骨太の方針2023と薬局の未来を描く議論

2023年6月16日、「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~」(骨太方針2023)が閣議決定されました。

骨太の方針2023では、「時代の転換点」とも言える構造的な変化と課題に直面する中、30年ぶりとなる高い水準の賃上げや企業部門における高い投資意欲など、足下での前向きな動きを更に力強く拡大すべく、新しい資本主義の実現に向けた取組を加速させ、新時代にふさわしい経済社会の創造を目指していく、とされています。

今回はこの「骨太の方針2023」の中から、調剤に関わる部分について詳しく見てみたいと思います。とは言っても、「骨太の方針2023」に記載されている内容だけでははっきりとイメージできないため、関連する資料と合わせてまとめています。来年の診療報酬改定を見据えて、国が考える、求める薬局の姿をイメージしていただければと思います。

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骨太の方針2023の中では調剤に関するものとして、医療専門職のタスク・シフト/シェア、薬局薬剤師の対人業務の充実、対物業務の効率化、リフィル処方の活用推進、医療DXと診療報酬改定DX、長期収載品等の自己負担見直しがあります。
具体的には、在宅患者の夜間休日等における体調急変時の調剤、看護師が訪問できない際の医療行為、調剤外部委託、薬剤師のリフィル処方箋に関する権限の拡大、薬剤一部負担金の検討などです。
あくまでも検討段階のものも多いですが、少なくとも一部は令和6年(2024年)4月に行われる診療報酬・介護報酬・障害福祉サービスのトリプル改定に影響を与えるものであることは間違いありません。
骨太の方針2023を通じて近い未来の薬剤師像をイメージしておくことが大切です。

1、骨太の方針2023の気になる部分

経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針2023)の「第4章 中長期の経済財政運営」「2.持続可能な社会保障制度の構築」「社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進」の項に、調剤に関連する内容がいくつか記載されているので印をつけてみました。

(社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進)
 このため、1人当たり医療費の地域差半減に向けて、都道府県が地域の実情に応じて地域差がある医療への対応などの医療費適正化に取り組み、引き続き都道府県の責務の明確化等に関し必要な法制上の措置を含め地域医療構想を推進するとともに、都道府県のガバナンス強化、かかりつけ医機能が発揮される制度整備の実効性を伴う着実な推進、地域医療連携推進法人制度の有効活用、地域で安全に分娩できる周産期医療の確保、ドクターヘリの推進、救急医療体制の確保、訪問看護の推進、医療法人等の経営情報に関する全国的なデータベースの構築を図る。実効性のある医師偏在対策、医療専門職のタスク・シフト/シェア薬局薬剤師の対人業務の充実対物業務の効率化、地域における他職種の連携等を推進する。その中で、医師が不足する地域への大学病院からの医師の派遣の継続を推進する。また、関係者・関係機関の更なる対応により、リフィル処方の活用を進める。

 医療DX推進本部において策定した工程表に基づき、医療DXの推進に向けた取組について必要な支援を行いつつ政府を挙げて確実に実現する。マイナンバーカードによるオンライン資格確認の用途拡大や正確なデータ登録の取組を進め、2024年秋に健康保険証を廃止する。レセプト・特定健診情報等に加え、介護保険、母子保健、予防接種、電子処方箋、電子カルテ等の医療介護全般にわたる情報を共有・交換できる「全国医療情報プラットフォーム」の創設及び電子カルテ情報の標準化等を進めるとともに、PHRとして本人が検査結果等を確認し、自らの健康づくりに活用できる仕組みを整備する。その他、新しい医療技術の開発や創薬のための医療情報の二次利活用、「診療報酬改定DX」による医療機関等の間接コスト等の軽減を進める。その際、医療DXに関連するシステム開発・運用主体の体制整備、電子処方箋の全国的な普及拡大に向けた環境整備、標準型電子カルテの整備、医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策等を着実に実施する。

 創薬力強化に向けて、革新的な医薬品、医療機器、再生医療等製品の開発強化、研究開発型のビジネスモデルへの転換促進等を行うため、保険収載時を始めとするイノベーションの適切な評価などの更なる薬価上の措置、全ゲノム解析等に係る計画の推進を通じた情報基盤の整備や患者への還元等の解析結果の利活用に係る体制整備、大学発を含むスタートアップへの伴走支援、臨床開発・薬事規制調和に向けたアジア拠点の強化、国際共同治験に参加するための日本人データの要否の整理、小児用・希少疾病用等の未承認薬の解消に向けた薬事上の措置と承認審査体制の強化等を推進する。これらにより、ドラッグラグ・ドラッグロスの問題に対応する。さらに、新規モダリティへの投資や国際展開を推進するため、政府全体の司令塔機能の下で、総合的な戦略を作成する。医療保険財政の中で、こうしたイノベーションを推進するため、長期収載品等の自己負担の在り方の見直し、検討を進める。大麻に関する制度を見直し、大麻由来医薬品の利用等に向けた必要な環境整備を行うほか、OTC医薬品・OTC検査薬の拡大に向けた検討等によるセルフメディケーションの推進、バイオシミラーの使用促進等、医療上の必要性を踏まえた後発医薬品を始めとする医薬品の安定供給確保、後発医薬品の産業構造の見直し、プログラム医療機器の実用化促進に向けた承認審査体制の強化を図る。また、総合的な認知症施策を進める中で、認知症治療の研究開発を推進する。献血への理解を深めるとともに、血液製剤の国内自給、安定的な確保及び適正な使用の推進を図る。

 次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定においては、物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行う。その際、第5章2における「令和6年度予算編成に向けた考え方」を踏まえつつ、持続可能な社会保障制度の構築に向けて、当面直面する地域包括ケアシステムの更なる推進のための医療・介護・障害サービスの連携等の課題とともに、以上に掲げた医療・介護分野の課題について効果的・効率的に対応する観点から検討を行う。

経済財政運営と改革の基本方針 2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~(令和5年6月16日)

医療DXに関する内容については過去に何度か紹介している部分が多いので、線を引いている部分だけ取り上げたいと思います。気になる方は過去の記事をご覧いただければと思います。
また、後発医薬品の産業構造の見直しについても別の機会にまとめたいと考えています。

2、医療専門職のタスク・シフト/シェア

この章のPOINT

在宅医療において、夜間・休日などの患者急変に対応するために、訪問看護ステーションに必要最低限の薬剤を配置することが提案されていますが、議論としては夜間・休日に速やかに患者に薬剤を届けるための手段・方法を検討する方向に進んでいます。地域連携薬局や地域支援体制加算を算定している薬局の対応について見直しが行われる可能性もあります。
また、緊急時に薬剤師が一部の医行為を行えるように検討することが提案されています。医行為の範囲の見直しが行われる可能性があります。

これについては「規制改革実施計画について(令和5年6月16日 閣議決定)」のうち、<医療・介護・感染症対策分野> (3)医療関係職種間のタスク・シフト/シェア等でいくつかのテーマがあげられているので紹介します。

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