続・令和6年度調剤報酬改定のポイントを徹底解説!〜薬学管理料と在宅に関する改定

2024年3月5日、令和6年度診療報酬に関する告示等が公開されました。

説明資料や動画、関係通知も公開されており、今後は疑義解釈の公開を経て6月に施行されます。


診療報酬改定のうち、調剤報酬改定(調剤関連部分)の内容だけでも非常に多く、一つの記事にまとめようとするとかなりのボリュームになってしまうため、2回に分けて解説を行っています。
前回は「改定の背景と調剤技術料」についての解説を行いましたが、今回は「薬学管理料」について徹底解説!します。

今回は通知等もある程度公開された段階での記事になるので、算定要件等についても少し踏み込んで解説します。


前回の記事と今回の記事の内容について簡単にまとめると以下のようになります。


前回(背景と調剤技術料)

  • ・令和6年度調剤報酬改定の背景
  • ・調剤基本料
  • ・薬剤調製料

今回(薬学管理料)

  • ・調剤管理料
  • ・服薬管理指導料
  • ・そのほか指導料と管理料
  • ・在宅関連

それでは今回は令和6年度調剤報酬改定のうち、「薬学管理料(外来と在宅)」のテーマでまとめます。

トレンドを早読み!

令和6年度診療報酬改定では薬学管理料について幅広く見直しが行われています。点数としての評価はともかく、改定の方向性としては薬局の実務に沿ったものとなっており、今後求められる薬剤師像が見えるものになっています。服薬管理指導料では特定薬剤管理指導加算3が新設され、薬局での重点的かつ丁寧な説明が評価されるようになります。反して特定薬剤管理指導加算1については見直しが行われ、新規処方時や用法・用量変更時、副作用が疑われる場合など算定機会が制限される形になります。調剤後のフォローを評価する調剤後薬剤管理指導加算は調剤後薬剤管理指導料に変更され、対象となる糖尿病薬の範囲拡大が行われると同時に新たに心疾患が対象に加わります。かかりつけ薬剤師については併算定を行える点数や施設基準の内容が見直され、より積極的に算定しやすい内容に変化しています。特に注目したいのは在宅に関連する改定内容です。これまで点数として評価されていなかった部分の多くが評価されるようになり、在宅医療に取り組む薬局の業務がしっかり評価される形になっています。

1、服薬管理指導料に関する改定

この章のPOINT

服薬管理指導料では特定薬剤管理指導加算についての見直しが行われます。まずは特に重点的に丁寧な説明を行う場合における評価として「特定薬剤管理指導加算3」が新設されます。RMP資材を用いた指導に加えて、選定療養の対象となる先発医薬品の選択に関する説明、医薬品供給不安に伴い銘柄を変更せざると得ない場合の説明が評価される形です。また、これまで服薬情報等提供料2で評価されていた緊急安全性情報等が発出された場合の説明も特定薬剤管理指導加算3に含まれるようになります。「特定薬剤管理指導加算1」については算定できるタイミングが制限される形になります。

特定薬剤管理指導料3の新設

服薬指導を行う際に、特に患者に対して重点的に丁寧な説明が必要となる場合における評価として、特定薬剤管理指導加算3が新設されます。

区分10の3 服薬管理指導料

7 調剤を行う医薬品を患者が選択するために必要な説明及び指導を行ったイ又はロに掲げる場合には、特定薬剤管理指導加算3として、患者1人につき当該品目に関して最初に処方された1回に限り、5点を所定点数に加算する。

イ 特に安全性に関する説明が必要な場合として当該医薬品の医薬品リスク管理計画に基づき製造販売業者が作成した当該医薬品に係る安全管理等に関する資料を当該患者に対して最初に用いた場合

ロ 調剤前に医薬品の選択に係る情報が特に必要な患者に説明及び指導を行った場合

診療報酬の算定方法の一部を改正する告示(令和6年 厚生労働省告示第57号)

通知にはより具体的な算定要件が記載されています。


区分10の3 服薬管理指導料

(2) 「イ」については、「10の2」調剤管理料の1の(1)を踏まえ、「当該医薬品の医薬品リスク管理計画に基づき製造販売業者が作成した当該医薬品に係る安全管理等に関する資料を当該患者に対して最初に用いた場合」とは、以下のいずれかの場合をいう。

・RMPの策定が義務づけられている医薬品について、当該医薬品を新たに処方された場合に限り、患者又はその家族等に対し、RMPに基づきRMPに係る情報提供資材を活用し、副作用、併用禁忌等の当該医薬品の特性を踏まえ、適正使用や安全性等に関して十分な指導を行った場合

