コラム記事

医薬品供給問題の振り返り〜医薬品に対する価値観が変化する?

2020年後半から本格的に始まった医薬品の供給問題。多くの薬局、医療機関が医薬品を確保すべく奮闘してきました。2022年になり、状況は改善しているかと言われると、残念ながらまだまだ同じような状況が続いていると言わざるを得ません。一部では改善している部分もあるかもしれませんが、一つの医薬品が改善すればまた別の医薬品が・・・という状況です。
今回は医薬品供給問題を振り返りつつ、この問題に対応する中で、「医薬品に対する価値観」がどのように変化したのか考察してみたいと思います。
(今回の記事とあわせて「第5回 医薬品の供給問題〜問題の原因と乗り越えるためにできること~」も読んでいただければ嬉しいです)

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2020年以降、医療現場を襲っている医薬品供給問題。後発医薬品メーカーの不祥事だけでなく、新型コロナウイルス感染症等の様々な要因が発生した結果として起きているものです。現場で必要な医薬品情報を得るために立ち上がったDSJPの活動を紹介すると同時に、DSJPが行ったアンケートの結果を紹介します。アンケート結果を見てみると、在庫品目の価値観に変化が生じていることがわかります。

1、医薬品供給問題の原因は?

この章のPOINT

医薬品の供給問題を引き起こした原因は何かを考えてみます。この2年間を振り返り、医薬品の供給に影響を与えた出来事を時系列に沿ってまとめてみます。複数の後発医薬品メーカーが業務停止処分を受けましたが、原因はそれだけでなく、複数の要因が絡み合った結果であることがわかります。

この2年間、薬局や医療機関で働く方々の誰もが一度は「医薬品が納品されない!」という経験をしたのではないでしょうか?出荷調整や出荷停止は何回も経験してきましたが、後発医薬品だけでなく先発医薬品も含めたどのメーカーの製品も納品されないという事態は初めてなんじゃないかと思います。
今回の医薬品供給問題の原因には様々なものが考えられます。
この2年間の振り返りの意味で、医薬品供給に関する主なトピックスをまとめます。


2019年12月31日:中国湖北省武漢市で新型コロナウイルス感染症が報告
 新型コロナウイルス感染症は発生からわずか数ヶ月で世界的なパンデミックを引き起こし、医薬品の製造、輸出入に大きな影響を与えています。

2020年4月〜:日医工の自主回収が相次ぐ
 日医工は2020年4月から2021年1月にかけて75製品の自主回収を実施しました。(自主回収製品リスト(富山第一工場製造製品)

2020年12月7日:イトラコナゾール錠50「MEEK」自主回収
2021年2月9日:小林化工 116日間の業務停止処分
 イトラコナゾール錠 50「MEEK」にリルマザホン塩酸塩水和物が臨床用量を超えて混入した事件をきっかけに、小林化工への立ち入り調査が行われ、承認外の工程による医薬品の製造が行われていた事実が明らかになりました。その結果、小林化工の一部製品は承認取消となり、それ以外の全製品について自主点検を実施するため出荷停止となりました。2021年2月には最大116日間の業務停止処分を受け、この事件をきっかけに小林化工の製品のほとんどは市場から姿を消してしまいました。

2021年3月3日:日医工 32日間の業務停止処分
 品質試験不適合品について、製造販売承認書と異なる製造方法で製造し、適合品となるように処理を行っていた等の理由により業務停止処分を受けました。日医工の自主点検は業務定処分後も継続して行われ、多くの製品が出荷停止となりました。

2021年10月11日:長生堂製 31日間の業務停止処分
 承認書と異なる製造方法による製造を行ったこと、安定性モニタリング試験の結果が規格を逸脱していると知りながら、回収や工場に対する必要な措置を講じなかった等の理由で業務停止処分を受けました。

2021年11月29日:㈱日立物流西日本の物流センターで火災発生
 大原薬品工業、キョーリンリメディオ、日本ジェネリック等の製品の流通に影響を与えました。

2021年12月3日:小林化工 医薬品製造設備等の資産をサワイグループHD に譲渡
 小林化工はサワイグループホールディングス株式会社が設立した子会社トラストファーマテック株式会社に医薬品製造設備等の資産を譲渡することを決定し、2022年3月31日に譲渡完了しました。

2022年2月24日:ロシアのウクライナ侵攻
 ヨーロッパからの空輸ルート変更による輸入量の低下や原油・天然ガスの高騰による生産量への影響も懸念されています。

2022年3月28日:共和薬品工業 33日間の業務停止処分
 承認書と異なる製造方法による製造を行ったことを理由に業務停止処分を受けました。


医薬品供給に影響を与えている要因

ここにあげたものはあくまでも一部ですが、様々な原因が絡まりあって、現在の医薬品供給問題を引き起こしていることがわかります。一つの原因が解決したからといって、全体への影響がすぐに改善するものではないことがわかると思います。製薬各社は生産ラインを増やすなどの対応を行っていますが、実際に生産量が増やすには年単位が必要で、十分に流通量が増えるまでにはまだ時間がかかるようです。

2、現場が求める情報を手に入れるために

この章のPOINT

医薬品の供給情報は様々な形で手にいてることが可能です。ですが、現場が本当に必要な情報が届いているかというと不十分と言わざるを得ません。では、どうすれば必要な情報を得ることができるか?そんな疑問から生まれたのが製薬会社がホームページで公開している情報を一括で検索可能なDSJPです。

医薬品の供給に問題が生じた場合、その情報はどこからやってくるのでしょうか?代表的なものとして以下のようなものが挙げられると思います。


 ①医薬品卸MSからの情報提供
 ②製薬会社MRからの情報提供
 ③製薬会社から直接郵送
 ④製薬会社ホームページでの情報公開


このうち①〜③については受動的に得る情報、④については能動的に得る情報と分類することができます(①・②については能動的な場合もあり)。ただし、現在のように多くの医薬品の供給が滞っている状況下では、情報提供を受ける前に実際の納品が滞ってしまうことも珍しくなく、こちらから質問をして初めて情報提供を受けるということも珍しくありません。また、基本的には使用実績のある製品についてのみの情報提供が行われます。そのため、採用医薬品が納品されなくなった際に必要となる、同一成分の他メーカーの流通状況については自分達で調べる必要があります。

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