今回は、誰でも入手できる添付文書の情報だけでも、ある程度、漢方薬の使い分けを考えられるという内容で書いていこうと思います。
漢方独特の概念や用語を理解していなくても、おおまかなイメージを掴むことは出来るので、ご自身のお店で取り扱われている漢方薬の添付文書をご覧になってみてください。
全ての漢方薬がこれで解決できる!…とまではいきませんが、少しでもお役に立てると思います。
頭痛に用いられる機会が多い漢方薬を例に見ていこうと思います。
ツムラさんの医療用漢方製剤で頭痛の効能・効果が付いているのは、次の9種類です。
[頭痛]
17 ツムラ五苓散
37 ツムラ半夏白朮天麻湯
38 ツムラ当帰四逆加呉茱萸生姜湯
39 ツムラ苓桂朮甘湯
63 ツムラ五積散
82 ツムラ桂枝人参湯
124 ツムラ川芎茶調散
[慢性頭痛(中年以降、または高血圧傾向)]
47 ツムラ釣藤散
[習慣性頭痛、習慣性偏頭痛]
31 ツムラ呉茱萸湯
これならできる?「:」の前で飲んでもらいたい人のイメージづくり
すべての漢方薬の効能・効果に付いているわけではありませんが、「:」よりも前に書かれていることはとってもとってもとーーーーーっても大切なんです。
構成としては、
「:」より前のイメージの人が訴える、「:」より後ろの症状や病に使えるよ
といった感じです。
17 ツムラ五苓散
口渇、尿量減少するものの次の諸症:
浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病
37 ツムラ半夏白朮天麻湯
「:」なし
胃腸虚弱で下肢が冷え、めまい、頭痛などがある者
38 ツムラ当帰四逆加呉茱萸生姜湯
手足の冷えを感じ、下肢が冷えると下肢又は下腹部が痛くなり易いものの次の諸症:
しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛
39 ツムラ苓桂朮甘湯
めまい、ふらつきがあり、または動悸があり尿量が減少するものの次の諸症:
神経質、ノイローゼ、めまい、動悸、息切れ、頭痛
63 ツムラ五積散
慢性に経過し、症状の激しくない次の諸症:
胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、冷え性、更年期障害、感冒
82 ツムラ桂枝人参湯
胃腸の弱い人の次の諸症:
頭痛、動悸、慢性胃腸炎、胃アトニー
124 ツムラ川芎茶調散
「:」なし
かぜ、血の道症、頭痛
47 ツムラ釣藤散
「:」なし
慢性に続く頭痛で中年以降、または高血圧の傾向のあるもの
31 ツムラ呉茱萸湯
手足の冷えやすい中等度以下の体力のものの次の諸症:
習慣性偏頭痛、習慣性頭痛、嘔吐、脚気衝心
この「:」よりも前に書かれているのが、「しばり」や「証」といった言葉で説明されています。
不調を訴えられている方の証とその証にピッタリな漢方薬との関係は、『鍵と鍵穴の関係』と説明されることがあります。
本当にピッタリ合う漢方薬をバッチリ選択出来たら、そりゃもう信じられないくらい効果を実感できます。
やはり確率高くピッタリ合わせるのは、経験を積んだベテランの方でなければ難しいです。
じゃあ、当てずっぽうで選べばいいかというと、そういう訳にもいきません。
よく言われる「寒熱(かんねつ)」とかの大まかな方向性を合わせることは、最低限のエチケットです。
特に「:」の前の文章の中に、この方向性を伺えるような文字があればそこは意識してください。
例えば、処方せんに『呉茱萸湯』の記載があったとします。
添付文書には『手足の冷えやすい中等度以下の体力のものの次の諸症:』とありますので、呉茱萸湯の「寒熱」の方向性は『温める』ということがイメージつきます。
「手足の冷え」の話題(中等度以下の体力は慣れるまでは、無理に判断しない)、もう少し大きく捉えると「冷えの影響で悪化する」とか「温めると和らぐ」といったことが話題に出てきたら、今回の医師の処方をしっかり推せる根拠が得られたことになります。
処方された漢方薬でその方の症状が変化するかは、飲んだ結果を得てみないと分からないです。
もし、呉茱萸湯で症状が和らぐ結果が得られたら、「冷やす」ことを減らせるような工夫や養生のお話をそっと添えられると素敵ですね!
ツムラさんの医療用漢方製剤の茶色い手帳をお持ちの方は、「効能又は効果」の記載の下に、
〈参考:証に関わる情報〉使用目標=証
という記載もありますので、そちらも参考にしていただくともう少し詳しくイメージ出来ると思います。
「:」の書き方は、コタローさんでも、クラシエさんなどでも一緒なので、ツムラさん以外の漢方薬でも活用していただけますし、一般用医薬品(OTC医薬品)の漢方薬もこういった書き方になっています。