amazonファーマシーと楽天ヨヤクスリ薬局〜通販大手サイトの調剤事業進出が与える影響は?

2024年7月、amazonが日本で処方薬の販売を開始すると報じられました。
薬局・薬剤師業界だけでなく、医療の枠をも超えて、日本中で話題になったこのニュース、皆さんも記憶に新しいのではないでしょうか?


このamazonが開始した新サービス「amazonファーマシー」
皆さんはどの程度ご存じでしょうか?

また、8月から楽天ヘルスケアが処方薬の自宅配送を開始しています。
こちらは既存の「ヨヤクスリ」というアプリを使ったサービスですが、今までと違うのは「ヨヤクスリ薬局」という薬局が開局し、その薬局を利用することで処方薬の自宅配送が可能になっていることです。


今回は、amazonと楽天という、多くの人が一度は利用したことがある通販大手がどのような形で調剤薬局事業に関わってくるのか?
また、それにより既存の薬局はどのような影響を受けるのか?
その上で自分たちが取り組むべきことは何か?
ということについて徹底解説!したいと思います。

トレンドを早読み!

大手通販サービスで知られるアマゾンがオンライン服薬指導事業に参入したことが話題になりました。amazonファーマシーはアマゾンアプリ上で実行可能なオンライン服薬指導のプラットフォームです。服薬指導や配送を行うのは提携する薬局なのでamazonショッピングのような配送は期待でいませんが、誰もが知っているアマゾンが、多くの人が利用するショッピングアプリでオンライン服薬指導を利用可能としたことで、オンライン服薬指導の認知が一気に高まる可能性があります。また同じく大手通販サービスを展開している楽天は配送センター内に自ら薬局を開設し、ヨヤクスリというアプリを用いた自社によるオンライン服薬指導サービスを開始しています。オンライン服薬指導が可能になってからもなかなかその利用率は伸び悩んでいますが、大手通販事業者が参入したことにより、これまで以上にオンライン服薬指導に注目が集まっています。その中、これまで対面での服薬指導を行ってきた薬局はどう対抗していくべきなのか。今後も地域に根ざす薬局として生き残っていくために必要なことを考えてみました。

1、amazonファーマシーって何?

この章のPOINT

2024年7月23日からamazonが日本国内でサービスを開始したamazonファーマシーは薬局事業ではなく、オンライン服薬指導のプラットフォーム事業です。サービス開始時点では9つの薬局グループでamazonファーマシーを利用可能となっています。amazonが参入することにより、オンライン服薬指導の普及が加速的に進むことが期待されます。

amazonファーマシーとは具体的にはどんなサービスなんでしょうか?


amazonファーマシー。
名前にファーマシーって言葉がついていますが、実は薬局ではありません。
簡単に言うとamazonショッピングアプリ(amazonアプリ)を用いてオンライン服薬指導を受けることができるシステムです。


amazonファーマシーは薬局ではないため処方箋を扱うことはできず、実際に処方箋を扱うのはamazonファーマシーを導入している薬局です。
2024年7月23日のサービス開始時点には、9つの薬局グループでamazonファーマシーが利用可能と発表されました(アインHD、ウエルシアHD、クオールHD、新星堂薬局、中部薬品、トモズ、ファーマみらい、薬樹、ユニスマイル)。


具体的なサービスの流れは以下のようになっています。


  • ①利用する薬局を選択(GPS機能を用いて近い薬局を選択可能)
  • ②電子処方箋の引換番号をカメラで撮影して登録
  • ③オンライン服薬指導を希望する時間帯を選択して予約
  • ④予約時間になったらオンライン服薬指導を受ける
  • ⑤郵送(送料必要)もしくは店舗で薬を受け取る

①〜④に加えて支払いもamazonアプリで行うことが可能です。


基本的には電子処方箋を想定したサービスになっていますが、オンライン診療サービスのCLINICSと連携しており、CLINICSでオンライン診療を受け、発行される処方箋にも対応しています。


amazonファーマシーという言葉を聞くと、amazonが薬局を作ったかのように聞こえますが、そうではなくamazonがオンライン服薬指導のプラットフォームを作成、提供したということです。
日本ではすでに多くのオンライン服薬指導サービスが展開されていますが、そこにamazonが参入した形です(ちなみに2022年にamazonが保険調剤事業に参入すると報じられた際から、amazonは薬局を作るのではなくオンライン服薬指導のプラットフォームを作成すると発表していました)。


amazonの最大の武器といえば、注文したものが翌日すぐ届く配送能力ですが、amazonファーマシーはamazonの配送網を利用するのではなく、薬局側が配送手配を行います。
(amazonユーザーの方であればprimeではなくマーケットプライス扱いといえばわかりやすいと思います)
そのため、amazonでの注文のようにいつ薬が届くかが明確ではないのはユーザーからすれば残念なところだと思います。
amazonは複数の拠点倉庫から直接配送を行うことで配送力を強化しているので、あくまでも個別の薬局から配送する以上、amazonでの通販のような配送を行うことはできないのは当然ですよね。


じゃあ、amazonファーマシーは大したことがないのか?というと全然そんなことはなく、最大のポイントは専用のアプリを作るのではなく、amazonアプリ内で利用できるようにしたことです。


amazonアプリの国内累計ダウンロード数は6100万件を突破しています。
アクティブユーザー数(実際にアプリを利用しているユーザー数)は発表されていませんが、国内通販アプリの最上位に位置しているのは間違いありません。
自分も実際にamazonファーマシーへの登録を行なってみましたが、普段使っているamazonアプリから簡単に行うことができ、多くの人が手間に感じる個人情報の入力もamazonアプリに登録している内容をそのまま使うことが可能なため、短時間でスムーズに登録することができました。


薬機法の改正により、オンライン服薬指導の敷居はかなり低くなりましたが、その存在はまだまだ知られていません。
仮に知っていても、オンライン服薬指導専用のアプリを導入する必要があり、どれをインストールすればいいか、インストール・登録を行なってもどの薬局を利用すればいいかわからない、利用したい薬局が見つからない等の問題がありました。


多くの人がスマホにインストールしており、日常的に使っている方も多いamazonアプリから利用することが可能で、患者さんがオンライン服薬指導を利用開始するまでの障壁が一気に取り払われた形になります。

極端な表現をすると、オンライン服薬指導という言葉より先にamazonファーマシーという言葉が認知されてしまう。
それくらいのインパクトがあるサービスだと思います。

2、楽天ヨヤクスリ薬局の登場とamazonファーマシーの今後

この章のPOINT

amazonが調剤事業にまで進出したら既存の薬局はどうなるんだろう?たしかにamazon自体は保険調剤を開始していませんが、日本国内でamazonと並ぶ通販大手である楽天は保険調剤業務に参加しており、オンライン服薬指導サービスを開始しています。それがヨヤクスリです。amazonと楽天のサービスにはそれぞれメリットがありますが、楽天ヨヤクスリのように通販事業者が物流センター内に薬局を開局し、オンライン服薬指導を実施、処方薬の発送を行う形はオンライン服薬指導のメリットを最大限に拡大する手段の一つです。

現時点ではamazonジャパンは薬局を持っていません(東京と大阪の物流拠点に薬店は存在しており、一般用医薬品等を在庫している)が、将来的に薬局を開局する可能性もあります。
そうなると、amazon自体が保険調剤を行うことが可能となり、物流倉庫に隣接することで、amazon配送網を利用することも可能になります。

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