「気・血・津液」のトリセツシリーズも今回で一区切りです。
前回の『人の体を構成する3要素「気・血・津液」のトリセツ~「津液」前編~』では、「津液」の概念、津と液の違い、はたらきなどについて書きました。
今回は、津液の作られ方・巡り方を中心に書いていきます。
津液の作られ方
水穀の精微の中の水分は、脾の昇清作用によって体内に取り込まれ、気化されて津液となります。
と、書かれれば簡単ですが、六腑の胃・小腸・大腸もしっかり働いてくれています。
津液のことから少し話題が逸れてしまいますが、ちょっと「食べたものを消化・吸収する」ことを書かせてください。
突然、五臓や六腑の話がたくさん出てきますので、しんどくなったら読み飛ばしてください。
僕たちの体は、食べたり飲んだりした物を消化して、必要なモノを吸収して、必要ないモノを大便や尿として出します。
この消化・吸収の話題の時、必要なモノを吸収することを「昇清(しょうせい)」、必要ないモノを下へ送ることを「降濁(こうだく)」と、中医学では表現します。
飲食物(水穀)を口に入れて、もぐもぐゴックンすると食道を通って胃に行きます。
六腑の胃は、口から入ってきた飲食物を受け入れて(受納)、消化をして(腐熟)、その一部を小腸へ運び(降濁)ます。
胃よりも口の方が上にありますから、「上からやってきた水穀を受け入れて、下の小腸へ運ぶ」のが、胃のはたらき(胃気は下降する)です。
一部は五臓の脾のはたらきによって、体の中へ吸収されます(昇清)。
脾のはたらきによって吸収されるのは、後の小腸・大腸でも同じです。
小腸は、胃から送られてきた物を受け取り(受盛)、さらに消化します(化物)。
「小腸は泌別清濁(ひつべつせいだく)を主る」という言葉で表現され、体に必要なもの(清いもの)である水穀の清微の吸収は主にここでされるとなっています。
津液の元になる水分も、ここで大量に吸収されているとされています。
そして小腸のはたらきは大便や小便に影響を与え、体の水液代謝にも深く関わっています。
小腸で消化・吸収された残り(糟粕)は、大腸へ送られます。
大腸が受け取ると肛門へ向かって送り(伝道)、さらに水分を吸収して大便を作り(変化)ます。
大腸のはたらきは「伝化糟粕」と表現されます。
前回のコラムで、津液は津と液を合わせた呼び方で、性質や役割に違いがあって区別されていると紹介しましたので、「小腸主液(小腸は液を受け持っている)」「大腸主津(大腸は津を受け持っている)」という言葉もありますが、今回は大きく捉えてしまってもいいと思います。
これもより一層話題から外れていってしまいますが、「小腸のはたらきは大便や小便に影響を与えている」というのを知っていると、そういったトラブルの捉え方が広がって、説明の仕方もバリエーションが増えると思います。
小腸から大腸へ送られる水分が多くなると、大便がゆるくなっていったり、尿量が減ったりします。
小腸から大腸へ濁が送られなくなると、便秘、お腹が張る、腹痛などになったりします。
小腸で清濁をしっかり分けられなくなると、尿が濁ったりします。
そして、利尿作用のある漢方薬が下痢に使われたりするのは、尿を出すことで小腸から大腸へ送られる水分を減らすため、と解説されることもあります。
余談が多くなりましたが、いつか何かの役に立ったら嬉しいです。