コラム記事

漢方薬のかくれんぼ
~漢方薬の構成や使い分けを理解するコツ~

今回は、漢方薬の組み立てられ方を理解したり、使い分けを考える時に活用できる、考え方の基礎を書いていきます。

「漢方薬の幹がどういったものなのか?」を見つけるための、漢方薬のかくれんぼです。 幹となる部分を見つけて、気血津液弁証の6つのパターンのどの方向性を持つのかというかなりザックリとしたイメージを掴んでいただくことです。
過去のコラムも参考にしながら読んでいただけると嬉しいです。

漢方の専門家の方々が、漢方薬の特徴をよく理解しながら活用しているのは、めちゃくちゃ暗記が得意で全て覚えていたり、特別な能力や才能に目覚めていたり、秘伝の書のような物を持っているからではありません。
理解するためのちょっとしたコツを知っているからです。
漢方薬は体を整えるための道具のひとつですので、上手に活用出来るようになってください。

代表生薬12種類と基本漢方薬6種類

まずは、次の代表生薬12種類と基本漢方薬6種類は覚えていただきたいです。


【補気】の代表生薬
人参、黄耆
【補気】の基本漢方薬
「四君子湯」  人参、白朮(蒼朮)1) 、茯苓、甘草、(大棗、生姜)2)

【補血】の代表生薬
当帰、芍薬
【補血】の基本漢方薬
「四物湯」  当帰、芍薬、川芎、地黄

【補陰】の代表生薬
地黄、麦門冬
【補陰】の基本漢方薬
「六味地黄丸(六味丸)」  地黄、山茱萸、沢瀉、茯苓、山薬、牡丹皮

【行気】の代表生薬
柴胡、枳実 【行気】の基本漢方薬
「四逆散」  柴胡、枳実、芍薬、甘草

【活血】の代表生薬
桃仁、牡丹皮
【活血】の基本漢方薬
「桂枝茯苓丸」  桂枝(桂皮)3) 、茯苓、桃仁、牡丹皮、芍薬

【化痰】の代表生薬
半夏、陳皮
【化痰】の基本漢方薬
「二陳湯」  半夏、陳皮、茯苓、生姜、甘草

1) メーカーによって白朮が蒼朮になっている場合があります。
2) 本によって大棗、生姜が記載されていない場合があります。
3) 日本では桂皮が使用されていることが多いです。

漢方薬を大きな木だとすると、これらが根や幹の部分に相当すると思ってください。

基本漢方薬の構成生薬まで覚えるのは、時間がかかるとは思います。

・何をやってくれる代表生薬、基本漢方薬なのか
・各代表生薬2種類
・各基本漢方薬6種類の名前
ここまでは頑張って覚えてください。

紙に書いて、トイレのドアに貼っておくとか、寝室に貼っておいて寝る前と起きた時に読むとか、どんなやり方でも良いので、とにかく覚えてください。
僕は九九を覚えた時のように、暗唱して、表を見て確認してはまた暗唱するのを、何度も何度もひたすら繰り返しました。

漢方薬のかくれんぼ

今回の漢方薬のかくれんぼは、基本漢方薬6種類が他の漢方薬の中に入っているかどうかを見つけます。
そして、その漢方薬の幹を見つけて、ザックリとした方向性だけでもすぐに判断がつくようにするきっかけづくりが目標です。

漢方薬のかくれんぼを見つける時、コツがあります。

① 代表生薬を見つける
② 基本漢方薬を構成するその他の生薬を探す

この2つの手順を踏むのが、かくれんぼを上手に見つけ出すコツです。

代表生薬は、ドラマや映画でいう主役に抜擢されるような存在です。
今、放送されているドラマや上映されている映画の話題をする時は、タイトルや主役の方の名前を出してお話されることが多いと思います。
タイトルが「漢方薬名」、主役が「代表生薬」、他の役やエキストラが「その他の生薬」となります。
そんなイメージをしていただけたら、理解しやすいかもしれません。

ちょっと見つける練習してみましょう。次の生薬で構成されている漢方薬にかくれんぼしているのは何でしょうか?

白朮(蒼朮)、人参、半夏、茯苓、大棗、陳皮、甘草、生姜

コラムだと、考える時間を設けにくいですね。
何か違う話題でも書いてみようか…とも考えましたが、分かりにくくなりそうなので解説の文章に移りますね。
どうですか?
かくれんぼ見つかりました?
今は分からなくても全く問題ありません。少しずつ慣れていけばいいんです。
今回は生薬が余ったりすることなく、全て使用できます。

まずは「①代表生薬を見つける」です。
ここには、補気の代表生薬の人参と、化痰の代表生薬の半夏がいます。
なので、「②基本漢方薬を構成するその他の生薬を探す」では、四君子湯と二陳湯のその他の構成生薬を探します。

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