コラム記事

お刺身の中の漢方
~何気なく添えられている食材を漢方の視点で見ると…?~


医食同源
この言葉は臨床医の新居裕久先生が発表された造語で、中国医学の根幹の考えがもとになっていると言われています。

周王朝の制度や慣習について記されている『周礼』では、医師のランクを4つに分けています。
最高位は、王の食事の調理や管理を任されていた【食医】で、次いで【疾医(しつい)】※現在の内科系医師、【瘍医(ようい)】※現在の外科系医師、【獣医】の順です。
漢方・中医学などの伝統医学は、病気にならないようにすることがとても重要視されていて、「病気になってから治療するのでなく、日々の食事に配慮して病気にならないようにするのが大切!という考えが、今から3000年ほど前に出来ていたようです。

薬膳は、特別な食材を使用したものではなく、中医学の理論や考え方に基づいて季節や体質に合わせます。食材が主役ではなく、人が主役です。

そう言っても、食材や生薬の性質やはたらきが分からなければ、どういった時に取り入れたら良いのか分かりません。

漢方・中医学では、「中庸(ちゅうよう)」をよく考えます。
中庸とは、どちらにも偏らず常に変わらないこと、過不足なく調和が取れていること、です。
つまり、バランスをとっていくことを考えます。

まず手軽に考えられるのは、食べたり飲んだりする時の食材の温度です。
「冷たい食べ物や飲み物は控えめにしてください」
一度は耳にしたことのあるフレーズだと思います。

氷入りの飲み物、冷蔵庫から出してすぐの食べ物、これらは誰もが“冷たい”と感じたり、イメージ出来ると思います。

では、常温の飲み物はどうでしょうか?
イメージしにくかったら、常温のお風呂に入って体は温まりますか?

温まりませんよねー。
なので、常温も“冷たい”なのです。
昔の人たちは「冷蔵庫」という文明の利器はありませんでしたから冷たいものの代表は常温のものです。

こういった温度を考える時、「体温」を基準に考えると分かりやすくなると思います。
体温よりも温度が高ければ温める、低ければ冷やします。
冷たいものは、“ひんやりしたもの”“冷めたもの”、どちらも含まれます。
氷が入っていたり、冷蔵庫でしっかり冷やされているものは“冷た過ぎる”ものという感覚でいてもらえると、濃淡がついて便利かもしれませんね。

とはいえ、温度ばかりに視点を置くと、全て加熱してほっかほかで食べなくちゃいけない!みたいな雰囲気になりますが、ちょっとそれだと食事の楽しみが減ってしまいます。
次に考えていくのは、食べ物の性質としてのとしての温める・冷ますです。
昔の人たちは、こういったことも含めて調理方法を考えたりしていたのでしょう。
何気なく添えられている食材や薬味を漢方の視点で見てみると、昔の人たちが積み上げてきた生活の知恵がギューっと詰まっていて面白いです。

お刺身を例に見ていきます。
お刺身は加熱したりせず、生のままいただくことが多いです。
そのため、お腹や体を冷やすような条件は出来上がっていることになります。
そこで活躍してくれるのがメインの魚の切り身以外の食材たちです。
何気なく添えられている彼らがどんな活躍をしてくれていると解釈するかを、紹介していきます。
諸説あるとは思いますが、一つの視点として楽しんでいただけると嬉しいです。

シソの葉

ページトップへ戻る