改定が行われるか注目されています。

2、調剤基本料と地域支援体制加算に関する議論

この章のPOINT

調剤報酬改定のうち薬局経営に最も大きな影響を与えるのは調剤基本料とその加算に関する改定です。今回の改定では敷地内薬局を有するグループ薬局に関する議論と調剤基本料1を算定する薬局のうち近隣に複数の医療機関が存在する場合についての議論が行われています。また、地域支援体制加算については調剤基本料1を算定する薬局にも実績要件を設けるべきという意見が出されています。

調剤基本料の変化は薬局の経営状況に最も大きな影響を与えます。

そのため、施設基準ギリギリの薬局は毎回改定ドキドキしながら改定の議論を見守ることになるのですが、今回も調剤基本料に関する議論が行われています。

敷地内薬局(特別調剤基本料)に関する議論

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