桃から生まれた少年が鬼退治をする物語の「桃太郎」は、日本人なら一度は聞いたことのある有名な昔話のひとつだと思います。
【あらすじ】
昔々、ある村におじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
すると、おばあさんは川から大きな桃が流れてくるのを見つけます。
その桃を家に持ち帰り、切ってみると、中から元気な男の子が飛び出してきました。
夫婦はその子を「桃太郎」と名付け、愛情を注いで育てました。
桃太郎はすくすくと育ち、強く勇敢な若者になりました。
ある日、村の人々を困らせている「鬼ヶ島の鬼」を退治するために旅に出ることを決意します。
おばあさんから「きびだんご」を作ってもらい、それを持って旅立つ桃太郎は道中で、犬、猿、キジと出会います。
それぞれの動物たちは「きびだんご」をもらい、桃太郎の仲間となりました。
桃太郎と仲間たちは鬼ヶ島に着き、協力して鬼たちを退治します。
鬼たちは降参し、村から奪った宝物を返しました。
こうして、桃太郎と仲間たちは見事に鬼退治を成し遂げ、宝物を持って村に戻り、村人たちに平和と幸せをもたらしました。
めでたしめでたし
物語の中には陰陽五行の要素も見られ、それぞれのキャラクターや出来事に関連しているような解釈もできます。
今回は桃太郎の物語の中に散りばめられている陰陽五行の要素を見つけていこうと思います。
なんで桃なん??
まずは柿太郎ではなく、梨太郎でもなく、林檎太郎でもなく、桃太郎であることからです。
桃は不老長寿の象徴や魔除けの力を持つ果物とされています。
中国の神話に「西王母(せいおうぼ)の桃」という有名なおはなしがあります。
西王母は西極の神山に住んでいる仙人。
その庭には「蟠桃(ばんとう)」という三千年に一度だけ実を結ぶ特別な桃の木があり、その実を食べた者に永遠の若さと生命を与えるとされます。
西王母は天帝や仙人たちを集め、この桃を振る舞う「蟠桃会(ばんとうえ)」を開催します。
美酒や珍しい食べ物が並び、仙人たちは詩を詠んだり、舞を楽しんだりして祝宴を楽しみます。
『西遊記』では、孫悟空が蟠桃会の準備を手伝ううちに蟠桃の貴重さを知り、宴が始まる前に勝手に蟠桃を食べてしまい、天界での大混乱を引き起こし、物語の大きな展開の一因として取りあげられています。
また中国では旧暦のお正月に、「桃符(とうふ)」と呼ばれる桃の木で出来た札を門にかける風習があるそうです。
桃符は、二枚の桃の木の板に「神荼(しんと)」と「鬱塁(うつりつ)」の二神の像をそれぞれ描いて門の両側にかけ、魔除けにしたもの。
現在は少し形が変わって、「春聯(しゅんれん)」という赤い紙におめでたい対句を書いたものを家の入口などに貼るそうです。
日本の神話の中にも、桃と魔除けが関連づけられて書かれています。
『古事記』には、黄泉国から逃げる伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が、桃の実を投げて追っ手を退けたというおはなしがあります。
伊邪那岐命は、日本神話に登場する国生みと神生みを行った男神です。
五行の考えの中で、西の方角は金のグループに当てられています。
金は、五行(木・火・土・金・水)の中でもっとも強くて堅固だとされています。
少し拡大して、兵器武具、戦の象徴ともされています。
西の方位は、金銀財宝や衣食住など物資の豊かさを象徴する方位ともされています。
また五果では桃、五常では義が当てられていて、孔子の道徳規念のなかで義は「利害をすてて条理にしたがい人道、公共のためにつくすこと」とされています。
こういったことから、五行の金が象徴する魔除けや強さや守護の力を背負った存在であり、勇敢に村の人々を困らせている鬼を退治しにいくためにも、金果である桃から生まれてくる必要があったのかもしれません。
あと桃太郎は桃から生まれたのではなく、桃を食べて若返ったおじいさんとおばあさんが子作りに励んだ結果、生まれてきたんだ!というおはなしも有名ですが、これが真実だったとしても…絵本で読み聞かせする年代にはファンタジーに改変した内容の方がきっといいですよね。
※諸説あります。