・処方された薬剤について緊急安全性情報、安全性速報が新たに発出された場合等に、安全性に係る情報について提供及び十分な指導を行った場合

診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)(令和6年3月5日 保医発0305第4号)

区分10の3 服薬管理指導料

(3) 「ロ」に示す「調剤前に医薬品の選択に係る情報が特に必要な患者に説明及び指導を行った場合」とは、以下のいずれかの場合をいう。

・後発医薬品が存在する先発医薬品であって、一般名処方又は銘柄名処方された医薬品について、選定療養の対象となる先発医薬品を選択しようとする患者に対して説明を行った場合

・医薬品の供給の状況が安定していないため、調剤時に前回調剤された銘柄の必要な数量が確保できず、前回調剤された銘柄から別の銘柄の医薬品に変更して調剤された薬剤の交付が必要となる患者に対して説明を行った場合

診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)(令和6年3月5日 保医発0305第4号)

ただし、いくらでも算定できるわけではなく、該当する医薬品が最初に処方された1回に限るとされているので注意が必要です。


区分10の3 服薬管理指導料

(1) 服薬管理指導料を算定するに当たって行った薬剤の管理及び指導等に加えて、処方された医薬品について、保険薬剤師が患者に重点的な服薬指導が必要と認め、必要な説明及び指導を行ったときに患者1人につき当該医薬品に関して最初に処方された1回に限り算定する。

診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)(令和6年3月5日 保医発0305第4号)

特定薬剤管理指導加算3はこれまで多くの薬局が服薬指導の中で行ってきたことを評価する点数となっています。
5点という点数をどう評価するかですが、内容を考えると積極的に算定したい加算です。

個人的には供給不安に伴う銘柄変更時の対応が評価(特定薬剤管理指導加算3のロ)されたことが嬉しいです。
医薬品供給不安の中で薬局が取り組んできたことが評価された形ですね。

特定薬剤管理指導料1の見直し

特定薬剤管理指導加算1について、ハイリスク薬等の特に重点的な服薬指導が必要な場合における業務実態を踏まえ、算定対象となる時点等の見直し、明確化が行われます。


区分10の3 服薬管理指導料

5 特に安全管理が必要な医薬品として別に厚生労働大臣が定めるものを調剤した場合であって、当該医薬品の服用に関し、その服用状況、副作用の有無等について患者に確認し、必要な薬学的管理及び指導を行ったときには、特定薬剤管理指導加算1として、次に掲げる点数をそれぞれ所定点数に加算する。

イ 特に安全管理が必要な医薬品が新たに処方された患者に対して必要な指導を行った場合 10点

ロ 特に安全管理が必要な医薬品に係る用法又は用量の変更、患者の副作用の発現状況等に基づき薬剤師が必要と認めて指導を行った場合 5点

診療報酬の算定方法の一部を改正する告示(令和6年 厚生労働省告示第57号)

算定要件を満たせば毎回算定することが可能だった特定薬剤管理指導加算1ですが、改定後は算定可能なタイミングが限定されます。

新規処方時こそ改定前と同じ10点を算定可能ですが、用法・用量変更時や薬剤師が必要と判断した場合については5点に下げられ、それ以外では算定できなくなっています。

特定薬剤管理指導加算1についてはいわゆるベタ取りしている薬局もあったかと思いますが、そういう薬局にとってはかなり痛い改定になりそうです。

が、算定可能なタイミングが限定されたことで、よりメリハリをつけた服薬指導を行うことが可能になると思われます。
これは患者さんにとって、さらに長い目で見れば薬剤師にとってのメリットに繋がるんじゃないかと思います。

2、調剤後薬剤管理指導料の新設

この章のPOINT

調剤後薬剤管理指導加算は服薬管理指導料の加算から単独の薬学管理料となり、「調剤後薬剤管理指導料」に名称が変わります。点数こそ変わりませんが、糖尿病に関する対象となる治療薬の拡大に加えて慢性心不全についても対象となります。また、単独の薬学管理料となったことで、かかりつけ薬剤師指導料と併算定可能となります。

改定前は服薬管理指導料の加算として評価されていた調剤後薬剤管理指導加算ですが、新たに調剤後薬剤管理指導料と名称が変化します。
対象となる糖尿病薬の範囲を拡大、また、心不全の患者も対象に加えて、単独の薬学管理料として新設されます。

区分14の4 調剤後薬剤管理指導料

1 糖尿病患者に対して行った場合 60点

慢性心不全患者に対して行った場合 60点

診療報酬の算定方法の一部を改正する告示(令和6年 厚生労働省告示第57号)

具体的な内容は通知に記載されています。

糖尿病患者に対して行った場合

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